Yahoo!ニュース

主な新興国/米国経済ニュース(15日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米グーグル、ロシアのエンジニアリング事業部門を閉鎖か

米インターネット検索大手グーグル<GOOGL>は、ロシアのエンジニア事業部門を閉鎖するもようだ。これはロシア国内ユーザーの個人データをロシアに設置したサーバーだけに保存するよう指示する法案を来年に導入する計画があるためで、ロシア政府がグーグルなど外国のインターネット会社への規制を強めるのが狙いと見られている。英紙ガーディアン(電子版)が先週末に伝えた。

しかし、この法案に対しては、米国のインターネット企業のロシア国内での事業活動を制限するだけでなく、ロシアの秘密警察が外国のインターネット企業が保有するデータへのアクセスを可能にする狙いがあると批判されている。

グーグルはロシア国内で幅広く利用されているが、ロシアではインターネットサービス最大手ヤンデックスが市場シェア60%を占めている。

-----

ロシア中銀、政策金利を10.5%に上げ―インフレ阻止で利上げ継続も示唆

ロシア中央銀行は先週の11日の理事会で、インフレの加速を阻止するため、昨年9月に導入した新主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利をいずれも9.5%から10.5%へ1%ポイント引き上げることを決めた。引き上げは12日から実施された。

中銀は前回11月会合では、ウクライナ危機に絡んだ欧米とロシアの経済制裁合戦によって引き起こされたルーブル安とインフレの加速を阻止するため、1週間物入札レポ金利と1週間物入札預金金利をいずれも8%から9.5%へ1.5%ポイント引き上げており、利上げは2会合連続となる。

中銀はまた、資金供給のための各種貸出金利についても、オーバーナイト固定金利と非流通性資産を担保とする1日物固定金利も10.5%から11.5%へ、また、資金吸収のための各種預金金利についても、1週間物預金の最高入札金利(金融機関が入札可能な上限金利)は9.5%から10.5%へ、翌日物固定金利は8.5%から9.5%へと、いずれも1%ポイント引き上げた。これまで主要政策金利となっていたリファイナンス金利は現行の8.25%のまま据え置かれている。

ロシア中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、再利上げに踏み切った理由について、「11月から12月時初めにかけて、CPI(消費者物価指数)の伸びが加速しており、12月8日時点でのインフレ率は9.4%上昇となったこと、また、インフレ期待の上昇とルーブル安の進行期待がインフレ加速リスクとなっている」と指摘。その上で、中銀は、「インフレ加速リスクが一段と強まる場合には、利上げを継続する」とし、追加利上げに含みを残した。

中銀は次回の金融政策会合を来年1月30日に開く予定。

-----

8-12日のロシアRTS指数、3週続落で約5年ぶり安値―原油・ルーブル安で

前週(8-12日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)12日終値が前週比12.1%安の799.18と、3週連続の大幅安となり、割値で800を割り込み2009年3月1日の689.63以来4年9カ月ぶりの安値となった。

引き続き10月27日のOPEC(石油輸出国機構)会合での原油生産量の削減見送り決定を受けて、12月の第2週になってもロシア経済を支える原油価格が一段安となり、それに伴って、ルーブルも対ドル・ユーロで急落し続けたため、RTS指数は3週連続で大幅下落となっている。

週明けの8日は、米下院議会がロシアを非難する決議案を採択したことを受けて、ロシア下院のレクセイ・プシコフ国際問題委員長が米露の冷戦が正式に始まったと述べ、西側との関係悪化が長期化するとの認識を示したことや、ルーブルの流動性不足で、ルーブルが対ドルで、1ドル=53.63ルーブルまで下落したのを嫌気して、RTS指数は4.2%安と、3月初め以来の大幅下落となった。

翌9日もRTS指数はルーブル安を受けて860まで下落、10日もイラン石油省のアナリストがOPEC(石油輸出国機構)加盟国が原油値下げ競争に入れば、原油価格は1バレル40ドルまで下落する可能性があるとの発言もあり、ルーブルの下落を誘って、RTS指数は855まで続落。11日もロシア中銀が2014年のインフレ率が10%上昇に接近し、2015年1-3月期には10%上昇を超えるとの見通しを示して、主要政策金利を1%引き上げたのを受けて、3.63%安と、続落。週末の12日もルーブル安が続く中、RTS指数は3.01%安と、下落が止まらず、終値ベースでついに800割れとなった。

今週(15-19日)のロシア市場は引き続き、原油とルーブルの相場の下落や17日のFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策決定会合を控えて軟調が続くものと見られ、アナリストは、RTS指数は750-780ポイントにまで急落する可能性があるとしている。

