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ブルージェイズのアンソニー・バース(元日本ハム)を支える日本での経験と大谷から学んだスプリッター

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2016年に日本ハムでプレーし、日本一に貢献した右腕アンソニー・バース。今季はブルージェイズの救援陣として活躍している。

 ブルージェイズの抑えはケン・ジャイルズだが開幕早々に右ひじの張りを訴えて、IL入り。モントーヨ監督はジャイルズに代わるクローザーとしてバースを指名した。その期待に応え、7月27日のナショナルズ戦では今季初セーブを記録。開幕してから4試合に登板し、4回1/3を投げ、許したヒットは1本だけで、無失点に抑えている。

 7月28日にオンライン会見に応じたバースは、ブルージェイズの担当記者から質問を受け、投手としてのターニングポイントとなったのは、2016年に日本でプレーしたことだと説明した。

 「僕が変わったのは、2016年に日本に行ったことからだ。日本で自信を取り戻し、どうすればうまくいくのか、どのようなことはうまくいかないのかを学ぶことができた。インサイドへのピッチングや、速球のコントロールが勉強できた。そのことによって僕はもう一度高いレベルでパフォーマンスできるピッチャーに戻ることができた」

 スプリッターをモノにできたのが大きいと言う。

 「スプリッターだね、僕にとってはチェンジアップのようなものともいえる。特に左打者を抑えるのに有効だと思う。僕はインサイドに投げるのを好んでいて、スライダーをインサイドに投げる。そのときに外へ落ちていくフォークがあることで、もう一つの武器として使えるようになった」

 スプリッターは日本に行く前の年から挑戦していたが、2016年に日本ハムでチームメートだった大谷翔平から学んだことが大きい。

 「2015年から投げ初めた。日本に行ってからもっとよい感覚で投げられるようになった。僕のチームメートだったショーヘイ・オータニから学んだよ。彼はすばらしいスプリッターを持っている。僕は彼がどういうふうにスプリッターを使っているか、どういうカウントで使っているかをよく見ることができた」

 リードして迎える9回でも平常心を保つコツも知っている。日本シリーズでの活躍が自信になった。

 「僕の仕事はスコアボードにゼロを刻むことだ。それは9回でも、6回でも、7回でも、8回でも同じ。いつもゼロに抑えられるわけではないことも知っているけど、できるだけダメージを少なくする。日本のチャンピオンシップの経験は僕にとってすばらしいもの。自分を落ち着かせ、集中し、勝負どころでしっかりと決める。今の自分の成功があるのは、日本の経験によるものだ」

 最近は、大谷と直接、話をする機会はないが、メジャーでの大谷の活躍は注視しているそうだ。

 「彼の様子はいつでも追いかけているよ」

 バースは大谷が右腕の違和感でMRI検査を受けたことも恐らく知っていて、心配していることだろう。

 ブルージェイズはキャンプ再開から、今日にいたるまで、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている。7月1日にフロリダ州ダンイーデンに集合し、カナダ政府の許可を受けてトロント入りしてキャンプを再開。しかし、米国との往来から感染拡大を懸念したカナダ政府は、トロントでの公式戦開幕は認めなかった。代替本拠地球場を探すことになったが、マイナー傘下3A のバファローに落ち着くまで紆余曲折があった。

 先週末はフィリーズと対戦する予定だったが、フィリーズは多数の感染者が出たマーリンズと対戦していたため、新型コロナウイルス感染の有無がはっきりするまで試合は延期。敵地のナショナルズの球場を借りて、練習する羽目になった。

 バースは自身の子どもが、新型コロナウイルスに感染した場合には重症化するリスクがあるため、シーズン中は家族には会わずに戦い続ける予定だ。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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