「マウントをとる人」が決定的に足りない共通点
「もう、わかった」
「完全に理解した」
最近すごく増えてきた。「マウント・スチューピッド」である。
情報過多の時代だからだ。ほんの少し、情報に触れただけ、1冊、2冊、本を読んだだけ。2~3回研修を受けただけ。それだけで、
「カンタンですね」
「任せてください。完璧にわかりましたから」
言ってはばからない人がいる。しかし、スキルや技能を習得するには、「もうわかった」などと言ってマウントをとっていないで、謙虚になる必要がある。その後に来る「絶望の谷」を越える必要があるからだ。
スキルを習得する際に訪れる「馬鹿の山(マウントス・チューピッド)」からどのようにして「継続の台地」に到達し、プロフェッショナルな道へと歩めるようになるのか。
本日も図解を交えて解説していく。
<トピックス>
■「完全に理解した」と言ってマウントとってる場合ではない
■ちゃんと教育を受けると最初は心が折れそうになる
■成長の実感を味わえると自信が芽生え、未来に希望を持つ
■多様な体験を通じて知識が知恵を生む知性まで身につく
■絶望の谷に落ちたあと諦めるか奮起するかが分かれ道
■「完全に理解した」と言ってマウントとってる場合ではない
マルコム・グラッドウェルのベストセラー『Outliers』で紹介された「1万時間の法則」は知っているだろうか。あまりにも有名な話なので、一度は耳にしたことがあるだろう。
もちろん何かを習得するのに「1万時間」必要かどうかはわからない。しかしどんなに質を上げても「100時間以下」にはならない。
そう考えたら、冒頭に書いたとおり、1冊や2冊本を読んだり、ネットの記事をググって閲覧し熟読したぐらいでは「理解した」とは言えないのである。
まず何をするにしても「そう簡単にスキルは習得できない」という気持ちで臨むことが重要だ。そうでないと「マウント・スチューピッド」状態が続くことになる。
■ちゃんと教育を受けると最初は心が折れそうになる
たとえばコーチングを例にとってみる。以前、2日間の合宿研修に参加しただけで「もうコーチングできる」と思い込んだ部長がいた。
コーチングはとても奥深いテクニックだ。私は医者と同等ぐらいの知識習得と鍛錬が必要だと思っている。
案の定、プロのコーチから見ればまったくわかっていなかった。実際に本人がそのことに気付くと一気に「絶望の谷」に落ちたのだ。
■成長の実感を味わえると自信が芽生え、未来に希望を持つ
次に、デジタルマーケティングに関する例を書いてみよう。
SEO対策とSNSで集客がうまくいくと思い込み、我流で2年間やってみたがまったく効果が出なかった、と嘆いていた社長がいた。
その後、プロのコンサルタントからアドバイスを受け、
「完全に理解したと思っていたら、まったく理解できていなかった」
と言い、いったん「絶望の谷」に落ちた。
「こんなのムリ……」
と嘆く社長にコンサルタントが奮起を促し、正しい知識でデータ検証し「試行錯誤」を繰り返していくことを勧めた。社長はそのアドバイスに従った。すると3ヵ月もすると、徐々に成果が見えはじめたのだ。
まさに、これが「啓蒙の坂」を上るイメージである。
■多様な体験を通じて知識が知恵を生む知性まで身につく
情報やノウハウは、お金さえ払えばすぐ手に入る時代となった。しかしだからといって、それと同様なスピード感でスキルを体得し、成果を出せるようにはならない。
多様な体験を通じて知識が「知恵」に変換し、レベルの高い判断能力が身につくものだ。そしてその知恵が「知性」に代わり、再現性の高いスキルへと習熟する。
ここまでいってようやく「継続の台地」に到達することを忘れないでおこう。
■絶望の谷に落ちたあと諦めるか奮起するかが分かれ道
最後に。下の図でも表現した通り、「絶望の谷」に落ちたとき。ここが分かれ道である。
「ちょっとわかったからといって有頂天になっていた」
そう自覚したあとの行動が、とても重要だ。
「自分には合わない。センスがない」
と思うのか。
「誰でもこういう道は通ったはず。長い道のりだが頑張る」
と奮起するのか。情報過多の時代だからこそ、このダニング・クルーガー効果の曲線は頭に入れておくべきだ。そうすることで、謙虚に努力を続けられるようになる。