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JAXAが目指す火星着陸ミッション、未来の技術「エアロシェル」による大気圏突入技術を紹介

宇宙実証に成功したエアロシェル「RATS-L」©JAXA

SpaceXの創業者イーロン・マスク氏が、4度目となるスターシップの打ち上げを近日中に実施することを発表しました。このスターシップ、将来的には火星への有人飛行に使用されることが想定されています。

一方、JAXAも将来の火星着陸ミッションに向けて、革新的な大気圏突入技術である「エアロシェル」を開発中です。本記事では、エアロシェルの宇宙実証についてご紹介します。

火星着陸用「エアロシェル」JAXAが開発中のその驚異の大気圏突入技術とは?

■エアロシェルって一体どんなもの?

JAXAが開発したエアロシェル©JAXA
JAXAが開発したエアロシェル©JAXA

宇宙船が地球に再突入する場面では、非常に高温になっていることが想像しやすいかと思います。これは、実は空気との摩擦により発生している訳ではなく、超高速で機体と空気が衝突するため、空気の逃げ場がなくなり急激に圧縮されることにより熱が発生しているのです。

JAXAでは、新たな再突入方式である「エアロシェル」を開発中です。エアロシェルはカプセルのような固い構造ではなく、やわらかい構造を使用しています。エアロシェルを広げた状態で大気圏に突入することで、軽い機体が大きな面積で空気を受け止めることができ、効率良くブレーキをかけることができる、革新的な技術なのです。

実はこのエアロシェル、2017年には既に宇宙実証にも成功しています。この時の機体は、直径80センチで、高度400kmの国際宇宙ステーションから地球に向けて放出されました。この際は、3カ月をかけて徐々に降下していき、高度約100kmで計画通り燃え尽きました。

■2021年のエアロシェル宇宙実証ではロケットと激突も生還!?

JAXAが開発したエアロシェル©JAXA
JAXAが開発したエアロシェル©JAXA

そして、2021年には観測ロケットの実験データ回収装置としても活用されています。実験目的であるデトネーションエンジンのデータを地球に持ち帰る重要な役割を担いました。今回のエアロシェルは直径が1.2mであり、内部にUSBメモリを搭載しています。

そして、ここでアクシデントが発生します。なんと、切り離した観測ロケットがエアロシェルに追突したのです。しかし、ご安心ください。エアロシェルは追突後も問題なく飛行を続け、地球へと帰還しました。そして、海上にてGPS情報を発信し、無事に回収されています。今回の実験により、エアロシェルの信頼性の高さを示すことにもつながったのです。

■火星着陸ミッションを見据えた大型エアロシェル実証

宇宙実証に成功したエアロシェル「RATS-L」©JAXA
宇宙実証に成功したエアロシェル「RATS-L」©JAXA

そして、2023年12月2日には、最大となる直径2.5メートルの大型エアロシェルの宇宙実証が行われました。なぜここまで大きくしているかというと、実は火星着陸ミッションに利用することが検討されているためです。

火星の空気は地球と比べ100分の1程度の密度しかないため、空気によるブレーキが足りず、通常のカプセルでは高速で地表に衝突してしまうのです。そのためNASAでは、キュリオシティのようにエンジンを噴射することで減速を行う、大規模な機体システムによるプロジェクトが主流でした。これ程の規模ですとお金も非常にかかるため、日本で実現できるのはかなり先になるでしょう。しかし、直径2.5メートル程度のエアロシェルが実証できれば、火星でも十分にブレーキをかけることができ、小型の機体でも着陸が可能となるのです。

回収された大型エアロシェル©JAXA
回収された大型エアロシェル©JAXA

そして、宇宙実証の結果は見事成功!最高高度304kmに到達し、最高速度2.1km/sで大気圏へ突入しました。その後、エアロシェルは太平洋に着水し、無事に回収されました。

エアロシェルの開発が文字通り軌道に乗り、日本の宇宙開発が火星という新たなフロンティアへ挑戦できるようになるのが楽しみですね。

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