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バルサが「5バック」を崩せない理由。シャビが抱える「配置」の問題と不足する修正力。

森田泰史スポーツライター
ボールをコントロールするガビ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

絶体絶命、というのは言い過ぎだろうか。だがバルセロナのシチュエーションは楽観視できるものではない。

チャンピオンズリーグ・グループステージ第3節、バルセロナは敵地サン・シーロでインテルに0−1と敗れた。

この結果、グループCはバイエルン・ミュンヘン(勝ち点9)、インテル(勝ち点6)、バルセロナ(勝ち点3)、ヴィクトリア・プルゼニ(勝ち点なし)という順位になっている。

■バルセロナの問題の本質

インテル戦では、ジャッジの面で疑義を挟みたくなるシーンもあった。だが試合を通じてバルセロナが優っていたかどうかと問われれば、その答えは「ノー」である。

バルセロナはインテルの5バックを崩せなかった。そこに問題の本質は潜んでいる。

インテル戦で先発したマルコス・アロンソ
インテル戦で先発したマルコス・アロンソ写真:Maurizio Borsari/アフロ

「サイドから攻めたかった。マルコス(・アロンソ)を一列上げて、3バックにしたかった。そして、中盤をボックスの形にして、中央での攻撃を考えていた」とはインテル戦後のシャビ監督の弁である。

■指揮官の言葉と可変システム

指揮官の言葉に倣うなら、バルセロナは【3−4−3】を敷くプランを持っていたことになる。【4−3−3】と【3−4−3】の可変システムでインテルの守備を崩そうとしたのである。

ここで考えたいのが、選手の配置の問題だ。シャビ監督は左SBにマルコス・アロンソを置いた。そして、左WGにハフィーニャ、右WGにウスマン・デンベレを据えた。なお、これはいつもとは逆の配置である。

繰り返しになるが、シャビの言葉によれば、左SBを上げて、中盤を四角形にするアイデアがあったようだ。その時、左WGがインサイドを取ることになる。その役割を担ったのが、ハフィーニャだった。

ハフィーニャは左利きのウィンガーだ。この夏、リーズ・ユナイテッドからバルセロナに移籍してきて、基本的には右W Gでプレーしてきた。ドリブルとカットインシュートを得意とするプレーヤーである。

逆にいえば、ハフィーニャはハーフスペースでの仕事が得意ではない。逆足でプレーできない、左サイドに置かれたら、尚更だ。

本来、このやり方であれば、そのタスクを与えられるのはアンス・ファティであるべきだ。右利きで、カットインシュートを持ちながら、ハーフスペースで仕事ができる。バルセロナのカンテラーノらしく、前線でのポジショニングも秀逸だ。まさに適任の人材が、ベンチにいたのである。

もうひとつ加えるのなら、左SBの人選だ。マルコス・アロンソが悪かった、というわけではない。だが、ハフィーニャとファティの話と同じように、この戦い方であればジョルディ・アルバが起用されるべきだった。

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■配置が下手なシャビ

大外のレーンを駆け上がり、ウィングの選手と連携しながら、サイドを攻略する。このタスクにおいて、アルバの右に出る者はいない。バルセロナにだけではなく、世界的に見ても少ないだろう。

アルバを「偽ウィング」にして、左サイドを任せる。

相手の5バックの右WBを引っ張り、なおかつ右CBの注意を引きつける。この時、出番がくるのが左WGのファティだ。

ファティは相手の右CBと駆け引きをしながら、足元あるいはスペースでボールを受ける。または、ファティがワイドに開いて、アルバがインナーラップを行うというのも有効である。

アンカーシステムを敷くインテルで、中盤の選手がそこまでカバーリングに行くのは難しい。ただでさえ、この試合ではマルセロ・ブロゾヴィッチではなくハカン・チャルハノールがアンカーに置かれていたのだ。

アンカーを本職としていない選手がいる。そこを突かない理由がない。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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