なぜバルサはこのタイミングでシャビを呼んだのか?グアルディオラとの比較と新たな旅路。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritayasushi/00267193/title-1636423088896.jpeg?exp=10800)
異例の就任会見だった。
現地時間11月8日にシャビ・エルナンデスのバルセロナ監督就任会見が行われた。本拠地カンプ・ノウには、およそ9万4400人が詰め掛け、バルセロナの生え抜きであるシャビの帰還を歓迎した。
![シャビが監督になり成長が期待されるファティ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritayasushi/00267193/image-1636423516151.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「バルセロナから2度話があった。彼らが否定した時はあったけど、それがあったのは確かだ。でも、僕はもう少し時間が必要だと思った。今回はジョアン(・ラポルタ会長)から直接電話をもらい、疑いはなかった。彼はクラブ史上最高の会長だ。表と裏の顔を使い分けたりしない」とはシャビのコメントだ。
「バルサは世界で最も難しいクラブだ。なぜなら、良いプレーをして、勝たなければいけないからだ。その要求を取り戻さないといけない」
![サポーターの声援に応えるシャビ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritayasushi/00267193/image-1636423610848.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
シャビは決して良い状況でバルセロナに戻ってきたわけではない。
現在、バルセロナの財政は非常に厳しい。負債は13億5000万ユーロ(約1750億円)、昨季の損失は4億7100万ユーロ(約617億円)。この夏の補強はメンフィス・デパイ(フリートランスファー)、エリック・ガルシア(フリートランスファー)、セルヒオ・アグエロ(フリートランスファー)、ルーク・デ・ヨング(レンタル)と移籍金ゼロの選手を加えたのみだ。ロナルド・クーマン前監督の解任にも、違約金の支払いの問題があり、時間がかかった。
■シャビの原点
シャビは11歳でバルセロナのカンテラに入り、18歳でトップデビューを飾った。彼をデビューさせたのは、ルイ・ファン・ハール(現オランダ代表監督)である。
以降、トップチームで767試合に出場して、25個のタイトルを獲得した。
だが“黄金時代を知る者”の帰還が成功を保証するとは限らない。アンドレア・ピルロ(ユヴェントス)、クラレンス・セードルフ(ミラン)、フランク・ランパード(チェルシー)らはチームを立て直せず、早々と心のクラブから去ることになった。
一方で、成功例もある。ジネディーヌ・ジダン(レアル・マドリー)、アントニオ・コンテ(ユヴェントス)、ペップ・グアルディオラ(バルセロナ)が現役時代を過ごしたチームに栄冠をもたらした。
![現役時代のシャビとグアルディオラ監督](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritayasushi/00267193/image-1636423686544.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
シャビに関しては、他ならぬグアルディオラが模範となり、だがそれゆえに両者の比較は避けられないだろう。
「シャビはバルセロナをよく知っている。彼はポジティブな性格で、肯定的なエネルギーをもたらすだろう。彼の献身性、階級、努力といったものが物事を前進させるはずだ。私は誰の後継者でもなかった。彼もまた、私の後継者ではない」とはグアルディオラの弁である。
対して、「グアルディオラは世界最高の監督だ。いかなる比較も、僕のためにはならない。期待されているのはわかっている。僕は世界最高のクラブにいるんだ。自らに高い要求をしなければいけない。グアルディオラと比較されるだけで、それはひとつの成功だ。勝利を得られるように努めたい」とはシャビの言葉だ。
■アラゴネスの影響と四人の創造主
シャビ、グアルディオラ、そしてヨハン・クライフ。この系譜に想いを馳せる人は少なくない。
だが、ここにもう一つの機軸を加える。それはスペイン代表で監督を務めたルイス・アラゴネスの存在だ。
シャビは2000年にホセ・アントニオ・カマーチョ監督の下でスペイン代表デビューを果たしている。しかし、代表ではレギュラーポジションを確保するのに苦しんでいた。そのシャビを主軸に据えたのが2004年に就任したアラゴネスである。
アラゴネスは常々、スペイン代表がフィジカル面では他国に劣りながら、技術面では世界でトップ5に入ると考えていた。ゆえにシャビ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、セスク・ファブレガスが重宝された。クワトロ・フゴーネス(四人の創造主)と称された選手を中心に、スペインはEURO2008で優勝。シャビは大会MVPに輝いた。
アラゴネスは選手との対話を大事にする監督だった。そして、勝者のメンタリティを持っていた。「勝利して、勝利して、再び勝利せよ」というのは彼が残した有名なフレーズだ。
2008−09シーズン、バルセロナはグアルディオラ監督の下でセクステテ(6冠)を達成した。前人未到の偉業だった。シャビ、イニエスタ、リオネル・メッシ…。そのチームでも、小柄な選手たちが中心にいた。ただ、その前にアラゴネスとスペイン代表の成功があったことを忘れてはならない。シャビ自身、影響を受けた監督としてグアルディオラとアラゴネスの名前を挙げている。
![EURO2008で優勝したスペイン](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritayasushi/00267193/image-1636423915463.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
シャビはバルセロナとの2024年夏までの契約を結んだ。ブラジル代表のアシスタントコーチのオファーを蹴って、バルセロナの監督を選んだ。
覚悟を決めてバルセロナに到着したシャビだが、簡単な挑戦ではない。レアル・マドリーと勝ち点10差。チャンピオンズリーグ出場権内に勝ち点6差だ。今季のチャンピオンズリーグではベンフィカとグループ2位の座を争っている。勝利して、勝利して、再び勝利するーー。それこそが、現在のバルサに求められているものだ。