絶対に食べておかねばならない 福岡の「黒い」豚骨ラーメン3軒
熊本で生まれた「マー油」ラーメン
皆さんは「マー油」という言葉をご存知だろうか。「マー油」とはニンニクなどの香味野菜を揚げて香り付けした香味油のこと。ラーメンはもちろん、チャーハンや唐揚げなど様々な料理に使われる万能調味料だ。最近では大手メーカーで市販品も販売されており、スーパーなどで目にした人もいるだろう。
一説には熊本ラーメンの老舗『桂花ラーメン』が生み出したとも言われる「マー油」は、当然のことながら豚骨ラーメンとの相性が抜群に良い。熊本ラーメンはマー油やニンニクチップなど、ニンニクを生かしたものが多いが、白い豚骨スープと黒いマー油のコントラストの美しさと、香ばしいニンニクの香りをまとったスープの美味しさは格別だ。
かつては熊本ラーメンの専売特許のような存在だった「マー油豚骨ラーメン」だが、最近では熊本以外のエリアでも見られるようになってきた。今回は豚骨ラーメンの聖地、福岡で食べられるマー油を使った「黒い豚骨」ラーメンを厳選してご紹介しよう。
福岡でマー油を使った先駆者『博多新風』
2005年に創業した『博多新風』(福岡県福岡市南区高宮1-4-13)は、福岡でいち早くマー油を採り入れた先駆者。店主の高田直樹さんは、実家であるラーメン店の二代目として店を切り盛りしたのちに独立を決意し、熊本県人吉の『好来』であらためて修業して、修業先譲りのマー油を生かした新たな博多ラーメンを作り上げ、博多ラーメンの可能性を広げた。
豚頭とゲンコツを長時間炊き上げたスープは、既存の博多ラーメンよりも濃度は上げながらしつこさは出さないように仕上げた。臭みのない洗練された豚骨スープは老若男女に愛される味わい。自家製麺は歯切れの良さとしなやかさを共存させた。真っ赤な丼に白いスープのコントラストを大切にして、表面に浮かぶ褐色のマー油が色合いのアクセントにもなっている。味だけではなくビジュアルも意識した、他にはないコンセプトを持った博多ラーメンだ。
漆黒の博多ラーメン『博多豚骨ラーメン 伍』
中洲から程近い春吉の国体通り沿いに2014年オープンしたのが『博多豚骨ラーメン 伍』(福岡県福岡市中央区春吉3-12-1)。当初は5種類の出汁を使ったラーメン店『ラーメン5』として創業。2018年にリニューアルして博多ラーメンと油そばの店へとブランドチェンジした。昼夜を問わず観光客や地元客で賑わいをみせている人気店だ。
基本のラーメンはストレートな博多ラーメンのスタイルだが、人気の一品が「春吉ブラック」と名付けられたマー油ラーメン。ブラックという名にふさわしく、しっかりと焦がした真っ黒いマー油が丼一面を覆うビジュアルは圧巻。ニンニクの香ばしさとほのかな苦味と豚骨のコクが混ざり合い食欲を喚起させる。ビジュアルと味わいのインパクトは福岡でも随一だろう。
マー油が香る高粘度スープ『TonTon』
福岡郊外の住宅街に2021年オープンした『TonTon』(福岡県福岡市城南区荒江1-35-21)は、シンプルな豚骨ラーメンから豚骨魚介ラーメンや味噌ラーメンなど、数多くメニューを揃える新進店。福岡の人気ラーメン店出身の店長による、創作系豚骨ラーメンがラーメンファンや地元客から注目を集めている。
「黒ラーメン」と呼ばれる一杯がマー油を使った豚骨ラーメン。ゲンコツや背骨などの豚骨に豚皮や豚足を加えた高粘度のスープは、こってりぽってりとした口あたりながら優しい味わい。丁寧にニンニクを焦がして作られたマー油は、苦味などは一切なくニンニクの香ばしさだけを移したもの。福岡県産のラーメン専用小麦「ラー麦」を使ったオリジナル麺との相性も抜群だ。
福岡といえば定番の博多ラーメンや長浜ラーメンと決めつけずに、時には今回ご紹介したマー油を浮かべた「黒い豚骨ラーメン」も試して欲しい。そうすることで、福岡でラーメンの食べ歩きがより一層楽しくなることだろう。
※写真は筆者によるものです。
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