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うなぎはスーパーやコンビニ、牛丼店で大量販売・大量消費する食べ物ではなく、専門店で食べるべき食べ物だ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(ペイレスイメージズ/アフロ)

2018年7月20日は土用の丑の日。恵方巻の時と同様、テレビ局から、うなぎの廃棄、食品ロスについての問い合わせの電話がかかってきた。

フードジャーナリストの山路力也さんが「鰻を私たちはいつまで食べることが出来るのか?」という記事を投稿されていた。記事の後半で「鰻は大量消費する食べ物ではない」「鰻は専門店で食べるべきだ」と書いておられた。その通りだと思う。

筆者も 『東大生150人に聞いた「土用の丑の日うなぎ食べますか?」「平賀源内のキャンペーン。伝統じゃない」とも』という記事で、同じことを主張した。記事で書いた通り、東京大学大学院の水産の研究室でも「うなぎは大量消費する食べ物ではない」と伺った。

スーパーの魚売り場で売られるうなぎの白焼き(筆者撮影)
スーパーの魚売り場で売られるうなぎの白焼き(筆者撮影)

筆者はスーパーとコンビニしか頭になかったが、東京海洋大学准教授の勝川俊雄先生は、スーパー・コンビニに加えて「牛丼屋」を挙げておられた。

牛丼屋に行く機会はほとんどないが、店先に出ているのぼりを見ると、うなぎを使ったメニューを安く提供している。

勝川先生は、書籍『ウナギ Now 絶滅の危機!!伝統食は守れるのか?』(静岡新聞社)で、次のように語っている。

魚食教育においても、魚を多く食べることが奨励され、未来につながる持続的な食べ方という視点がない。海外からは、日本は魚を食い尽くす国と見られている。

出典:書籍『ウナギ Now 絶滅の危機!!伝統食は守れるのか?』(静岡新聞社)p217

うなぎに関しては、結局、次の言葉に尽きるのでは、と感じた。

うなぎはスーパーやコンビニ、牛丼店で大量販売・大量消費する食べ物ではなく、専門店で食べるべき食べ物だ

ここ20年でうなぎ屋のうな重の値段は2倍にも・・

筆者は、1998年ごろ、近所のうなぎ専門店で、時々、うな重の一番安いのを食べていた。当時の値段は1,500円。

畳敷きで、掘りごたつ式の座席に通されると、ホッとして、くつろぐことができた。うなぎが出てくるまでに、時間がかかる。旅行と同じで、待つ楽しみを味わう。

うな重が出てきて、器を開ける時、ワクワクする。

食べる前に、まずは香りを楽しむ。そして、山椒をかけて、ゆっくりと、時間をかけて、一口ずつ味わう。

その店では、デザートにバニラアイスを出してくれた。ウェハース付き。たまの贅沢だった。

今、その店の一番安いうな重は、3,000円近くする。残念だが、すっかり、足が遠のいてしまい、時間をかけてじっくりと味わう、たまの楽しみは奪われてしまった。

うなぎ専門店のうな重の値段は、店によっても違うだろうが、仮に3,000円のうな重を家族3人で食べれば、それだけで10,000円になる。

2018年7月20日付の日経MJ(日経流通新聞)11面には、ウナギを数年間食べていないと答えた人が2割にのぼるという、システム開発のプラネットの調査結果(全国の20才以上の男女3714名対象)が掲載されている。たとえ食べたとしても「2,000円未満」という人が6割という結果だ。贅沢をすると言っても、1食あたり、2,000円を超えるか超えないかは庶民にとって大きいのではないか。

「浦和のうなぎを育てる会」会長は「大量生産の弊害もうかがえる」

2018年7月21日付朝日新聞朝刊埼玉版には、「浦和のうなぎを育てる会」会長の大森好晴さんの言葉が載っている。

大手は養殖池そばの食品工場で加工し、全国に流通させています。大量に仕入れ、一度に処理するため、生きたウナギを店でさばき、炭で焼くうなぎ屋とは価格でどうしても大きな差がつきます。しかし、先日、大手小売りによるうなぎのかば焼きの廃棄が、昨年2.7トンに上ったという報道もありました。大量生産の弊害も伺えます。

出典:2018年7月21日付朝日新聞埼玉版26面「高騰 うなぎ屋、深刻な事態」

スーパーで販売されるうなぎ(筆者撮影)
スーパーで販売されるうなぎ(筆者撮影)

スーパーやコンビニはうなぎの販売を控えては

土用の丑の日に向けて、あるスーパーでは、うなぎ購買を促進するための歌を繰り返し流していた。

別のスーパーでは、のぼりを立てて、購買を促していた。

のぼりを立ててうなぎの購買を促進するスーパー(筆者撮影)
のぼりを立ててうなぎの購買を促進するスーパー(筆者撮影)

前述の、「浦和のうなぎを育てる会」会長の大森さんは、こう語る。

食べないのでは私たちうなぎ屋も困るし、伝統ある食文化にもマイナスになります。専門店やスーパーなど、各店のかば焼きが本当にウナギの資源を損なうことにならないか、よく考えた食べ方をしてほしいと思います。

出典:2018年7月21日付朝日新聞埼玉版26面「高騰 うなぎ屋、深刻な事態」

静岡県三島市のうなぎ店を訪れた、山梨県の61歳の女性は、こう語っている。

たまの機会でいい。品質の良いものを食べ続けたい

出典:書籍『ウナギ Now 絶滅の危機!!伝統食は守れるのか?』(静岡新聞社)p71

うなぎだけでなく、それ以外の食品も、食品ロスとして大量に廃棄している、一部のコンビニやスーパーや、牛丼屋などのファストフード店。うなぎの販売を控える事も考えて欲しい。

参考資料:

2018年6月水産庁発行「ウナギをめぐる状況と対策について」

鰻を私たちはいつまで食べることが出来るのか?

東大生150人に聞いた「土用の丑の日うなぎ食べますか?」「平賀源内のキャンペーン。伝統じゃない」とも

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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