Yahoo!ニュース

大型で非常に強い台風14号が九州接近 ラニーニャ現象の今年は日本の近くで台風が発生

饒村曜気象予報士
広大な海域から水蒸気を集めて発達している台風14号の雲(9月16日16時)

大型で非常に強い台風

 南大東島付近にある台風14号は、大型で非常に強い勢力で北西に進んでいます。

 この「大型」ということは、風速15メートルの範囲が500キロから800キロと広いことを示しています。また、「非常に強い」ということは、最大風速が44メートルから54メートルという、災害をもたらす風が吹いていることを示しています。

 この台風14号は、勢力を維持したまま、北西進を続け、9月17日(土)昼前に沖縄県大東島地方に最も接近する見込みです。

 大東島地方では17日明け方から暴風となり、海上は猛烈なしけとなるでしょう。暴風や高波に厳重に警戒してください(図1)。

図1 台風14号の進路予報と海面水温(9月17日0時)
図1 台風14号の進路予報と海面水温(9月17日0時)

 台風の情報は、最新のものをお使いください

 その後、台風14号は、非常に強い勢力を維持したまま、17日夜から19日(月)にかけて奄美地方から九州にかなり接近する見込みです。

 暴風や高波に厳重に警戒してください。また、西日本を中心に土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください(図2)。

図2 風と雨の分布予報(9月18日9時の予報)
図2 風と雨の分布予報(9月18日9時の予報)

 また、台風14号は、広い範囲の雨雲を伴っています(タイトル画像参照)ので、台風に近い西日本や沖縄のみならず、台風から離れた東海から関東甲信でも雨が降り、雷を伴って激しく降る所もある見込みです。

 各地とも、風や雨に警戒が必要な三連休です。

暴風域に入る確率

 気象庁では、5日(120時間)以内に台風の暴風域に入る確率が0.5%以上である地域に対し、「暴風域に入る確率」を発表しています。

 このうち、暴風域に入る確率の時系列予報は、全国の約370の区域を対象として、5日(120時間)先までの3時間ごとの暴風域に入る確率と、24、48、72、96、120時間先までの暴風域に入る確率の積算値を示したものと2種類があります(図3)。

図3 各地で暴風域に入る確率(9月16日21時発表)
図3 各地で暴風域に入る確率(9月16日21時発表)

 これによると、鹿児島県奄美地方で暴風域に入る確率が一番高いのは9月17日の夜遅くで、この頃が台風最接近と思われます。

 また、鹿児島市では9月18日(日)の昼前から100パーセントが続きますので、真ん中をとって、最接近は昼過ぎと考えられます。

 さらに、長崎であれば9月18日の夜のはじめ頃、高知市であれば、9月19日昼前に最接近となる見込みです。

令和4年(2022年)はラニーニャ現象

 太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられています。このため、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上り、海面水温が低くなっています。

 この東風が平常時より弱まると、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まり、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなり、これがエルニーニョ現象です。

 逆に、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなり、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなり、これがラニーニャ現象です(図4)。

図4 エルニーニョ現象とラニーニャ現象の説明図
図4 エルニーニョ現象とラニーニャ現象の説明図

 エルニーニョ現象もラニーニャ現象も、海面水温の分布が変わることで積乱雲が盛んに発生する場所が変わり、異常気象となるわけですが、現在はというと、昨年秋からラニーニャ現象が続いています。

 フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくるモンスーンと呼ばれる南西風と、太平洋高気圧の南縁をまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。

 ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、ラニーニャ現象が起きると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。

 このため、令和4年(2022年)の台風の発生場所は、例年より北西にずれています(図5)。

図5 令和4年(2022年)の台風の発生地点(丸数字は台風番号)
図5 令和4年(2022年)の台風の発生地点(丸数字は台風番号)

 つまり、例年より日本に近い海域での発生ですから、日本に影響する可能性は高くなります。事実、令和4年(2022年)の台風発生数は、平年より少ないのですが、接近数や上陸数となると平年並みに推移しています。

 なお、エルニーニョ現象が起きるとモンスーントラフの位置が平年より南東にずれ、台風が多く発生する海域も南東にずれます。

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事