キャンプ用の温水床暖房器具を作ってみた!電気を使わず、お湯の圧力だけで循環するエコな暖房装置
テントの中で使う安全な暖房器具が欲しいと思って温水循環式の暖房装置を作ってみました。
この装置は、逆止弁を取り付けた銅管コイルを下半分で加熱(水の膨張)、そして上半分で冷却(水の収縮)することで電気を使わずにチューブ内を温水が循環する仕組みになっています。
暖かい温水チューブはテントの中に入れて、燃焼器具は外に出して使うので一酸化炭素中毒の心配が無いという事も利点です。
灯油燃料のキャンプ用コンロで使えば、エコで とっても暖かいです。
この記事では銅管とシリコンチューブで製作した温水暖房システムについてご紹介します。
製作材料
この「キャンプ用温水暖房装置」を製作する際に使用した材料は以下になります。
【製作材料】
・コイル銅管 6.35×0.8mm:10m
・シリコーンチューブ 6×8mm:10m
・黄銅製ホースニップル G1/8:2ヶ
・ロックナット G1/8:2ヶ
・ヒートシンク
・ホースバンド
・百均のステンレスマグ 450ml:1ヶ
・逆止弁:2ヶ
・百均の貯金箱缶:1本
・カセットガスの空き缶:3本
あと、銅管用のベンダーもあると曲げ加工が楽になります。
10mの銅管コイル
初めに百均の貯金缶に銅管を巻き付けてコイル状に加工します。
意外と力が必要です。
10メートルの銅管もコイル状に巻くと、こんなにコンパクトになります。
冷却タンク
次に冷却タンクを製作します。
まず、百均のステンレスマグカップの取っ手を外して穴をあけ、ホースニップルを取り付けます。
マグカップの底に取り付けるホースニップルには水漏れ防止の為にパッキンが必要ですが、無ければゴム板から自作しても良いでしょう。
パッキンをホースニップルに取り付けます。
そして、逆止弁を取り付けたシリコンチューブとマグカップの底にあるホースニップルを接続します。
マグカップの底からチューブへ水が流れるので、カップから見ると逆止弁の向きは外側になります。
ここで、一度マグカップに水を入れて水漏れが無いかを確認します。
最後にヒートシンクをマグカップの底に取り付けたら『冷却タンク』の完成です。
このヒートシンクは冷却タンク下の配管に隙間を作る目的で取り付けました。
冷却コイル
次に『冷却コイル』を作ります。
先程巻いた10mの銅管コイルの先端部分を更に小さなコイル状に加工します。
ドライバーの丸い柄の部分に銅管を巻き付けて加工して、冷却タンクの中に曲げ入れます。
巻き数を徐々に増やして実験したところ、5巻き目で温水循環が成功しました。
そして、配管の出口には逆止弁を取り付けたシリコンチューブを接続します。
配管の出口から見ると逆止弁の向きは外側になります。
仕切り板
カセットガスの空き缶を利用して『仕切り板』を製作します。
銅管コイルは筒抜けになっているので、そのままストーブの上で加熱すると全体が加熱されちゃいます。
なので、コイルの下半分を加熱用、上半分を冷却用と分離する必要があるのです。
ガス缶ならタダだし、普通のブリキ板と比べて強度も高いと思います。
傾き防止&沸騰防止トラップ
銅管コイルは斜めに巻かれているので平らな場所へ置くと少し傾きます。
そこで、カセットガスの空き缶を切り開いた鉄板を底部に巻いて傾きを修正し、ホースバンドで固定します。
使い始めは、ガス缶の表面の塗装が焼けて臭い煙が出ますので要注意です。
あと、加熱する際に発生した水蒸気が逆止弁入口に逆流しないようにする為にコイルを3巻きほど外側へ出します。
外側にある3重巻きのコイルには絶えず水が溜まっている状態なので、水蒸気が発生しても逆止弁からは逆流しなくなります。
給水側の逆止弁を接続する
銅管コイルの底と給水タンクの底を接続します。
ここが、タンクから配管内部に流れる給水側になります。
ヒートシンク
加熱コイルと冷却コイルを分ける仕切り板のすぐ上部にヒートシンクを取り付けます。
配管の上側(上半分)まで膨張してきた水蒸気の温度を下げる目的があります。
4段階で冷却
配管内の水蒸気は以下の4段階で冷却します。
①小型のヒートシンクで水蒸気部分の配管を冷却。
②チューブからの戻り水でタンク内の配管を冷却。
③タンクの水が配管に吸い込まれることで一気に冷却。
④タンクの水面が下がって露出した配管を気化熱で冷却。
ポイントは①と③の、熱湯より水蒸気を優先して冷やす事です。
お湯を冷やすより収縮率の大きい水蒸気を冷やす方が配管の内圧が下がって水が引き込まれやすくなるからです。
ただ、一見すると暖房に利用する熱湯が冷却タンクの中を通るので無駄に水温が低下しそうですよね。
