なぜレアルはカルバハルの離脱が痛手なのか?守備陣崩壊の可能性…問われる補強方針。
主力が抜けるのは、チームにとって痛手だ。主将であれば、尚更だろう。
レアル・マドリーはダニ・カルバハルが先のビジャレアル戦でひざを負傷した。手術は成功したが、シーズン絶望の見込みとなっている。
■昨季と今季の比較
マドリーは昨季、アントニオ・リュディガー、ダビド・アラバ、エデル・ミリトン、ナチョ・フェルナンデスと4人のCBを抱えてシーズンに臨んだ。右サイドバックにはダニ・カルバハルとルーカス・バスケス、左サイドバックにはフェルラン・メンデイとフラン・ガルシア、各ポジションに2人を揃えていた。
それから1シーズン余りで、状況は一変している。アラバの負傷、ナチョの退団、カルバハルの負傷…。気付けば、CBのバックアップ要員は、ヘスス・バジェホのみになっており、右サイドバックではルーカス・バスケスを起用するしかない、という様態だ。
マドリーは近年、ある方針を掲げて、補強を敢行してきた。それは若手選手を積極的に獲得するというものだ。
ジュード・ベリンガム(移籍金1億500万ユーロ/約161億円/2023年夏加入)、オウレリアン・チュアメニ(移籍金8000万ユーロ/約122億円/2022年夏加入)を筆頭に、とりわけ高額な移籍金を支払い獲得するのは、将来性を見込める選手たちだった。
裏を返せば、これは「パニック・バイ」を避けるということでもある。
昨季、ミリトンとアラバが長期離脱した時でさえ、マドリーはCBの補強に動かなかった。例外になったのはGKティボ・クルトワの負傷を受けてのGKケパ・アリサバラガのレンタル獲得だったが、こちらもGKアンドリュー・ルニンの台頭で、ケパを完全移籍で獲得するという流れには至らなかった。
■避けたいパニック・バイ
マドリーは今夏、フリートランスファーでキリアン・エムバペを、移籍金3500万ユーロ(約49億円)でエンドリッキを獲得している。
エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、ベリンガム。世界最高峰の選手が、マドリーの前線に揃い踏みしている。だが、マドリーがアタッカーばかり掻き集めようとしているとされたら、厳密に言えば、この説は正しくないかも知れない。
実際、マドリーはこの夏、レニー・ヨロの獲得を真剣に検討していた。リールでプレーしていた18歳のセンターバックを、確保するために動いていた。しかしながら、最終的には移籍金6200万ユーロ(約98億円)を準備したマンチェスター・ユナイテッドがヨロの争奪戦を制した。
また、冬の移籍市場というのは、どのクラブにとっても、厳しい。「パニック・バイ×冬のマーケット」であれば、その成功率が格段に下がるのは自明だろう。そこにフロレンティーノ・ペレス会長が無自覚であるはずがない。
例としては、2014−15シーズンのルーカス・シウバの獲得が挙げられる。冬の移籍市場で、移籍金1300万ユーロでL・シウバの移籍が成立した。14−15シーズン、マドリーはルカ・モドリッチのフィジカルコンディションが芳しくなく、L・シウバの獲得に動いた。だがL・シウバはリーグ戦8試合出場に留まった。
現在に照らし合わせれば、L・バスケスの代役として、ミリトン、フェデリコ・バルベルデの起用が考えられる。
アンチェロッティ監督は、これまでベリンガムをトップ下に、バルベルデをウィングにコンバートして、成功させてきた。古くは、アンヘル・ディ・マリアをインサイドハーフにコンバート。またアンドレア・ピルロをアンカーにコンバートして、ワールドクラスの選手に成長させている。
結局、マドリーは指揮官のコンバート力に頼ることになるかも知れない。「鍛冶場の馬鹿力」ではないが、追い込まれた時こそ、このクラブは真価を発揮するのである。