あのフィギュアスケート選手も国籍を放棄していた! 冬季五輪・韓国帰化アスリートたちの「現在」
明らかなスケールダウン。それがリストを見たときの最初の印象だった。
「4年に一度のウインタースポーツの祭典」と言える北京冬季五輪の開幕まで残り10日となった1月24日、大韓体育会は大会に挑む韓国選手団リストを公開した。
韓国が北京に送り込むのは6競技63名の選手たち。地元開催となった4年前の平昌(ピョンチャン)五輪時の選手団数は144名だったことを考えると半減だが、もっとも少なかったのは帰化選手の数。わずか3名しかいなかったのだ。
アイスダンス「衣装はだけ」ペアも
4年前の平昌五輪では韓国代表選手団144人のうち、18名が帰化選手たちだった。
その多くが「体育分野 優秀人材 特別帰化」プロジェクトのもとで特例的に韓国籍が付与された、特別帰化選手たちでもあった。
同プロジェクトは平昌五輪で結果を出すべく、韓国の行政機関である文化体育観光部(日本の文部科学省に相当)と各種競技団体の主導で2011年頃から進められたプロジェクトで、韓国にルーツを持つ二重国籍の在外コリアンもいたが、そのほとんどが韓国とは血縁もゆかりもなかった外国人選手たちだった。
そのせいだろうか。平昌五輪が終わると、韓国を去ってしまう選手がチラホラ出ていたことは知っていた。
例えば女子バイアスロン個人で16位だったエカテリーナ・アバクモバは、平昌五輪から5か月後には韓国籍を放棄してロシアに戻っている。
アイスダンスのミン・ユラとアレクサンダー・ガメリンのペアは、ガメリンが韓国籍を放棄。ペアも解消している。
ふたりのことを覚えている人もいるだろう。平昌五輪から採用されたフィギュア団体戦のショートダンス(SD)の演技中に、ミン・ユラの衣装の背中のホックが外れるハプニングが発生。日本では「衣装はだけ」の見出しで紹介されてちょっとした話題になった。
(参考記事:「衣装ずり落ち」に「独島」騒動…トラブル絶えぬ韓国アイスダンス代表ミン・ユラ&ガメリンとは?)
しかし、平昌五輪から5カ月後にガメリンが金銭問題や練習見解の違いなどを理由にミン・ユラとのペア解消を宣言。ガメリンはミン・ユラとのペアで五輪出場するために2017年7月に特別帰化で韓国籍を取得していたが、それも放棄した。
もともとアメリカと韓国の二重国籍を持っていて平昌では韓国籍を取得したミン・ユラは、新たなパートナーと北京を目指していたが、それもかなわなかった。
そんなこともあって今回の北京五輪の選手団構成が気になっていたが、帰化選手が18人からわずか3人になってしまうとは寂しいかぎりだ。
韓国籍を放棄した帰化アスリートたち
帰化選手数が少なくなった理由はいくつかある。帰化選手が多かった男女アイスホッケーが、ともに北京五輪への出場権を逃したことも大きいだろう。
ただ、気になって調べてみたが男子7名中、韓国に残った選手は少なく、女子4名に限ってはすべて韓国を離れている。
平昌五輪時、女子は北朝鮮代表と急遽、南北合同チームが結成され注目を集めたが、その主軸だったカナダ出身のキャロライン・パクやイム・デネール、アメリカ出身のヒス・グリーフィンなどは学業を理由に韓国籍を放棄してしまったらしい。
また、平昌に出場した男子クロスカントリースキーのキム・マグナスも韓国籍を放棄したひとり。
ノルウェー人の父と韓国人の母のもとで生まれた二重国籍者の彼は2018年夏、「これ以上、韓国代表として発展できる可能性がない」として韓国籍を放棄。「スキー先進国のノルウェーで学びノルウェー代表になりたい」とマグナス・ボーとして、かの地で選手生活を続けている。
成績のために国が主導した帰化プロジェクトとはいえ、大会が終わるとそそくさと韓国を離れてしまったのは残念だが、受け入れる側にも問題はあったのだろう。
「成績のために帰化させておいて、各自が韓国に適用せよと放任していては韓国での生活に定着するはずもない。帰化選手たちが韓国生活に慣れ、韓国への愛国心と所属感を持てるような支援やシステム作りも必要だ」と指摘する専門家も多い。
韓国に残った帰化アスリートたち
ちなみに平昌に続き北京五輪でも韓国代表を務めるのは、男子バイアスロンのティモフェイ・ラプシン、女子バイアスロンのアンナ・プロリーナ、そしてリュージュ女子シングルのエイリン・プリシェ。
ドイツ出身のエイリン・プリシェは平昌五輪の翌年、横転事故で大けがを負ったが2年近く韓国で治療のリハビリに専念して復活した。
「帰化が正式に決まる(2016年)前から、平昌が終わっても韓国にずっといると決めていた。韓国は(私に)機会を与えたし、特別な意味がある。人生の一部になった」というエイリン・プリシェ。
韓国ではスポーツ界での帰化政策を“国籍変更ドーピング”と呼んでみたり、メディアは「青い目の太極戦士たち」と持ち上げてみたりとさまざまな見方があるが、今回の北京五輪ではどうか。