いよいよ本日、6月28日、世界最速で日本公開される(中国と香港も同日公開)「スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム」。本作がマーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ3を締め括る節目の作品であることはご承知の通りだ。何しろ、作品の質も興行成績も桁外れだった「アベンジャーズ/エンドゲーム」(19)の余韻が未だ冷めやらないタイミングでの公開だから、ファンも気持ちをリセットするのに苦慮していることと思う。だが、心配はご無用。トム・ホランドのピーター・パーカー/スパイダーマンが前作「スパイダーマン: ホームカミング」(17)同様、他のMCUキャラにはない少年のあどけなさを残したまま、同時に成長を遂げようとする姿を演じて、ともすると重くなりがちなスーパーヒーロー映画とは一線を画す"青春ロードムービー"を果敢に牽引してくれる。

　とは言え、最新作でのピーターは喪失感を引き摺っている。何しろ、彼が師と仰ぐアイアンマンは、宿敵サノスとの戦いの果てに命を落としたのだから。そう、最新作の時間設定は「エンドゲーム」の直後。スパイダーマンや本作でシリーズ12回目の登場となる諜報機関「S.H.I.E.L.D.」の長官、フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)、同機関の有能エージェント、マリア・ヒル(コビー・スマルダース)は復活したものの、アベンジャーズの多くは消滅するか、地球を離れた状態にある。そこで、フューリーはアベンジャーズ再編を目指して、同じく復活したピーターに重要任務を託そうとする。まして、ピーターはアイアンマンからヒーローの未来を託された身だ。

戦いの過程で子供と大人の間を往き来するピーター・パーカー

　でも、ピーターは見た目も中身もまだ高校生。フューリーからの連絡を無視して、故郷のニューヨークを離れてクラスメイトのネッド(ジェイコブ・バタロン)や秘かに恋するMJ(ゼンデイヤ)等と共に夏休み旅行へ出かけてしまう。向かう先はヴェネチア、ベルリン、ロンドンだ。だから名付けて「ファー・フロム・ホーム」&青春ロードムービー。前作では大人になりたくて仕方なかったピーターが、今回はまだ大人になりたくない、子供のままでいたいと思う心の葛藤を、トム・ホランドが持ち前の少年っぽい風貌と演技で巧くカバーして行く。

　ピーターに決断の時が訪れる。業を煮やしたトニー・スターク/アイアンマンの親友、ホーガン(ジョン・ファブロー)が、わざわざホテルにピーターを訪ねてきて、フューリーのミッションを受けるよう説得。こうして、高校生のピーターは仕方なくスパイダースーツに手を通し、スパイダーマンとして空中へ飛び出すことになる。

新たなる敵"エレメンタルズ"の脅威と超人ミステリオの存在

　行く手に立ちはだかるのは、水を操り、炎を生みだし、大地を動かし、空気を吸い込む自然の驚異の集合体とでも言うべき"エレメンタルズ"。ピーターは「エンドゲーム」で証明された時空の扉"マルチバース"により飛来した超人ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)からヒーロー哲学を学びつつ、神出鬼没の敵と対峙する。果たして、ミステリオはアイアンマンに代わるピーターの師なのか?そもそも、"エレメンタルズ"は何を目的に襲来し、ネッドやMJまでも危険に晒すのか?やがて、ピーターの戦いは彼の想像を超えて、皮肉な展開を見せていく。スパイダーマンvs"エレメンタルズ"の攻防は、この不確かな時代に、物事を安易に信じてしまう人々の危うさと、彼らが求めるヒーロー像とは何かを教えてくれるのだ。

　トニー・スタークから受け取ったアイアンマン・スパイダー・アーマー、メイおばさん(マリサ・トメイ)がピーターの旅行鞄に忍ばせた定番スーツ、今回初めてお披露目されるブラック&レッドのコンビタイプ、そして、ゴーグル付きブラックスーツと、今回スパイダースーツは計4着、TPOに合わせて着用される。ホーガンと彼が秘かに恋しているメイおばさんとの微妙な関係や、勿論、ピーターとMJの恋の進展も描かれて、熾烈なアクションシーンと心温まるコメディ要素の配分も絶妙な最新作。

トム・ホランドと共に描くMCUの限りない未来

　何よりも、少しずつ自分の立場を自覚しつつも、あくまで高校生でいたいピーター・パーカーの弾ける青春が眩い。これは、過去のシリーズにはなかったトム・ホランド効果の最たるもの。ホランドの登場によって、「スパイダーマン」シリーズはより観客のいる空間へと近づいたのではないだろうか?かつてのピーターたちが孤独や自己強迫観念に苦しみ、それが観客の共感を得たのとは異なり、ホランドのスパイディは異常な明るさ、軽さ、透明感、イノセンスで魅了する。来るフェーズ4を想定しつつ、トム・ホランドのピーター・パーカーがもっと見たい。それが、「ファー・フロム・ホーム」の率直な感想だ。

スパイダーマン : ファー・フロム・ホーム

6月28日(金) 世界最速公開!

配給:ソニー・ピクチャーズ　エンタテインメント

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