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スペイン代表の進化を探る。デ・ラ・フエンテ政権の変化とネーションズリーグ制覇の意味。

森田泰史スポーツライター
競り合うコバチッチとカルバハル(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

試合を決めたのは、ダニ・カルバハルだった。

UEFAネーションズリーグ決勝で、スペインはクロアチアと激突した。一進一退の攻防は決着がつかず、PK戦までもつれ込み、最後のキッカーのカルバハルがパネンカを沈めてスペインが勝利を収めた。

UNLで優勝したスペイン
UNLで優勝したスペイン写真:ロイター/アフロ

「自分の中で、疑いはなかった。確信があった。あそこで外すなんて、あり得ないよ」

試合後、カルバハルが語っている。

■11年ぶりの戴冠

それはスペインにとって、およそ11年ぶりのタイトルであった。

スペインが最後に栄冠を手にしたのは2012年だ。EURO2012で優勝を飾り、EURO2008、2010年の南アフリカ・ワールドカップに続いて、主要大会3連覇を成し遂げた。

だが、以降、スペインは暗黒の時代に突入することになる。「良いサッカーをするが勝てない」というスペイン特有のジレンマに陥り、EURO2021(ベスト4)を除いて近年の主要大会ではベスト8の壁を破れなかった。

UEFAネーションズリーグは準公式戦といえるトーナメントかも知れない。しかしながら、そこで優勝した、タイトルを奪取した意味は小さくない。

スペイン代表のデ・ラ・フエンテ監督
スペイン代表のデ・ラ・フエンテ監督写真:ムツ・カワモリ/アフロ

カタールW杯でのベスト16という結果が、変化を起こす必要性へと繋がった。

スペイン・フットボール連盟は指揮官の交代を決断。ルイス・エンリケ監督に別れを告げ、世代別代表を率いていたルイス・デ・ラ・フエンテ監督が“昇格”する形で就任した。

■必要だった変化と梃入れ

デ・ラ・フエンテ監督は、チームに梃入れを行った。

スペインは【4−3−3】を基本システムにしていた。だが監督交代で、【4−2−3−1】が採用されるようになる。

これは、ただの【4−2−3−1】ではない。可変式システムだ。

攻撃時、ビルドアップの際には、ダブルボランチの一角であるファビアン・ルイスが前に出る。

アンカーのポジションにロドリ・エルナンデスが入り、【4−3−3】を生かす格好でスムーズな球出しが可能になる。

スペインのようなフットボールを展開するチームで、ビルドアップの時に重要なのは「フリーマン」を作れるかどうかだ。

スペインはロドリをフリーマンにするべく、動いていた。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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