旧統一教会問題 皆さんのすぐそばで、今も声を上げられずにいる被害者は、いるかもしれません
9月13日の記者会見で岸田首相は、旧統一教会の問題に対して「しっかりとした結論を出すべく最終の努力を進めていく」と述べました。改めて、解散命令請求の時期が近付いていることを感じさせられる言葉でした。
内閣改造の前日(12日)に行われた、立憲民主党を中心とする第52回「統一教会」国対ヒアリングでは、長年、旧統一教会の問題に取り込んできた被害者家族から話がありました。
41年前から今に至るまで、旧統一教会問題にかかわり続ける その思い
被害者家族であるAさん(60代男性)が旧統一教会とかかわったのは41年前(1980年代)だといいます。
「突然、妹がOLをやめて、青年サークルに入ると言い出したのです。青年サークルが何かというと、給料はなく、月に1万円くらいのお小遣いしかない。それに取りつかれたような表情を妹はしていました。当時、そこが統一教会ということはわかりませんでしたが、何か妹に異変が起きていることは直感しました」と話します。
その後、妹さんは家を飛び出して行方不明になってしまいますが、彼女が1992年の合同結婚式を受けたのをきっかけに、家族で話し合うことができました。3か月ほどかかりましたが、妹さんは脱会を決意したといいます。
「妹は約10年間、統一教会に入信してきて、霊感商法を行い、正体(教団名)を隠した勧誘活動をしてきましたが、誰一人として幸せにすることはできませんでした」(Aさん)
こうした事実に本人が気付くことは、脱会するうえでとても大事なことです。
信者を持つ家族として10年間も苦しみ続ける
Aさんは、10年もの長い間、信者を持つ家族として長く悩み苦しんできました。
「その時に助けてくれた方々は宝です。そこで今度は自分がその立場で、困っている人たちがきたら、自らの経験をいかして、何かしらのアドバイスができればよいと思い、相談を始めました」
そしてAさんは、31年たった今も信者を持つ家族らの相談にのっておられます。
しかしその道は決して楽なものではありませんでした。教団は自分たちに反対する者をサタン(悪魔)とみた攻撃を組織で仕掛けてくるからです。
Aさんは、教団関係者に尾行されるばかりか「信者が職場に乗り込んできて『上司に会わせろ。統一教会に反対をしていて迷惑をしている。上司からやめさせるように言ってくれ』という嫌がらせを受けたこともあった」と話します。
Aさんの話のなかで印象的だったのが、家族としての苦しい胸のうちでした。
「自分の家族が、霊感商法の販売員になることがとても辛いことでした。私の妹が街頭アンケートで勧誘する立場になり、最初は被害者であっても、やがては加害者になっていくことが、とても苦しいことでした」(Aさん)
信者として被害を生み出していく側に回っていると思う、信者を持つ家族らの持つ辛さは言葉にならないものがあります。
筆者も非常に似たような経緯をたどる
筆者も教団の指示のもとで、旧統一教会に反対する家族との連絡を絶ち、Aさんの妹さんと同じように家族のもとから行方をくらましました。そしてホーム(統一教会の施設)に住み込み、献身(出家)をしました。そして92年の合同結婚式をうけましたので、当時の姿とその経過が重なります。
筆者が脱会しようと思った理由は様々にありますが、その一つが、先ほどAさんが家族として吐露した辛い思いを、自分の家族が持っていたことを知ったことでした。
約10年間、信者として過ごしてきましたが、自分の家族はサタンと思わされて、まったく心を通わせた話をすることはありませんでした。しかし家族らと心から話す場を持つことで「私(筆者)が加害者となって、誰かの被害を生み出し続ける」ことへの苦しさを、家族が約10年間抱えて生きてきたことを知りました。その思いに真摯に向き合い続けるなかで、それまで心を覆っていた教団の教えが少しずつはがれていく思いがしました。
そして「家族の心を地獄に突き落とすような教義では、本当の天国が地上にできるはずもない」そう思うに至りました。
