日本は本当に国際化していないのか?
日本はずっと単一民族国家であり、日本人や日本社会は、国際的な視点や観点を欠如しているといわれてきている。
筆者も、確かにそうだと考えてきた。だが、2001年に21世に入り、特にこの10年ぐらい、日本国内に外国からの方々が明らかに増えている実感がある。読者の方々も、日常的に考えていただければ、電車の中や路上で、外国語を頻繁に聴いたり、明らかに国際結婚の家族や国籍を超えて付き合っているカップルに出くわすことも非常に多く、珍しくないのではないだろうか。
以前は、近くで外国語が聞こえると、周囲の視線はすべてそこに集中したものだが、最近はあまりに日常的で普通であるために、誰も気にもしなくなってきている。この変化は、日本人のメンタリティ-の変化を物語っているのではないだろうか。
以上のような状況を受けて、本記事では、日本の国際化に関して、いくつかの数字を参照にしながら、考えていきたい。
まず、法務省の在留外国人統計によれば、2008年のリーマン・ショックや2011年東日本大震災などの関係もあるが、在留外国人は、2008年をピークに減少したが、2013年からは再び増加してきている。
また、1993年末には132万748人であった。ところが、2013年末には206万6445人となり、1993年と比較して74万人以上、約1.6倍に増加した。この数字は、日本の人口の約60人に1人が外国人であることを意味している。
このように考えると、日本は、海外移民受け入れによる人口増効果は、他国と比較しても、非常に小さいのは事実であろうが、在留外国人数は確実に増えてきていることがわかる。
では、国際結婚件数はどうであろうか。最近は相対的にやや低下傾向にあるが、全体傾向としては、グローバリゼーションの進展に伴って、増加している。日本人・外国人の国際結婚は、1960年代は、4、5千件であった。ところが1980年代に入ると急速に増えはじめた。1983年に1万件、1989年2万件、1999年3万件、2005年4万件を超えたのである。しかし、2006年の4.47万人をピークに、その後やや減少してきている。
また、婚姻数に占める国際結構の比率も、上昇してきている。1970年代は1%以下、であったが、1989年には3%を超過した。2006年には6.1%でピークとなった。その後減少してきているが、それでも2012年で3.5%である。つまり、近年結婚する件数の30組に一組は、国際結婚であるということだ。
次に、外国人雇用についてみていこう。厚生労働省の外国人雇用状況によると、1996年は約65万人(合法的就労者数約37万人、不法残留者数約28万人)であったものが、2011年の東日本大震災の影響で一時減少したが、2013年10月末の外国人労働者数は約71.8とはじめて70万人を超え、増加してきているのがわかる。
では、留学生数はどうであろうか。1983年(昭和58年)に、中曽根康弘首相(当時)が、「教育」「友好」「国際協力」を目的に、2000年までに10万人の留学生を受け入れるという「留学生10万人計画」を開始した。その10万人という数字は、当時の米国約31万人、フランス約12万人、英国および西ドイツが約6万人の留学生を受け入れていた実情を踏まえて、設定されたものである。
(独法)日本学生支援機構作成の報告書「平成25年外国人留学生在籍状況調査結果」を参考にみていこう。1983年当時の留学生総数(高等教育機関在籍者数)は10,428人であった。その後次第に増加し、1993年に5万人を超えた。その後横ばい状態がしばらく続き、2000年でも、64,011人に過ぎなかった。ところがその後急激に増えて、2003年には109,508人となり10万人越えを達成した。2011年の東日本大震災以降留学生総数は若干下がっているが、それでも、2013年で135,519人となっている。また、日本語教育機関を含めた留学生総数は、2011年163,697人、2012年161,848人、2013年168,145人と回復してきており、今後、高等教育機関在籍者数としての留学生総数も回復していくことが予想される。
また、留学後日本で就職する者は、どれだけいるのだろうか。そのような人材は、日本社会をより国際化するという意味では、大きな意味を持つと考えられるので、ここで見ておきたい。
平成25年7月に法務省入国管理局が発表した「平成24年における留学生の日本企業等への就職状況について」によれば、留学生から就職目的の在留資格変更の許可数は、2000年から2003年までは3千台であったものが、2004年には5千台を超え、その後順調に推移し、2007年には1万を超えた。その後、リーマン・ショックや東日本大震災などで減少し、1万件を切っていたが、2012年位は1万件台に回復してきているのである。
この数字は、筆者の実態感覚にも符合する。筆者は、大学院で教鞭をとっているが、院生のほとんどは外国人だが、彼らの中から日本にある企業等の見事に就職する者が確実に増えてきているという実感がある。「留学生、頑張れ!」という気持ちだ。彼らは、日本社会で生活し、確実に日本の組織や社会を変えていくと考えられる。
最後に、訪日外客数(日本を訪れる外国人のことで、訪日外国人旅行者とも呼ぶ)についてみていこう。
1976年(昭和51年)までは100万人以下であった。しかし、1977年には100万人を超え、その後、1984年(昭和59年)には200万人越えを果たし、東西冷戦後の1990年(平成2年)には300万人、1997年(平成9年)に400万人、2002年(平成14年)に500万人越えを達成した。小泉政権において、訪日旅行促進事業であるビジット・ジャパン事業が、2003年に開始された。その後は、微減やリーマン・ショックおよび東日本大震災の影響などで大きな落ち込むこともあったが、2013年(平成25年)には、10,363,904人となり、初の1000万人台を突破した。安倍政権は今年、成長戦略の一環として、2020年に2000万人を目標に掲げた。
この数字は、観光大国のフランスの約8300万人と比較するとかなり少ないが、訪日外客数は、急速に増加していることがわかる。
以上、さまざまな観点から、日本で生活したり、学んだり、観光する外国人数について、数字的にみてきた。本記事では日本人が海外に出ていく側面は敢えて除いたが、それらの数字からだけでも、日本社会に外国人が浸透してきていることがわかる。これは、冒頭で述べた筆者の実感ともマッチすることである。
これらの実態は、日本国内が確実に国際化していることや、日本人および日本社会自体が国際的視点を持つ必要性がある、あるいはその必要性が確実に高まっていることを物語っている。そして、このような実態と今後のさらなる国際化を通じて、新たなる日本人像や日本社会が確実に生まれてくるだろうと考えることができる。