-----

前週のインド株は2週続落―原油安で石油銘柄下落=BRICs市況

前週(8-12日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の12日終値は、前日比0.9%安の2万7350.68となった。週間ベースでも5営業日のうち4営業日が下落となったため、5日終値比1107ポイント(3.9%)安と、2週続落し、2011年以来3年ぶりの大幅下落となった。これは、原油先物価格が1バレル=63ドル割れと急落したことで石油銘柄が大幅下落となり、海外市場の軟調も響いて、利益確定売りが優勢となったため。

週明けの8日は、SENSEXの構成比が高いITサービス大手インフォシスが7週間ぶり大幅安となったことや、外国資本の流入鈍化、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ加速の憶測で、SENSEXは1.19%安となった。翌9日も海外市場の軟調でSENSEXは続落。ただ、10日は、国営インドステイト銀行(SBI)と石油ガス公社(ONGC)が買われ、SENSEXは 4営業日ぶりに0.12%高と小反発した。しかし、11日は原油先物価格が5年ぶり安値を付けたことで、リライアンス・インダストリーズ(RIL)やONGCなど石油銘柄が下落し、SENSEXは0.82%安と、反落。

週末の12日も、インドガス公社(GAIL)が7営業日続落となったほか、ONGCも5月以来安値を付けRILも8カ月ぶり安値となり、SENSEXは2日続落した。

今週(15-19日)のインド市場は引き続き原油価格や外国からの資本流入に左右されそうだ。スイス金融大手クレディ・スイスは、今年のインドの株や債券への外国からの資本流入額は430億ドル(約5.1兆円)だったが、来年はリスク投資が控えられ180億-200億ドル(約2.1兆-2.4兆円)に減少する可能性があるとしている。市場に影響を与えそうな主な統計発表は、15日の11月貿易統計など。

-----

前週のブラジル株は2週続落―原油安で石油株売られ=BRICs市況

前週(8-12日)のブラジル株式市場は、12日のボベスパ指数が前日比3.73%安の4万8001.98と、3月24日の4万7993以来9カ月ぶりの安値となり、週間ベースでも5日終値から7.67%安と、2週連続で急落した。月初来では12.28%安、年初来でも6.8%安と落ち込んだままだ。これは原油価格の下落に歯止めがかからず、石油セクターが急落したほか、中国の貿易データの悪化もブラジルの輸出セクターに響いた。

週明けの8日は、中国の11月の輸入が前年比6.7%減となったことから、鉄鋼大手コンパニア・シデルルジカ・ナシオナル(CSN)が5.2%安となるなど国際商品関連銘柄が売られたほか、中銀の経済週報「フォーカス・ブルティン」で、2014年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しが下方修正されたことから、ボベスパ指数は3.3%安となった。

翌9-10日は米国標準油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が5年ぶり安値となったことで国営石油大手ペトロブラスが続落し、時価総額で中南米2位のブラデスコ銀行も2.9%下落して、ボベスパ指数は8カ月ぶり安値となった。11日は自国通貨レアルが約9年ぶり安値に下落したことで、ブラジルの牛肉加工世界大手JBSを中心に輸出関連株が買われ、ボベスパ指数は0.6%高と、反発した。しかし、週末の12日は、原油安が響いて、ペトロブラスが5.82%安の10.19レアルと、2005年8月5日以来9年4カ月ぶりの安値となった。IEA(国際エネルギー機関)が石油需要予想を下方修正したことで、原油相場はこの日だけで1バレル=57ドル台に値下がりしている。

今週(15-19日)の株式市場は、引き続き原油相場に左右される展開となりそうだ。市場に影響を与えそうな主な経済指標や行事は、11月失業率(19日)や11月経常収支(19日)、11月の外国からの対内直接投資額(FDI、19日)など。

-----

住友商事、インドネシア・プルタミナから地熱発電所5・6号機建設受注

住友商事は先週末、インドネシア国営石油大手プルタミナの地熱発電子会社、プルタミナ地熱エネルギー(PGE)から北スラウェシ州ミナハサ地区にあるラヘンドン地熱発電所の5号機と6号機(発電出力各2万キロワット)の土木建設工事に関し一括請負契約を受注したことを明らかにした。

同工事は住友商事とエンジニアリング大手レカヤサ・インダストリのコンソーシアムで行うもので、過去に同発電所の2-4号機(発電出力各2万キロワット)の建設を受注している。地熱蒸気タービンと発電機は富士電機が製造し、発電所と集蒸気配管の土木据え付け工事はレカヤサ社が担当する。工期は5号機が22カ月、6号機が28カ月で、それぞれ2016年9月と2017年3月に完工する予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

増谷栄一の最近の記事