【戦国時代】じつは武田信玄は細心かつ慎重だった?今の世でも通じる組織を強くするための珠玉の名言・3選
戦国時代の武田軍といえば、強力無比な騎馬軍団をはじめとして、怒涛のごとく攻めかかる姿をイメージします。それも1つの特徴には違いありませんが、その裏で驚くほど慎重かつ、堅実な足固めを重視したことを伺わせる言葉もあります。
意外な一面にも思えますが、現代の私たちが生きるうえで大切な気づきをもたらす名言もあり、この記事ではその中の3つを選んで、ご紹介したいと思います。
①「100人のうち99人に褒められるは、善き者にあらず」
それだけの大多数が賞賛しているのならば、どこに疑う余地が・・?と一見、思ってしまいそうな言葉です。しかし、とくに状況変化がいちじるしく、裏のかき合いでもある戦国時代にあっては、思わぬ落とし穴に直結しかねません。
たとえば軍略を決める会議において、大多数がうなずく意見で賛同を得た家臣がいれば、それは裏を返せば敵も含めて「誰もが考え得る」ことにも繋がります。凡将が敵ならばいざ知らず、上杉謙信や北条氏康などの智将を相手に、そのレベルで渡り合って行けるでしょうか。
また99人の称賛は意見の内容でなく、発言者に権力があった場合、その力になびいている可能性もあります。もちろん、これは無条件で「少数派バンザイ」という意味ではなく、リーダーたるもの全体の雰囲気に呑まれず、どのような意見にも注意を払う大切さを、伝えているように思えます。
また大多数の賛成に怖気づかず、意見を貫く人物は本当の忠臣という可能性があり、また誰もが思いつかない奇策かも知れません。武田家で多くの優秀な武将が頭角をあらわした背景には、主君のこのような考えがあったのかも知れません。
②「人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり」
信玄の名言でもとくに有名なひとつですが、家臣や味方勢力の結束、そして人材を重視したことが窺える言葉です。
しかし、このような方針は最初期から抱いていたものなのでしょうか。かつて大河ドラマ「風林火山」では物語の中盤、連勝を重ねて慢心し、強引だろうが恨みを買おうが、武力に任せて領地拡大に走る信玄の姿が描かれました。
その結果、猛将の村上義清を相手に決戦で敗北。身を挺して主君を守った忠臣2人が討ち死にし、嗚咽とともに後悔します。そこに「人は城・・人は石垣・・。」と口にするシーンが描かれ、この上ない説得力を感じる演出でした。
もしかすると容赦のない闘いの日々で、どこかで痛い目を見てしまい、身に刻まれたからこそ生まれた言葉なのかも知れません。
また武田信玄が人材を大切にした痕跡の1つに“温泉”があります。甲斐の国を中心とした領内にいくつもの温泉を保持し、あるいは与え、合戦で傷ついた兵士の治癒や、家臣の慰労に使っていたと伝わります。
現在でも山梨県では“信玄公かくし湯まつり”と呼ばれる行事が5月に行われ、甲冑姿の武者行列が、温泉街を練り歩きます。また有力武将の山県昌景(やまがた まさかげ )の子孫にあたる方が運営する「川浦温泉 山県館」という旅館が、今の世にも引き継がれ運営されています。
③「およそ戦というものは五分をもって上とし、七分を中とし、十分をもって下とす」
この言葉の意味としては、合戦の勝敗はまあまあ半分くらいの勝ち方であれば「もっと上手く立ち回るには?」と懸命に考えるので、上。7割りくらいの勝ちだと「まあ、今のやり方で勝てるだろう」という油断も生じるので、中。
100%の完全勝利を達成してしまうと「我らこそ最強じゃ!」とおごり高ぶり、後で手痛いしっぺ返しを喰らうので、下だと述べています。
これも一見、同じ合戦に臨むのであれば、徹底的に敵を叩きのめした方が良さそうにも思えます。しかし世界の歴史を見渡しても、勢いで急拡大した勢力が反撃を喰らい、衰退する事例は少なくありません。例えばヨーロッパに大帝国を築きながら、ロシアにまで攻め込み敗北したナポレオンなどは、その好例でしょう。
当の武田家も息子の勝頼の代には攻勢に出て、むしろ最盛期は信玄の時代よりも、領土を拡大しました。しかし結果として織田家と徳川家に押し返されて、滅亡しています。もちろん勝頼としても、跡を継いだばかりで、家臣団の求心力を得て団結を強めるためには、この方針は大切であったかも知れません。
すべてが間違いでは無かったかも知れませんが、敵勢力にまだまだ戦力が残されている時には、“勝って兜の緒を締めよ ”の精神は、最終的な命運をも左右することがあります。
令和の今にも通じる精神
ここまで紹介した武田信玄の名言は、とくに現在の企業運営や組織のリーダーの在り方にも、大きく通じるものがあります。
部下がイエスマンばかり、従業員を疎かにする上司、新規事業を広げ過ぎて傾く・・など、これらが原因で衰退や倒産をする会社もあるのです。
いにしえの英雄が至った精神は、時代を超えて通じるものがあり、ぜひ現代の私たちも多くのことを学んで行きたいものですね。