NPBだけじゃない!「村田フィーバー」を盛り上げる独立リーグの女神たち
ゴールデンウィークは毎年独立リーグにとっても書き入れ時だ。普段なかなか注目されることも少なく、球場の多くは決してアクセスの良くない中、平日の試合などでは閑古鳥が鳴くことが多いこの小規模プロ野球でも、初夏の雰囲気の漂う5月の連休中は、スタジアムに多くのファンを集める。とくに、今年は栃木ゴールデンブレーブス(以下栃木GB)にあの村田修一が入団したことによって、ルートインBCリーグは「村田フィーバー」を迎えている。なんでも、栃木GBの開幕戦は、押し寄せるファンに球場のキャパが追いつかず、本拠・小山市郊外にある球場の駐車場が満杯になったため、渋滞を巻き起こしたという。
5月5日、こどもの日の栃木市営球場にも、球場開場前から列ができるほどの盛況だった。この日の観衆は1700人。独立リーグとしては上々の出来だ。残念ながら「真打ち」の村田は、初回の満塁のチャンスに凡退すると、足に違和感を覚えたということで、交代となったが、内野のメインスタンドを満員にしたファンは、栃木、新潟の両軍が点を取り合う展開に最後まで席を立つことなくゲームを楽しんでいた。
そんなスタンドを盛り上げているのがチアダンスチームの存在だ。近年プロ野球(NPB)12球団が各々自前のチアをそろえ、中にはCDを出し、ライブを開くなど半ばアイドルグループのようになっているものもあるが、その波は独立リーグにも押し寄せてきている。
==栃木のアイドル?「GOLD LUSH」==
栃木GBのチアパフォーマンスチームには「GOLD LUSH(ゴールドラッシュ)」という名前が付けられている。野球の試合だけでなく、県内の様々なイベントにも盛り上げ役として参加しているらしいが、メンバーの募集は、野球を前提として行われており、活動のベースは独立リーグである。また、ダンスアカデミー、「GOLD LUSHチアダンスアカデミー」も来月から始めるという。
この日、試合前に話を聞いた4人、カナエさん、マナさん、レイさん、スズさんは、全員野球大好き女子だった。ちなみに名前は本名かどうかはわからない。だって、アイドルだから?
スタンド、会場の人々の喜ぶ姿がなによりのエネルギー源という4人のうち、カナエさん、マナさん、レイさんは普段はOLをしている。栃木球団の親会社は株式会社エイジェックという総合人材派遣会社なのだが、カナエさんは、ここの正社員。あまりにしっかりしたインタビューの受け答えに前職を尋ねると、秘書だったそう。仕事としてチアパフォーマンスを行うことに不安はなかったのかという質問には、「もともと学生時代にチアダンス部に入っていたので、不安よりも一期生としてチームを作って行ける期待の気持ちの方が大きいです」との答え。
野球を含むイベントは基本的に週末にある。ひょっとして休みなしのブラック?という当方の疑惑にも、「いえいえ、その分はちゃんと平日に休日をいただいています」とのお返事。平日は、主にGOLD LUSH関係の事務処理や営業を行っているそうだ。
本社の社員以外のメンバーにはボランティアというかたちで参加してもらっている。もうひとりのOL、レイさんは他の会社に勤めていて、会社にも報告の上、活動しているという。彼女の場合、休日なしということになってしまうが、それでも、「皆さんの笑顔で元気になれます」と現在の活動に十分満足している。
スズさんは現役大学生。こちらもボランティア。昨年地元にできた栃木GBに野球好きの火が付き、チアの募集に応募したという。地元の大学に通っているとあって、知り合いがスタンドに来ることもあるそうだ。
やっぱりアイドル、「恋愛禁止」
それにしても、うら若き女性がフィールドにいると、若い選手たちは気が気でないだろう。そのあたりは、当然球団も考えていて、選手とチアの接触はご法度だという。
「選手の皆さんにはプレーに集中してもらいたいですから。直接話をすることは禁止です」
とは言え、通路の狭い地方球場で試合をすることが多い、独立リーグ、すれ違うこともあるだろう。挨拶くらいはしないのかと問うと、
「もちろん軽く挨拶はしますよ。でもそこまで」
とカナエさん。
このご法度は、選手の方にも厳しく指示されているらしいが、かわいらしい女性を前に、若い選手にとっては気の毒な話だ。
応援も大事だが、あくまで見送る側
ところで栃木GBと言えば、元巨人の村田だ。今週末には3軍ではあるが、巨人との3連戦がホームタウン小山で行われる。大入り間違いなしと思われるこのシリーズには、冠スポンサーが付き、「男・村田祭り」と題して球団も盛り上げに懸命だ。
しかし、これにも巨人ファンだというマナさんは複雑な表情だ。
「村田選手を間近で見ることができて、それはうれしいんですけど、やっぱり村田選手はもっと上のレベルでプレーすべき選手なんで、半分は悲しいですね」
そう、彼女たちはわかっている。独立リーグという舞台は、あくまで仮の舞台であって、彼らのプレーすべき場所はもっと上のレベルにあることを。彼女たちは、自分たちに見送られてチームを巣立つ選手を心待ちにしながらフィールドで笑顔を振りまいている。
(写真は全て筆者撮影)