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【来日直前インタビュー前編】トリートの突き進む北欧ハード・ロック最前線

山崎智之音楽ライター
TREAT / courtesy of M&I Company

北欧ハード・ロック界の誇る人気バンド、トリートが2018年10月、来日公演を行う。

1980年代にデビュー、ハードでメロディアスなサウンドで世界的な支持を得てきた彼らだが、日本においても多くのファンに愛されている。バンド復活後、2015年1月の“KAWASAKI ROCK CITY”でのヨーロッパ、クラッシュ・ダイエットとの来日、2017年5月の単独来日公演に続く今回の日本上陸は、最新アルバム『ツングースカ』に伴うものだ。

バンドのギタリスト、アンダース“ゲイリー”ヴィクストロームに直撃、前後編の全2回インタビュー記事で日本公演への抱負を語ってもらった。

<日本は今大変だけど、行くことに躊躇はない>

●2018年10月の日本公演、楽しみにしています!

『ツングースカ』アートワーク/キングレコード
『ツングースカ』アートワーク/キングレコード

俺たちも楽しみだよ。今回は特別なセットリストを組むつもりだ。トリートはいま、新たな絶頂期を迎えようとしているんだ。『クーデ・グラー〜最後の一撃』(2010)、『ゴースト・オブ・グレイスランド』(2016)、『ツングースカ』(2018)という強力なアルバムを作って、ライヴでプレイする曲の選択肢が拡がった。ヘヴィな曲やメロディアスな曲、みんながずっと聴きたかった曲やサプライズも混ぜながら、トリートというバンドのさまざまな面を表現した楽しいショーになるよ。地震や台風などで、日本は今大変な状況だけど、俺は行くことに躊躇なんてない。トリートの音楽がみんなの悲しみを少しでも和らげることが出来たら嬉しいね。

●2015年・2017年の日本公演の感想を教えて下さい。

2015年、“KAWASAKI ROCK CITY”でヨーロッパとクラッシュ・ダイエットとやったときは、お客さんの反応がどんなものになるか想像も出来なかった。すごく久しぶりの日本公演だったからね。その前に来たのは『オーガナイズド・クライム』(1989)に伴うツアーだから、25年のブランクがあった。お客さんの多くはヨーロッパを見に来たのかも知れないけど、俺たちにも熱気あふれる反応があったよ。そのとき確信したんだ。次のアルバムを出したら、すぐに日本に戻ってショーをやろうってね。それで『ゴースト・オブ・グレイスランド』を発表して、単独ツアーをやった。ファンとも話したけど、彼らがトリートの音楽を愛して、待っていてくれたことが本当に嬉しくて、胸が熱くなったよ。俺たちは常にファンとのコミュニケーションを大事にしてきた。1980年代以来のファンもいれば、最近ファンになった人もいる。全員がファミリーだと考えているよ。

●2013年には解散するという噂もありましたが、今のトリートを見て“解散”の2文字を思い浮かべるファンはいないでしょうね。

そうであることを願っているよ(笑)。実際、2013年にも解散するつもりはなかったんだ。ツアーが一段落したらバンドをひと休みさせる筈だったのが、話が大きく膨らんでしまったんだよ。俺はずっと曲を書いていたし、トリートを完全に終わらせるつもりはなかった。2014年にスウェーデンで野外フェスティバルにも出演したし、“KAWASAKI ROCK CITY”のオファーがあったとき、やらない理由はなかったよ。日本に行く前から『ゴースト・オブ・グレイスランド』の曲を書き始めていたのを覚えている。良いアルバムになることを確信していたし、すぐにでも日本のファンのためにプレイしたかった。それで2017年にもジャパン・ツアーを行うことにしたんだ。

●1980年代や1990年から、バンドの運営にはどんな変化がありましたか?

定期的に民主的なミーティングを行って、透明化を図るようになった。オープンな対話をすることで、問題点も見えてくるし、ポジティヴな形で前進出来るようになったよ。2006年に再結成して、もう12年が経つけど、バンドは良い状態にあるんだ。1980年代から1990年代にかけてはメンバー交替が絶えなかったけど、再結成してからはベーシストを除けばラインアップが安定している。それぞれが異なった人生経験を経て、人間としてもミュージシャンとしても成長することが出来た。1980年代にはバンドのメンバーそれぞれが考えていることとマネージメント、レコード会社の考えていることがバラバラだったんだ。今ではバンド全員がひとつの方向を向いているし、自分たちで舵を取っている。それがポジティヴな結果を生んでいるよ。

●前回の日本公演では『ドリームハンター』(1987)メドレーや「ゲット・ユー・オン・ザ・ラン」や「ワールド・オブ・プロミセズ」など1980年代の曲もプレイしましたが、昔の曲に対するエモーションは変化しましたか?

それらはトリートというバンド名と深く関連を持った曲だ。書いた当時と変わらない愛情を注いでいるし、30年近くファンの心に留まり続けていることに誇りを感じるよ。10月の日本公演でもいろんなトリート・クラシックスをプレイするから、楽しんで欲しい。トリートには幸か不幸か、世界的なメガヒット曲というものはないから、ヒット曲に頼ることなく、新しい試みに挑み続けることが出来る。ライヴの演奏曲目も、幾つものチャレンジがあるんだ。

TREAT Live In Japan 2017 / Photo by Yuki Kuroyanagi
TREAT Live In Japan 2017 / Photo by Yuki Kuroyanagi

<日本でプレイすることは、“成功”の象徴なんだ>

●今回のツアーは『ツングースカ』ワールド・ツアーの最初といえるでしょうか?

