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仕事中に東日本大震災で亡くなられた方のご遺族へ~労災申請について

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

仕事中に地震や津波が原因で亡くなった場合、労災が認められる場合があります

東日本大震災は、2011年3月11日午後2時47分に地震が発生し、その後、津波がやってきて多くの方が犠牲になりました。

この時間帯は、労働者であれば仕事中だった方が多いのではないでしょうか。

そして、仕事中に地震や津波で亡くなった方がいれば、そのご遺族が労災請求をすれば労災と認められる可能性があります。

下に書きましたとおり、遺族(補償)年金や一時金の時効は被災者が亡くなった日の翌日から5年ですので、これらの給付はまだ間に合います。

是非、検討してみてください。

Q 地震や津波で亡くなった当時、仕事中であれば労災保険の給付を受けられるのでしょうか?

A 受けられます。

難しい言葉で、「業務起因性」が問題となるのですが、東日本大震災では通達が発されており、そこで「天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること」と念押しされていますので、独自の判断で諦めたりすることは禁物です。

Q 行方不明の場合はどうですか?

A 特例がありますので、受けられます

3カ月間生死が分からない場合、又は死亡が3カ月以内に明らかとなったもののいつ亡くなったか分からない場合、2011年3月11日に亡くなったものと推定されます。

民法でも行方不明から1年後に死亡とみなされる規定があり、これによっても請求が可能となります(家裁での手続が必要)。

Q 事業主証明が受けられないのですが、大丈夫ですか?

A 事業主証明がなくても受理されます

労災の請求書には事業主証明書欄があり、そこに事業主が証明する旨を記載することが求められます。

しかし、この大震災に限らず、通常の場合でも、事業主が請求書の事業主証明欄に記載することを拒否する場合もありますし、この大震災では、津波や建物倒壊などで、事業主証明が困難場合も多いでしょう。しかし、こうした場合でも、事情を記載すれば、事業主証明がなくても申請は可能です。

Q 資料がないのですが、大丈夫でしょうか?

A 資料がなくとも認定される場合がありますので、諦めないでください

津波で亡くなった方の勤務先の資料も流されてしまうなどもあり、資料がない場合もあると思います。

基本的には、給与明細書などの賃金額が分かる資料が必要なのですが、ない場合は、労働基準監督署において関係者から聴取などして認定される場合があります。

Q どんな給付が受けられるのでしょうか?

A 遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金が受けられます。

請求できる人は、次の通りです。

遺族(補償)年金は、被災者が死亡当時、その収入によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。

ここのところは配偶者であれば基本的にOKですが、子どもやその他の場合は細々とした要件がありますので、とりあえず専門家に相談をしてみた方がいいと思います。

遺族(補償)一時金は、被災者の死亡当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合に受けることができます。

Q どこへ請求したらいいでしょうか?

A 全国の労働基準監督署で受け付けています

本来は事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に提出するのですが、東日本大震災は非難している場合もあるので、最寄りの労働基準監督署でも受け付ける取扱いとのことです。

心当たりがあればとりあえず相談してみて下さい

冒頭に言いましたとおり、死亡の場合の請求の

時効は5年

です。

仮に震災の日に亡くなられたとすれば、およそ1年の猶予がありますので、是非、検討をしてみてください。

相談は労働基準監督署や弁護士などの専門家にしてください。

参考になる情報は以下のページから見て下さい。

より詳しい情報が載っています。

東日本大震災による被災者の皆様へ

「被災された労働者」と「そのご遺族」の皆様へ  労災保険制度のご案内(PDF)

労災保険制度に関する重要なお知らせ(PDF)

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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