【韓国映画】約20年ぶり!劇場で見た名作『シュリ』|絶えない緊張感に改めて圧倒された!
みなさんは「韓国映画といえば、これ!」という作品はありますか。
『JSA』、『八月のクリスマス』、『オールド・ボーイ』、『殺人の追憶』、『私の頭の中の消しゴム』、『新感染 ファイナル・エクスプレス』『パラサイト 半地下の家族』など、挙げたらキリがなさそうですが、一方で見たことがないという方もいるでしょう。
それでも「シュリ」と聞いたらどうでしょうか。見たことはなくても、単語だけは知っているという方は多いのではないでしょうか。韓国ドラマに興味のない方が、「冬のソナタ」というフレーズは知っているように。
その『シュリ』が2024年9月13日、『シュリ デジタルリマスター』となって日本公開されました。『シュリ』は長らく、上映権の関係で上映・配信などがなされず“幻の傑作”となっていました。再上映の熱い声に応えるかたちで、25周年のアニバーサリーイヤーに劇場公開が実現したのです。
私(筆者)も見てきたので、今回はその感想(記事の後半に書いています)や『シュリ』についてお伝えします。
■『シュリ』とは
『シュリ』は1999年2月13日に公開された韓国映画です。日本公開は、2000年1月22日。
要人暗殺事件を捜査する韓国情報部員が、犯人とみなされる北朝鮮の女性工作員を追跡するようすを描くスパイアクション&ラブストーリーです。
~あらすじ~
要人暗殺事件を捜査中の韓国情報部員、ユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)とイ・ジャンギル(ソン・ガンホ)。犯人と目される北朝鮮の女性工作員を追跡するふたりは、強力な破壊力を持つ液体爆弾を用いてのテロの脅威を知る。ターゲットは南北両首脳―。(日本公式サイトより)
~監督・出演者~
監督は、後に『ブラザーフッド』や『マイウェイ 12,000キロの真実』を手がけたカン・ジェギュ氏。主演をハン・ソッキュさんが務め、出演者にもキム・ユンジンさん、チェ・ミンシクさん、ソン・ガンホさんといった面々が名を連ねています。
さらには、無名時代のファン・ジョンミンさん(どのシーンに出演されていたのか発見できました!)やイ・ピルモさんが脇役で出演。また、コン・ヒョンジンさんやイ・ボムスさんなどもオーディションに参加していたといいます。まさに、現代の韓国映画に欠かせないトップスターたちが大集合しているのです。
~シュリの意味~
朝鮮半島に生息する淡水魚のこと。シュリは、南北の国境地帯の河川にも生息し、自由に行き来しています。劇中では、北朝鮮スパイのコードネームとして使用されています。日本語では「ヤガタムギツク」。実際は「シュィリ」に近い発音になります。
■『シュリ』のここがすごい!
『シュリ』の観客動員数はソウルで245万人、全国で695万人を記録しました。
それまでの韓国映画最大のヒット作は『風の丘を越えて/西便制』(1993/ソピョンジェ/イム・グォンテク監督)の103万人(ソウルでの動員数)で、海外作品を含めると『タイタニック』(1998年韓国公開)の226万人(全国635万人)でした。
~韓国映画は『シュリ』の前後に分けられる~
制作費に30億ウォン(約3億円)が投じられ、韓国映画におけるブロックバスター=超大作の先駆けともいわれます。韓国映画の歴史を評価する際、『シュリ』が作られる以前と以後に分けられるといわれるほど、韓国映画界に多大な影響を及ぼした作品です。
~日本でも大ヒット~
『シュリ』は日本をはじめとする海外にも輸出され、人気を博しました。まだ「韓流」という言葉がない時代に、日本での観客動員数100万人、興行収入18億円を突破する大ヒットを記録。「韓国映画はハリウッドを越えているのか――」とも評されました。
■筆者が約20年ぶりに見た感想
終始、「なに、この緊張感!」とドキドキし、映画館を出たら癒しがほしいと思いながら見ていました。
約20年前、私が初めて見た韓国映画が『シュリ』でした。当時は、話題になった映画で、韓国語の勉強になるかもしれないと、なんとなく見た記憶があります。日本人である私にとって、身近なこととして考えられなかったですし、韓国作品に慣れていなかったというのもあって、ピンとこなかったのだと思います。
話がいったん逸れますが、以前、ある南北(脱北)に関する映画(作品名は伏せます)の監督にインタビューをしたことがありました。意外と身近に離散家族もいるし、脱北者もいる。描いて訴えたいこともある。しかし、これは映画なのだから、「とにかく純粋に楽しんで見てほしい」と何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
今回、『シュリ』を見ようと決めたとき、「純粋に楽しもう」と思ったのに、果たして、エンターテインメントとして楽しめたのかどうか……。
もちろん、私は当事者ではありませんし、フィクションなのでありえないシチュエーションであることは分かっているのですが、南北問題について多少なりとも知識が身についた(であろう)私は、俳優のリアルすぎる演技に考えさせられる感情が芽生え、迫力満点のアクションにも圧倒されっぱなし、でした。公開から20年以上経っていても、色あせていない。日常や恋愛のシーンからアクションシーンに移り変わる際のテンポの速さと、その対比が絶妙。主題歌(エンディングテーマ)の「When I Dream」(キャロル・キッド)も心に残ります。
映画の内容以外では、(上記にもあるように)超有名俳優が勢ぞろいしていたり、いまも活躍されている方が字幕翻訳されていたり、昔は目を向けなかったところに新たな発見もありました。
ドラマ「冬のソナタ」が韓流ブームの発端であったとしたら、『シュリ』は韓国映画の、いや、韓国エンターテインメントの元祖といえる傑作です。
ちなみに、『シュリ』以降、(戦争や恋愛含め)南北を描いた作品は、『JSA』、『ブラザーフッド』、『シルミド』、『トンマッコルにようこそ』など、数多く存在します。そして、ドラマ『愛の不時着』へとつながっています。個人的には『プンサンケ』(2011年公開)という映画もおすすめです。
余韻に浸りすぎて、電車を乗り過ごしたのは、ここだけの話です――。