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森保JAPAN、大迫勇也の代わりは誰か?

小宮良之スポーツライター・小説家
アジアカップ、決勝でプレーする大迫勇也(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

「大迫勇也の代わりはいるのか?」

 森保JAPANを語る上で、それは今や大きなテーマになっている。

 ロシアワールドカップ後に新体制となったときから、大迫の影響力は群を抜いていた(以下の記事を参照)。

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20181116-00101287/

 前線に大迫がいることで、ボールは収まり、コンビネーションは生まれる。攻撃を引き回す役割を担うが、彼がボールを受けることで、守備も態勢を作り直すことができる。その点、攻守の要と言える。

 では改めて、大迫の代わりはいるのか?

大迫はどんなプレーをするのか

 そもそも、大迫はどんなFWなのか?

 体の使い方が上手く、バランスにも優れ、ボール技術も卓抜としたものがあるだけに、ポストプレーに長ける。相手ディフェンスを背負いながら、ボールを受け、キープし、あるいはフリックで散らす。前線に杭を打つように起点となれる。

 特筆すべきは、ポストに入ったボールを戻すだけでなく、自ら前を向いてプレーする技術も高い点だろう。“前線の司令塔”というのか――。相手のラインと駆け引きしながらボールを引き出し、深い位置から好機を作り出せるのだ。

<周囲の力を引き出せる>

 そこに最大の特長がある。それによって、中島翔哉、南野拓実、堂安律などの力を引き出しているのだ。

世界で大迫に似たFW

 大迫は、単なるゴールゲッターには収まらない。

 レアル・マドリーのフランス代表FWカリム・ベンゼマは、大迫と近いタイプだろう。両足のキック&コントロールに優れ、守備者に対してアドバンテージが取れる。ターンしたとき、多くの選手はどちらかが得意なのだが、その差がなく、どちらから回転しても視界が開けている。そのおかげで、クリスティアーノ・ロナウドの得点量産をアシストしていた。

 興味深いことに、大迫もベンゼマも、そこまでゴール数は多くない。しかし周りのプレーを活性化し、チームを動かせる。スペイン代表FWパコ・アルカセル(ボルシア・ドルトムント)、フランス代表FWオリビエ・ジルー(チェルシー)、ベルギー代表FWロメロ・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)、ブラジル代表FWロベルト・フィルミーノ(リバプール)などもその系統だ。

 では、日本人FWに代わりはいないのか?

日本人FW候補

 前線で走って潰れ役となって、高さも武器とし、起点となる日本人FWは少なくない。元日本代表の豊田陽平(サガン鳥栖)は、その献身性で際立っている。川又堅碁(ジュビロ磐田)、都倉賢(セレッソ大阪)もそれに近いだろう。ゴールをするためのポジショニングやスキルに優れるフィニッシャーもいる。岡崎慎司(レスター)、小林悠(川崎フロンターレ)、大久保嘉人(ジュビロ磐田)だ。あるいは、浅野拓磨(ハノーファー)、永井謙佑(FC東京)、古橋亨梧(ヴィッセル神戸)のようなスピードスターもいる。

 同じFWでも特性はいくつかに分かれる。

 大迫と同じ万能タイプは、いないわけではない。杉本健勇、興梠慎三(浦和レッズ)、久保裕也(ニュルンベルク)、金崎夢生(サガン鳥栖)、知念慶(川崎フロンターレ)、鈴木優磨(シントトロイデン)は類似点が見える。しかし、所属クラブでの調子が上がっていなかったり、性格的に条件を満たしていなかったり、実績・実力が足りなかったり、一長一短だ。

 そこで森保一監督は今年1月のアジアカップ以降、北川航也、武藤嘉紀、鈴木武蔵を選出している。直近の調子と実力を鑑みた格好だ。

 北川は、2トップでコンビネーションを作りながらゴールを狙うプレーを得意としている。武藤は前方にスペースがある展開で力を発揮し、エリア内では強引にシュートまで持ち込むタイプ。鈴木も運動量とスピードを武器とし、ピンポイントにゴールポジションに入るFWだ。

 つまり、いずれも大迫と同タイプではない。

大迫不在での戦い方

 3月のボリビア戦、1トップに入った鎌田大地は一つの可能性を示した。前半は不完全燃焼のプレーだったが、後半に中島、堂安、南野が入ってからは、コンビネーションのスピードスキルを上げていた。生粋のセンターフォワードではないが、ポストワークも苦にせず、フリックパスなど光るものがあった。ラストパンスのセンスは際立つだけに、前線のプレーメーカーとなり得るだろう。

 しかし結局のところ、同じ選手など存在はしない。

「大迫不在」

 それを想定し、別の戦い方を模索するべきだろう。

 組み合わせ次第で、多様性も生まれる。2トップの関係性を重視するのも一つだろう。0トップのような感覚を選んだ場合、攻撃的MFタイプを配置する形で、南野、鎌田、もしくは香川も候補か。3トップなら、古橋のような機動力のある選手を含めるのも面白いだろう。

 大迫の代役を探す必要はない。大迫の代わりは、大迫しかいないのだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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