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【U19ワールドカップ日本代表】ジェイコブスの強い決意にチームメイトたちが応えて手にした貴重な1勝

青木崇Basketball Writer
右ひざの痛みを耐えながらチームを牽引したジェイコブス (C)FIBA.com

 FIBA U19ワールドカップを戦う日本にとって、2戦目のエジプト戦はベスト8進出という目標を果たすためにも、どんな内容でも勝たなければならない試合だった。前日のブラジル戦の前半で右ひざを痛めてしまったジェイコブス晶は、「昨日ちょっと足を痛めてしまったけど、今日の試合前くらいに出ると決めました。まだ少し痛みがあってもとにかく100%出して頑張れば」という強い思いで試合に臨もうとしたことは、だれよりも早くコートに出てウォームアップを開始していたことでも明らかだった。

 スロースタートだったブラジル戦と違い、ジェイコブスは岡田大河のアシストから3Pショットを成功させると、ドライブとカットで立て続けにフィニッシュしてリズムに乗った。オールラウンドなスキルを存分に発揮し、前半だけで23点を稼いだことによって、日本はハーフタイムで13点のリードを奪った。

「普通に練習していること、シュートが得意というのもあるんですけど、前からディフェンスは近づいてくるし、やはりインサイドのほうが確率は高い。(インサイドとアウトサイドで)オフェンスを混ぜていれば、ディフェンスされるのが難しくなるし、ドライブからシュートが打てたのはよかったと思います」と語ったジェイコブスのアグレッシブな姿勢は、チームメイトたちに大きな自信をもたらしていた。それは、武藤俊太朗と内藤耀悠がオープンの3Pショットを決めるなど、ベンチから出てきた選手の貢献度(トータル31点)はブラジル戦と明らかに違っていた。

 エジプトがフィジカルの強さを全面に出してきたこともあり、日本はリバウンドで苦戦する時間帯もあったが、最後まで粘り強く戦い続けていた。最終的に12本の差をつけられたとはいえ、セカンドチャンスからの失点を11に限定。24本のアシストと42.9%という高い3P成功率が、82対70のスコアで勝利を手にする要因になった。

「最初の20分間、我々はすごくいいプレーをしていた。だが、3Qと4Qは良くなかったし、前半は4本だったのに4Qだけで8本のターンオーバーがあった。選手たちは40分のゲームだと改めて認識しなければいけない。晶はよく回復してくれたけど、後半は疲れていた」とは、試合後のアレハンドロ・マルティネスヘッドコーチ。22点をリードして迎えた4Qはドリブルが多くなり、ボールをシェアするということへの意識が少し低下し、立て続けにターンオーバーを犯してしまった結果、残り1分28秒で9点差まで迫られた。

ジェイコブスに次ぐ15点を記録するなど、ミスを自身で取り返すという強さを見せた湧川 (C)FIBA.com
ジェイコブスに次ぐ15点を記録するなど、ミスを自身で取り返すという強さを見せた湧川 (C)FIBA.com

 しかし、4Qの序盤で悪い流れのきっかけを作ってしまった湧川颯斗が、残り1分5秒にクイックネスを生かしたドライブでアンド1、33秒も3Pプレーとなるジャンプショットを成功。ポイントガードとしての経験値の低さによって6本のターンオーバーを記録してしまったものの、ミスをしても強気な姿勢を失わなかったことは、湧川自身にとってもこのチームにとっても大きなプラスになる。湧川は試合を次のように振り返った。

「今日はスタートじゃなかったんすけど、その分シックススマンとして本当にエナジーを与えないといけないと思ってコートに入ったので、そこの部分ではしっかり本当に役割っていうのを果たせたのかなとは思います」

 日本は4Qの戦い方を反省しなければならないが、ワールドカップのグループ戦で勝利を手にできた点で大きな意味がある。「ドリブルばかりするのではなく、ボールをしっかりシェアできている時、我々はいいチームになっている。選手たちはそれを理解しなければならない。毎日口酸っぱく言っている」とマルティネスコーチが語るように、日本はボールと選手が連動するオフェンスを展開し続けなければならない。また、チーム全体でリバウンドの本数で差をいかに少なくするかなど、スペイン遠征から直面している問題の改善を27日のセルビア戦で目指すことになる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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