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ラグビーW杯会場選定日程決まる。被災地・岩手県の可能性は?

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

衆院選の総選挙も都知事選も終わった。なんだか慌ただしい年の瀬である。そんな中、ラグビーの2019年ワールドカップ(W杯)日本大会に向けた準備も着々と進んでいる。12月20日。同組織委員会の理事会が開かれ、大きな焦点となる会場選定方針やスケジュールなどが決まった。

選定方針としては「日本に豊かなフットボール文化を醸成できるスタジアムや施設を整備する」「スポーツの力で開催地の活力を増進し、地域の発展に貢献する」「ナショナルプロジェクトとしての地域バランスを考慮する」など6項目を設けた。選定スケジュールは、来年5月までに具体的な選定基準などを定めたガイドラインを作成して公表。2014年3月までに開催自治体を募り、候補地の視察を行った上、15年5月ごろ、決定することになった。

ちなみに現時点でW杯開催に関心を示している自治体は「37」ある。W杯の試合会場は、「10~12」程度を予定している。

実は、この選定スケジュールは早い。15年W杯イングランド大会の開催地が決定するのは来年3月の予定である。つまり本大会の2年半前。日本大会の場合は、4年半前となる。なぜかといえば、「開催自治体が予算処置を含めた準備活動を早期に開始できる」「15年秋開催のW杯を視察してもらえる」(御手洗冨士夫・組織委会長)からである。賢明な判断であろう。

個人的には、震災復興のシンボルとして、岩手県が試合会場を誘致しないかと期待している。はっきりいって、釜石が好きだからである。ただ現状でいえば、W杯会場になりうるスタジアムはまだ、ない。つまり新設か改修をしないといけない。いちおう、今のところW杯開催の1年前までに完成すればいいことになっているようだが、まずはW杯基準に沿ったスタジアムを間違いなく完成するという計画を作成しなければならない。

要は自治体の組織と予算措置である。理事会後の記者会見終了後、森喜朗・日本ラグビー協会会長に「被災地の復興のためにW杯の試合をという事情は選定に加味されますか? 例えば東北でやる可能性はありますか?」とストレートに聞いた。森会長はざっくばらんに答えてくれた。

「“やります”という風には言えないけれど、“やらない”とも言えないでしょうね。東北のラグビーの一番は岩手でしょう。シーウェイブス(釜石)があるし、東北のラグビーのメッカだという気持ちがあるだろうし。もし(W杯開催が)東北の被災地に対して、大きな喜びや勇気を与えられるのであれば、協会として考えて上げないといけないと思いますね。だけどまち(県・市)の予算でグラウンドをつくることを、震災の復旧や復興より先にやってもいいのか、逆に復興の大きな力にもなりうるという解釈にもなりますが。みなさんとよく相談していきたいと思います」

W杯開催は大きな事業となる。国際ラグビーボード(IRB)はいつも、W杯開催においてリスクをとることを恐れている。だから岩手が安全かつ、スタジアム完成保証のプランを作成できるのか。おそらくラグビー関係者の多くは岩手開催を歓迎するだろうが、現実はシビアである。熱意だけではどうにもならない。予算や具体策がいる。

ちょうど、理事会と同じ日、スクラム釜石事務局からプレスリリースが出された。来年1月11日、釜石で「2019RWC釜石誘致タウンミーティング~RWCを語る会」を開催するそうだ。

W杯開催まで「まだ7年もある」ととるのか、「もう7年しかない」とみるのか。個人的には7年なんてあっという間だと思う。

W杯は、日本ラグビー界にとって千載一遇のチャンスである。W杯へのプロセスを活用し、ラグビー文化を醸成できまいか。ラグビーファンを拡大する『W杯キャンペーン』は始まっているのだ。

【『スポーツ屋台村』(五輪&ラグビー担当)より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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