一般の人からみれば、当たり前のことに思われるかもしれませんが、それに気づくまでが信者をしてきた者にとって、本当に辛く長い道のりになります。
今も行われる被害者を生み出す行為に、信者を持つ家族の苦悩は続く
大変に残念なことですが、教団の信者やその賛同者らは、被害を口にする個人に様々な誹謗中傷を繰り返して、教団への批判的な声を封じようとしてきます。組織、集団で行う言動により、個人の心は傷つけられていきます。
前回のヒアリングでも、宗教2世から、最近の韓鶴子総裁の言葉が紹介されました。
「日本の人口の半分を伝道しなさい。そうすれば、日本の問題はすべて解決する」(世界家庭2023年7月号)
この言葉を忠実に信者らが実行すれば、他の誰かを伝道して「430代の先祖解怨・祝福」にお金を出させることになり、新たな被害者が生み出されてしまうことになります。それだけではありません。
今も多額の献金により金銭的に困窮している信者らに「430代の先祖解怨・祝福」を行うように話していますので、末端の信者らはさらに困窮を余儀なくされます。何より辛いのは、そうした状況に追い込まれている信者を見つめ続けなければならない家族たちです。
心が教義に支配されているなかでは、サタンとみている私たちの言葉など、心に入る隙間はありません。
それゆえ家族らはじっと、信者らの行動を見ていなければならないのです。ただ、誰かを誘い、高額献金をさせるような被害者を生み出す行為をしないように願うしかないのです。その苦悩はどれほど、辛いことでしょうか。
「一日でも早い解散命令請求を願う2人」
被害者家族のお一人である橋田達夫さんも話をされました。
橋田さんの元妻は信者で1億円以上の献金をしています。そしてそのもとで育った長男が自殺されるという辛い経験をしています。その橋田さんのもとには「お前殺す」などという電話が度々かかってきています。
教団は8日に会見を行い、文化庁から過料を科される通知が裁判所に出されたことに対して「全面的に争う」姿勢をみせています。そのなかで「これまで被害を訴えてきた元信者の話にはウソがある」という発言も教団から出てきました。
橋田さんはそれを受けて「(教団の会見で)元信者の話にうそがあるといいましたけれども、実際に教団の幹部に高知にきてもらったら、一件、一件被害状況を目の前でみせてあげます。テーブルの上でいうことではない。いままで(たくさんの)被害者にあってきました。その姿をみせてあげます。そのくらいの気持ちでいます。本当に腹が立ちます」と強い口調で話します。
今も、多くの信者を持つ家族が苦しんでいる
Aさんは、今日も信者を持つ家族から相談を受けたと話します。
「『信者である親はいつまで、お金を取られ続けるのだろうか』と、心配されていました。両親を説得して返金をさせたいのだけれども、でも返金したら、後から呪われるとか、不幸なことが起きると。それを(信者は)怖がります。だから返金した方がいいのか、それとも、このままの方がよいのか。1時間、話を聞きました」
そしてAさんは最後に「同級生、近所の方、本当に、身近なところに被害者が大勢います。でも声を出せない人も大勢いるんです。今も、被害は続いています。多くの家庭が崩壊しています。それは41年前と変わっていません」と話します。
橋田さんも「一日でも早く解散命令請求を出して頂いて、被害者を救いたい」と訴えて、お二人とも解散命令請求が出されることへの思いを強く持っています。
今も声を上げられずにいる被害者が私たちの身近にいることは間違いありません。解散命令請求が文化庁から出されることで、これまで押し黙ってこなければならなかった人たちが声を上げて、一人でも多くの人が心の苦しみを相談する勇気へのきっかけになればと思います。
国対ヒアリングの後半では、同月8日に旧統一教会が文化庁による過料を科す行政罰に対しての会見を行ったことへの文化庁及び、全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士の見解もありましたが、改めてお伝えいたします。