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正月三が日の天気 日々の天気予報としては限界に近いが割りと精度が良い予報

饒村曜気象予報士
門松(写真:アフロ)

予測可能性

 日々の天気予報は、コンピュータが進歩しても半月先までがやっとと言われています。

 それは、技術的な難しさと、本質的な難しさがあるからです。

 技術的な難しさで言うと、観測には必ず誤差が含まれます。

 ごくわずかと言っても、ある時点での状態を正確に表すことができません。

 また、コンピュータを使い、大気の動向を記述する物理方程式を解いて将来の様子を計算する数値予報と呼ばれる手法で天気予報を行っていますが、この計算を行うにあたっては、大気を立体的な格子点の値で表現しています。

 したがって、格子点の間隔より小さい現象を直接計算できないのですが、この小さな現象の効果が、時間がたつにつれ大きくなり、予報誤差は予報時間の経過とともに大きくなってくるからです。

 さらに、本質的な難しさで言うと、大気のふるまいを記述する物理方程式には、非線形と呼ばれる複雑な形が含まれており、これが源となって問題を複雑にしています。

 「蝶々が羽ばたいた風による誤差が、時間とともに大きくなって予報が失敗する可能性がある」ということから、「バタフライ効果」という言葉もあるくらい、長時間先の予報は難しいのです。

 気象庁は一か月予報とか、三か月予報などを発表していますが、これは平均的な値を予報しているのであって、日々の天気予報の手法で計算しているのではありません。

 全く別の手法です。

16日先の天気予報

 気象庁では、民間気象会社に対して、予報の限界に近い16日先までの天気予報を発表することを認めていますが、必ず信頼度を付けて発表することを求めています。

 図1は、ウェザーマップ社の16日先までの天気予報ですが、ここには、降水の有無の信頼度として、AからDまでの5段階の信頼度がついています。

図1 東京の16日先までの天気予報(12月19日発表)
図1 東京の16日先までの天気予報(12月19日発表)

 この予報では、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性の少ない曇)しかない予報です。

 また、信頼度が一番高いAが11日、ニ番目に高いBが4日、三番目に高いCが1日となっており、一番低いEやニ番目に低いDの予報の日がないという信頼度の高い予報です。

 また、図2は、新潟の16日先までの予報ですが、これも信頼度の高い予報です。

図2 新潟の16日先までの天気予報(12月19日発表)
図2 新潟の16日先までの天気予報(12月19日発表)

 ほとんどの日で、雪ダルママーク(雪)や黒雲マーク(雪や雨の可能性がある曇)ですが、降水の有無の信頼度が高いAの日が過半数です。

 DやEの日もありますが、正月三が日を含む16日先までの現在の天気予報は、信頼度の高い予報と考えられます。

 これは、冬に多い西高東低の冬型の気圧配置が続くためと考えられます。

正月の天気

 予報の限界である16日先までの天気予報をみると、各地の正月の天気は、図3から図5のようになります。

図3 令和4年(2022年)1月1日の全国の天気予報
図3 令和4年(2022年)1月1日の全国の天気予報

 元日の全国の天気予報を見ると、日本海側で雪ダルママークや、黒雲マークが多く、太平洋側でお日さまマークと白雲マークが多くなっています。

 ただ、太平洋側でも、仙台は黒雲マークに雪ダルママークとなっています。

 これは、奥羽山脈の谷筋を通って雪雲が仙台に流れ込んでくる可能性があるからですが、降水の有無の信頼度は、5段階で二番目に低いDです。

 また、名古屋も黒雲マークで、降水の有無の信頼度は、一番低いEです。

 若狭湾から関ケ原を通って雪雲が入ってくる可能性があるからです。

図4 令和4年(2022年)1月2日の全国の天気予報
図4 令和4年(2022年)1月2日の全国の天気予報

 1月2日は、元日とほぼ同じ天気予報ですが、広島や福岡、松江で傘マーク(雨)や雪ダルママークが出てきます。

 降水の有無の信頼度は、DやCとやや低いのですが、元日よりは、天気が崩れそうです。

図5 令和4年(2022年)1月3日の全国の天気予報
図5 令和4年(2022年)1月3日の全国の天気予報

 1月3日も、元日とほぼ同じ天気予報ですが、降水の有無の信頼度が低くなってい

る地方が少しずつ増えています。

 ちなみに、正月明けの1月4日の天気予報も元日と似た天気予報です(図6)。

図6 令和4年(2022年)1月4日の全国の天気予報
図6 令和4年(2022年)1月4日の全国の天気予報

 正月の天気予報は、現時点においては、限界に近い所での予報です。

 段々と予報の精度が高くなってきますので、できるだけ最新の予報で正月の計画を修正してゆくことが必要と思います。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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