売れっ子・堀田真由、オーディションに落ち続けた過去。葛藤の東京生活で殻を破れたきっかけを語る
春から新生活をスタートさせる人たちにぴったりのアニメーション映画『ブルーサーマル』が、3月4日より全国公開される。同作は、東京の大学へ進学した主人公・都留たまき(愛称「つるたま」)が、ひょんなことから入部することになってしまった航空部でグライダーの操縦士としての才能を開花させ、空を飛ぶ魅力にのめり込んでいく青春物語だ。
そんなつるたまの声を演じたのが、NHK連続ドラマ小説『わろてんか』(2017年)、映画『ライアー×ライアー』(2021年)などで知られる堀田真由。今回は、同作に絡めて堀田の上京話など、自身の青春の1ページを振り返ってもらった。
上京時に痛感「現実は甘くない」
――つるたまは東京の大学へ進学するために故郷・長崎から旅立ちますが、母親は「東京は危ないところ」とすごく心配する。堀田さんは出身の滋賀県から上京することになったとき、まわりはどんな反応でしたか。
両親は、私が小さいときから「ノー」と言うことがほとんどなかったんです。いろんなことを受け入れてくれたうえで、「やるからにはちゃんとやりなさい」と教えられていて。だから「東京へ行きたい」と相談したときも、「行くんやったら、帰って来れんぐらい大きくなってきなさい」と。つるたまのように心配されず、力強く送り出してもらいました。ただ祖父は、みんなでご飯を食べに行ったとき「東京へ行くんか…」と泣き出しちゃいました(笑)。
――つるたまは東京で生活をスタートさせて早々にトラブルに巻き込まれ、航空部へ入ることになる。そして「理想が崩れた」となります。でも新しい生活をはじめると、「こんなはずじゃなかった」ということは多々ありますよね。
現実は甘くないと痛感する瞬間ばかりです。私は仕事のために上京しましたが、オーディションに何度も落ちて悔しい思いばかりしていましたから。覚悟はしていたけど、それでも自分が思い描くようにはいかない。現実の厳しさに直面したときは、「この先、どうしよう」となりました。
――堀田さんはメディアなどでも「出演作が相次いでいる」と報道されますし、順調にキャリアを積み重ねているイメージ。でも決してそんなわけではなかったんですね。
それは私に限らず、俳優はみなさん、見えないところでいろんな葛藤があるはず。確かにいろんな方から「良い流れで活動しているね」とおっしゃっていただきます。それはすごくありがたいこと。だけどその言葉に納得してしまったら、成長できなくなる気がします。だから常にどん欲に、そして挑戦できる人間でありたいです。
「『いとしのニーナ』で殻を破れた」
――逆に東京で生活を始めたとき、どんなことにワクワクしましたか。
学校帰りに竹下通りでクレープを食べたりして、都会で暮らす十代の女の子が楽しんでいることをまずやりました。あと、山手線に乗るのがなぜかおもしろかったです。「なんだ、このグルグルと回る電車は」って(笑)。山手線に乗って、友だちとお喋りするのが楽しかったですね。
――つるたまはずっと自分の居場所がなかった女性。しかし航空部を居場所にしていきます。堀田さんも俳優業を始めたときは戸惑いが多かったと思いますが、どのあたりから「ここが自分の居場所だ」と感じられるようになりましたか。
そう考えられるようになったのは割と最近です。何度か主演として作品の真ん中に立たせていただきましたが、決して自信があったわけではないんです。いつも戸惑ってばかり。だから「作品の中心に立ちたいけど、でもそういうポジションは自分には向いていないかもしれない」とずっと葛藤していました。
――そういう時期があったんですね。
挑戦する勇気がなかったんです。だけどドラマ『いとしのニーナ』(2020年/フジテレビ系)でヒロインをやらせていただいたとき、殻を破れた気がしました。以前からラブストーリーでのお芝居に難しさを感じていたんですが、演じたニーナがとにかく一筋縄ではいかないし、極端な感情の持ち主だったから、「思い切ってやってみよう」と。そういう気持ちで役にのぞんでいくうちに、「この場所でやっていけるかもしれない」と前に進むことができました。
――ある意味、気持ちを吹っ切って仕事に向き合ったことで、殻が破れたわけですね。
もっと踏み込んで役に挑もうって。『いとしのニーナ』はそういうきっかけをもらいました。そんな気持ちの積み重ねがあって、『ブルーサーマル』で声優という自分にとって新しいジャンルに取り組むことができました。
「家族みんな、自分の夢を追いかけている環境」
――つるたまには、航空部のエース・倉持という憧れの先輩がいます。彼がつるたまの成長を後押しする。堀田さんは、自分のことを高めてくれる存在はいますか。
家族です。うちはみんなアクティブなんです。外の世界へどんどん出て行く人たちばかり。祖母は刺しゅうをやっているのですが、そのためにインドまでひとりで行ったりして。おじさんもずっとニューヨークに住んでいました。家族みんなが、自分の夢を追いかけている環境なんです。それに感化されて、私も意外と怖いもの知らずなところがあります。
――つるたまはグライダーとして天才的な面を持っていますが、堀田さんも「こういうところが実は天才的」という部分はありますか。
切り替えの早さは天才的です。1日のほとんどがONの状態なんですが、OFFにするときは一気にそちらのモードになれます。あとは根性が人一倍あります。だからこれからも、どんなことがあっても根性で押し切っていくつもりです(笑)。