その前に9月15日、ドイツのハンブルクでやる“インドア・サマー”フェスティバル に出演するけど、それは単独のヘッドライナー・ショーではないし、『ツングースカ』に伴うワールド・ツアーは実質、日本から始まると考えているよ。ステージ・セットは『スクラッチ・アンド・バイト』(1985)の頃のヴィンテージな雰囲気をモダンにアップデートしたものになるんだ。バンドのロゴはデビューから一貫しているし、誇りにしている。俺たちのライヴでのトレードマークだし、大事にしていきたいね。

●トリートのライヴを見たことがない人に、どのように説明しますか?

ヘヴィでメロディック、パーティー・フィーリングのあるロックだよ。バンドが演奏するだけではなく、お客さんにも参加してもらうんだ。メロディック・ロックはトレンドと関係なく、タイムレスな存在たり得る。トリートのショーにはデビュー当時のバンドを知るオールド・ファンも来るし、ハイスクールの学生みたいな若いファンも来る。会場が一体になって一緒に歌うというのは、若いリスナーにとってはオールドスクールに思えるかも知れないけど、最高に気持ちがいいよ。とにかく全編、ポジティヴなフィーリングが満ち溢れるショーだ。世界には腹の立つことが幾らでもあるけど、それを忘れて、1時間半のあいだロックに身を委ねるんだ。

●1990年8月の初来日公演の思い出を教えて下さい。

初めてのジャパン・ツアーは俺のミュージシャン人生で最高の瞬間のひとつだった。空港に到着した瞬間にファンに囲まれて、まるでロック・スターになった気分だったよ(笑)。『オーガナイズド・クライム』は世界各地で好評だったし、北欧やドイツをツアーして、全身が温まっていた。バンドにとって、すごく良い時期だったんだ。当時はインターネットもなかったし、日本がどんな所かもよく知らなかった。でもショーはすごく盛り上がったし、ツアーの後、2日間ぐらいオフがあって、日本の文化にも触れることが出来た。素晴らしい思い出しか残っていないね。西洋のロック・バンドにとって、日本でプレイすることは、“成功”の象徴なんだよ。ひとつの目標なんだ。時間はかかったけど、日本に戻ることが出来て本当に嬉しいね。

●ところで何故あなたのニックネームは“ゲイリー”なのですか?

ゲイリー・ムーアみたいなギターを弾くから...というのはウソで(笑)、1980年代に人気のあったヨースタ・エクマンという俳優が『Grasanklingar』(1982)というコメディ映画で演じたのがゲイリーというキャラクターから取ったんだ。彼は亡くなってしまったけど、スウェーデンではすごく人気のあった俳優だった。

●ちなみにトリートはゲイリー・ムーアと接点はありましたか?

1986年、クイーンがストックホルムのサッカー・スタジアムでライヴをやったとき、ゲイリー・ムーアとトリートがオープニング・アクトを務めたんだ。俺は当時21歳ぐらいだったけど、クイーンもゲイリーも好きだったから、天に昇った気分だったね。ゲイリーのショーをステージの袖から途中まで見ることが出来たんだ。その日、スウェーデン北部のフェスティバルに向かわねばならなくて、途中で出なければならなかったのが残念だったよ。ゲイリーと話すことが出来なかったことは、今でも悔やんでいるよ。彼がプレイしたシン・リジィの『ブラック・ローズ』(1979)は傑作だし、『ヴィクティムズ・オブ・ザ・フューチャー』(1984)の頃のヘヴィなサウンドも大好きだった。その後のポップな路線も、彼のヴォーカルが飛躍的に良くなって良かったね。彼が1990年代にブルース路線に転向してからも何度かライヴを見たし、特に『スティル・ゴット・ザ・ブルース』(1990)は素晴らしいアルバムだった。でもロック時代の方が好きかな。クイーンのフレディ・マーキュリーもゲイリーも亡くなってしまったけど、 彼らと同じステージに立つことが出来たのは光栄だよ。

後編では彼らの新作アルバム『ツングースカ』について、じっくり語ってもらおう。

TREAT Live In Japan 2017 / Photo by Yuki Kuroyanagi
TREAT Live In Japan 2017 / Photo by Yuki Kuroyanagi

【TREAT TUNGUSKA・TOUR 〜 Melodic Power Metal Night Vol.24 〜 】

【 東 京 公 演 】

10月4日(木)渋谷クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

【 愛 知 公 演 】

10月5日(金)名古屋クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

【 大 阪 公 演 】

10月6日(土)梅田クラブクアトロ

開場17:00/開演18:00

なお公演当日、Tシャツ購入の方の中から抽選でトリートとのミート&グリートが当たることが発表されている。詳細は公演特設ウェブサイト↓まで。

公演特設ウェブサイト

http://www.mandicompany.co.jp/Treat.html

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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