WBC侍ジャパンの快進撃から見る「日本にあって、韓国になかったもの」とは?“お株を奪った焼肉集会”
まるで公開処刑のような姿に、「ここまでする必要があるのか」と思ったが、これが韓国というお国柄と理解するほうが正しいのかもしれない。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンドで敗退した韓国代表が14日、仁川空港に到着した。選手たちの表情は暗く、何も語らないままで、メディア対応したのはイ・ガンチョル監督だった。
多くの取材陣に囲まれ、謝罪会見のような写真がまた痛々しい。スポーツ専門サイト「SPOTVニュース」がその様子を伝えている。帰国後の感想について聞かれ、イ・ガンチョル監督は「すみません。申し訳ありませんという言葉しかありません」と口を開いた。
「(最後の)試合が終わってからミーティングをしました。一緒にいる間、準備してコンディションを引き上げようとたくさん練習しました。 選手たちはがんばりました。 選手たちはこれからも野球を続けていかなければならない。非難すべて私にしてほしい。選手たちを避難せず、良い言葉をたくさんかけてほしい」
今も韓国内では、多くの識者や専門家が様々な角度から敗因を分析した記事を上げている。どれも一朝一夕ではいかないもので、長いスパンで足元を見つめ直す必要がある。
しかしながら、今回韓国は日本に4-13で惨敗したが、両国チームの雰囲気は対照的だった。もちろん戦力的には日本が上だったとはいえ、これまで韓国が見せてきた粘り強さや勢いがまったく見られなかったからだ。
「ダルビッシュ有のSNSで会食するのを見たが…」
今回の韓国代表の雰囲気について、メジャーリーガーのキム・ハソン(パドレス)がこんなことを語ったという。
「(チームメイトの)ダルビッシュ有がSNSで(日本代表チームが大会前に)会食しているのを見た。韓国代表は実際のところ、そのような機会はなかった。私も約3年数カ月ぶりに代表チームに来たが、外に出たりするのはかなり負担があった。国際大会での成績が良くないこともあり、結局はそのような雰囲気もなかった。仕方がないと思う。監督もコーチも自分たちが責任を負うと言っているが、結局はプレーした選手たちが責任を負うべきだと思う」
日本代表はチームの雰囲気が良くて結束力があり、韓国代表にはチーム一丸となる様子さえなかったという。この証言を見て感じたのは、韓国の強みでもある「チームの結束力」が機能していなかったことだ。
日本が韓国のお株を奪った?
キム・ハソンが語ったダルビッシュ有のSNSの投稿は、大阪にある焼肉店での“決起集会”(5日)のこと。大谷翔平も自身のインスタグラムで写真をアップしてこの時の様子を伝えている。メンバーの約30人が集まってコミュニケーションを取ったこの会の盛り上がりは、すでに報じられたが、それにしても翌日(6日)に阪神タイガースとの強化試合が行われるなかで“焼肉”をたらふく食べていたわけだが、そんなこともお構いなしに、それ以上にチームを一つにする大きな効果があったはずと感じたものだった。
こうした場を設けるのは、実は韓国人が得意とすることころでもある。実際、韓国取材に行くと「ご飯を食べたか?」と必ず気遣われるし、「夜は必ず連絡しなさい」といって、ご馳走してくれる。初めて会う他人同士でも、食事の場を通してコミュニケーションを取ることを韓国の人たちは大事にする。
それが今回のWBC韓国代表にそのような雰囲気さえなかったというのだから、どれほど緊張感があったのかと想像する。今も上下関係が根強い韓国社会だが、大谷やダルビッシュのようなムードメーカーが一人もいなかったのだろうかと思うと少し残念な気もする。「日本が韓国のお株を奪った」と言っては少し大げさだろうか。
“韓国らしさ”とは?
“焼肉”に関する決起集会をテーマにするならば、かつてこんな取材をしたことがある。少し話が変わるが、卓球女子日本代表の平野美宇、伊藤美誠、早田ひならがまだジュニア代表だった頃、当時の監督は韓国人の呉光憲(オ・グァンホン=現・卓球女子韓国代表監督)氏だった。
「卓球は団体戦もあるためチームの結束力を高めるためにはコミュニケーションが欠かせない」と、この韓国人監督は合宿の最終日のあと、必ず全員を焼肉屋に連れていった。それも全額自腹だ。さらにジュニアの子たちに「飲み物を買うときは自分のものだけでなく、もし余裕があれば他の選手の分も買ってあげるといい。それをもらった相手は、どんな気分になるのかを考えるきっかけになる」と教えていたという。それくらいチームスポーツは、技術だけでなく、人と人が心を通わせる必要がある。
さらに元日本代表の前園真聖氏もKリーグでプレーしているが、昨年インタビューしたときに聞いた食事の話がとても面白かった。
「チームメイトからは朝からパンとか食べていたら試合で勝てないって、本気で言われていました。朝から辛いチゲや肉料理がたくさん出るのですが、『それを食べないとお前は試合に出られないし、パワーも出ない、それに勝てないぞ』って、冗談ではなくて、本気で言っている。韓国にはそうした根拠ない自信みたいなものが根底にある気がしています。俺たちはこれを食べているからパワーが出るし、走れるし、勝てるんだと、信じているように感じていました」
“韓国らしさ”は本当に失われてしまったのだろうか。
“韓国のイチロー”「技術は他国に比べて劣っている」
振り返れば韓国は、今回の野球だけでなく、昨年のサッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)でも日本との実力差を見せつけられていた。
ソン・フンミン率いる韓国代表はベスト16入りを果たしたが、日本のドイツとスペイン撃破しての16強入りのほうがインパクトは強かった。韓国代表のDFキム・ミンジェが「日本にはヨーロッパでプレーする選手が多く競争力がある。正直、もう比較することはできない。日本が羨ましい」と語り、MFファン・インボムも「日本と同じ成績を取ったからといって、日本と同じ環境だとは思っていない。欧州に韓国選手が少ないのは、選手だけの問題ではない」と韓国サッカー界の問題点を指摘していた。
韓国はサッカーでも、野球でも日本とその差が開いている現実を見せつけられ、立ち位置に気づかされた。根拠もない自信や威圧感がWBC韓国代表から感じられなかったのは、それだけ力がなかったからなのだろう。
元中日ドラゴンズのイ・ジョンボム氏を父に持ち、メジャー移籍を目指す“韓国のイチロー”イ・ジョンフは「私たちの技術や力は世界の多くの野球選手に比べて、劣っていると感じられた大会でした」と素直に認めていた。その上で「挫折することなく、これから成長していければいい。今大会でそれぞれが感じた部分を改善していかないといけない」と語っている。
次のWBCは2025年開催予定で、2年後に迫っている。時間が限られるなかで、教訓を生かした韓国がどのように成長するのか。いっそのこと、ソウルの韓国料理屋で先輩・後輩関係なく、無礼講で決起集会ができるくらいにはなっていてほしい。