「アマビエ」の商標登録出願に拒絶理由通知
電通が「アマビエ」を商標登録出願し、物議を醸した件については、既に書きました(関連過去記事1、関連過去記事2)。電通が出願を取り下げたことで、この件は一件落着したのですが、電通以外の出願人によっても「アマビエ」(または、「アマビエ」を含む言葉)の商標登録出願が行なわれており、審査待ち状態となっていました。9月14日に、その中の最初の出願である、お菓子メーカーによる出願(商願2020-040835)に、特許庁より拒絶理由通知(一種の暫定的拒絶)が行なわれていました(この出願は早期審査が請求されていたので通常より早く審査結果が出ます)。
拒絶の根拠条文は、商標法3条1項6号です。
他の拒絶根拠の条文には直接当てはまらないが、この商標を特定企業に独占させてはまずいだろうと審査官が判断した場合に、いわば例外処理的に適用される条文です。拒絶理由通知書には以下のように書かれています(一部省略)。
ロジックとしては、過去記事にも書いた「そだねー」や「大迫半端ないって」等が拒絶された時と同じです。暫定的拒絶なので意見書等により挽回できる可能性はありますが、一般的に3条1項6号を覆すのはハードルが高いです。その他の「アマビエ」商標も同様の審査結果になる可能性が高いでしょう。
ミーム化、流行語化しており、既に多くの商品やサービスで使用されており、いわば「みんなのもの」的状態になっている商標は登録しない(特定企業に独占させない)という、特許庁の審査運用がほぼ固まっているようです。これ自体は好ましいことと思います。なお、仮に商標登録できなくても、使用が独占できなくなるというだけであって、使用が禁止されるわけではありませんので、念のため。
追記:ツイッター等でこのお菓子メーカーの出願自体を批判する声が聞かれます。しかしながら、現時点では「アマビエ」は(おそらく)誰もが登録できないことが明らかになったわけですが、今年の4月時点では自分で出願しておかないと誰か別の会社に登録されて「アマビエ」という名称の菓子が販売できなくなるリスクがあったので、防衛的に先に出願しておくのはやむを得なかったと思います。
追記^2:上には書かなかったですが、この出願には、第三者からの情報提供が行なわれています(内容はネットからは見られません、また情報提供は匿名でできますので提供者が誰かもおそらく不明です)。「アマビエ」が多数の業者によって使用されている証拠を提出し、拒絶すべきと主張したものと思われます。審査官は情報提供に従う義務はないですし、仮に情報提供がなくても同じ結論に至っていた可能性もありますが、一般に「これが登録されるとまずかろう」という商標登録出願がなされた場合には情報提供を行なう意義はあります。