しかし、実際には冷却タンクの水温は98度まで上昇するので暖房に利用する熱湯の温度は下がらず、チューブから水が戻った時点で一気に冷却が始まります。
冷却タンクに溜まっている温水では配管の温度は、ほとんど下がりません。
タンクの温水面が下がり、コイルが露出することで奪われる気化熱で冷却します。
温水循環マット
温水床暖房システムとして機能させるために『温水循環マット』を製作します。
使用する材料は、どこのホームセンターにも売っている通常の「アルミ ロールマット」です。
この銀マットを1200mm×400mmのサイズにカットします。
シュラフの下や中に入れるなら、このくらいのサイズが使いやすいでしょう。
シリコンチューブの原寸に合わせて、銀マットに埋め込める幅にカットします。
切リ抜いた型は最後まで取り除かないようにします。
そして、銀マットの裏から布テープを貼った後で、型を取り除きます。
テープの粘着力が強かったので、ウレタンが少し残っちゃいました…
銀マットの裏を見るとテープが貼られている事が良く分かります。
そして、もう一枚同サイズの銀マットを切り出します。
百均の両面テープをマットの周囲と中央にバッテン状に貼ります。
コーナー部分には百均の「プラスチック用ボンドGPクリヤー」を塗って貼り合わせました。
8mmの銀マットを2枚合わせているので16mmの厚みになっています。
この状態だと布テープの粘着材がマットの溝でベタベタします。
なので、マスキングテープを溝の底に貼ってシリコンチューブがベタベタになるのを防止します。
次にマットの溝に『チューブホルダー』を取り付けます。
今回は家の倉庫にあったビニールホースを流用しましたが、ホームセンターでも安く売っています。
使用したビニールホースは外径φ10mmで、3センチほどにカットして縦半分に切れ込みを入れます。
チューブの出入口2か所、U字カーブ5か所、L字カーブ2か所、直線6か所、合計15個のチューブホルダーを作ります。
そして、ここも百均のボンドで固定します。
ビニールホースに切れ込みが入っているので、マットからシリコンチューブを簡単に着脱できるようになりました。
シリコンチューブを銀マットの溝にハメてみます。
チューブはマットにセットした状態でも長さに余裕があります。
銀マットの厚みは8mmでシリコンチューブの直径は10mmですが、銀マットを2枚重ねているので上から押さえても問題ありません。
マットの上に体重をかけて乗っても、チューブが潰れて水流が遮断されることはありません。
ただ、この温水マットはチューブに直接触れてしまう状態になっています。
同じ場所に長時間触れていると低温火傷する可能性があるので、使用する際は薄手のブランケットを温水マットの上に敷いてから使うと安全でしょう。
マットと温水暖房装置を接続
この「キャンプ用温水暖房システム」の仕組みを順番に説明します。
①キャンプ用コンロで本体を加熱する。
②配管内の下側の水が熱湯になる。
③膨張した熱湯が上側の水を押す。
④上側の水が逆止弁出口から吹き出す。
⑤吹き出た水はチューブを流れる。
⑥チューブの水が冷却タンクへ戻る。
⑦冷却により配管の内圧が下がる。
⑧内圧低下で逆止弁入口に吸込力発生。
⑨タンクの水が配管に吸い込まれる。
⑩更に冷却されて配管内が満水になる。
※①~⑩を繰り返して配管内全体が熱湯になっていきます。
と文字で説明すると「え!意味が分からん!」と言われそうですね…
要するに、配管内の下半分の水蒸気が、上半分の熱湯をチューブに押し出しているのです。
そして、チューブから水が戻ってきた時点で配管の冷却が始まり、タンクから水が吸い込まれて元に戻るという仕組みです。
氷点下2度の気温下でのキャンプも暖かくて快適でした。
灯油でトロ火使用する場合は600ccのボトルで12時間くらいは使用可能でした。
使用後に銅管内の水を抜き忘れると凍結して割れるリスクがあるかも知れないと心配しましたが、今のところ問題ありません。
この循環式温水暖房装置を3年間使ってみて、今まで使ってきたキャンプ用暖房器具の中では群を抜くコスパの良さと感じています。
最後に
このキャンプ用温水暖房システムの配管とチューブの固定にはホースバンドを使っていません。
それは、もし配管内の圧力が上がっても危険な状態になる前にテントの外にある本体側で配管が抜けるようしています。
ただ、この装置は熱水や水蒸気の圧力を利用しているので思わぬ事故になる可能性も考えられます。
もし参考にされる方は仕組みを良く理解した上で何度も自分で実験し、自己責任の元でお試し願います。