最悪の「スライサー上司」 人の貴重な時間や親切心を少しずつ削っていく上司3つの特徴
職場で最も厄介な存在は誰か?
それは部下の時間や気持ちを少しずつ、少しずつ削っていく「スライサー上司」である。
大きな声で怒鳴ったり、露骨にパワハラをするわけではない。しかし、その言動は確実に部下たちの士気を下げていく。部下からすれば、「言いにくい」「指摘しづらい」存在だからだ。
そもそも「スライサー」とはどんな人種なのか? その特徴とは?
組織マネジャーはもちろんのこと、中間管理職を目指す人は、自分がスライサー上司になっていないか必ずチェックしよう。部下との関係に悩んでいる人は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■スライサーとはどんな人? なぜ最悪なのか?
スライサーとは、他人の時間やお金、好意を薄く、薄く削っていく人のことだ。昨今、テレビやネット記事で紹介され、注目を集めている。したがって「スライサー上司」とは、上司という立場を利用して、部下の時間や気持ちを少しずつ奪っていく存在である。
たとえば、あなたの上司はこんなことをしていないだろうか?
・自分で主催した会議に10分遅刻する
・自分で調べられることを部下に調べさせる
・関係のないメールをCCに入れて送ってくる
・メールやチャットで済むのにわざわざ電話してくる
・今すぐ意見が欲しいのに「来週の会議で」と言ってくる
このような行動を日常的にとるのだ。一回一回は些細なことかもしれない。しかし積み重なると、部下にとってストレスは膨れ上がっていく。まさに「塵も積もれば山となる」である。
これらの行動は指摘しづらい。
「たかが数分の遅刻だから……」
「ちょっとした調べ物なので……」
「少し面倒なだけだ……」
といった感じで、部下は我慢を強いられる。しかしそういった我慢が、少しずつ、少しずつ不満を募らせる原因となるのだ。
■スライサー上司3つの特徴とそれぞれの事例
さてスライサー上司は、どんな上司なのか。その特徴を3つ紹介する。
(1)時間を削る
(2)気持ちを削る
(3)信頼を削る
まず「時間を削る」スライサー上司の特徴を見ていこう。このタイプは、部下の時間を少しずつ奪っていく。
「今、ちょっといいかな」「すぐ終わるから」と声をかけ、毎回30分以上話し込む。時間外でメールを送り、「もし見たら返信して」と書く。定時で帰ろうとする部下に「これ、明日までにできるよね?」と言ったりする。
次に「気持ちを削る」スライサー上司だ。
このタイプは、部下の好意や親切心を当然のように受け取る。
「君がやってくれると助かる」「頼りにしてるから」と言葉巧みに頼み込む。しかし感謝の言葉は一切ない。悪気がないからよけいに部下も指摘しづらい。
そのうち部下は、自分の親切心が搾取されていると感じ始める。
最後は「信頼を削る」スライサー上司である。
このタイプは、部下との約束を軽々しく破る。
「先日相談させてもらった件、どうなりましたか?」
「あ、あの話? うーん。部長に聞いてみようと思ったけど、なかなかタイミングが合わないんだよな」
「いつになったら部長に聞いてもらえますか?」
「あのさ、そもそもそれって重要なことなの?」
このような不誠実な対応をする上司もスライサーだ。「心理的安全性が高いチームにするというから相談したのに」「相談するだけ無駄だった」と部下は失望する。
「検討します」と言っておきながら、いつまでも返事をしない。「任せた」と言いながら、途中で介入してきて指示を変える。そのたびに部下の信頼は薄く、薄く削られていくものだ。
■スライサー上司3つの対策
では、スライサー上司にどう対応すべきか。主な対策は次の3つである。
(1)記録を取る
(2)数値化する
(3)上司の上司に相談する
まず重要なのは記録を取ることだ。毎回の遅刻時間、突発的な依頼の内容、約束が守られなかった件数など、具体的な事実を記録していく。感覚的な不満では改善を求めにくい。
次に数値化することである。時間外の仕事で増えた労働時間、余計な作業で失われた時間など、できる限り数字で示す。「1ヶ月で●時間のロス」といった具合に、可視化するのだ。
最後は、上司の上司に相談することだ。直属の上司が課長なら部長に相談してみよう。それでも埒が開かないなら、労務担当の部署に連絡するのだ。
ただし、感情的な愚痴は避けたい。記録と数値を示しながら、「生産性アップのために改善したいんです」と謙虚な態度で、建設的な提案をしよう。
■パワハラより見えにくいスライサー行為
スライサー上司の問題は、パワハラよりも見えにくい。だからほとんどの部下は泣き寝入りすることだろう。
しかし、確実に部下の士気を奪っていく。なぜなら昨今の若い人はタイパ重視だからだ。
部下一人一人の時間や気持ちを大切にできないスライサー上司のもとで、組織が健全に機能するはずがない。組織マネジャーは自らの言動を振り返り、スライサー的な振る舞いをしていないか、常に意識する必要がある。
<参考記事>