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なると金時、天恵菇、阿波地美栄……20周年を迎えた六本木のホテルで徳島の魅力が味わえる!

東龍グルメジャーナリスト
グランド ハイアット 東京「グランド グルメ トリップ 徳島」 (C) 東龍

グランド グルメ トリップ

グランド ハイアット 東京は2003年にオープンしました。六本木ヒルズの隠れ家的なロケーションにあり、ゴージャスな空間や充実したレストラン・バーで存在感を示しており、いまだに根強い人気を誇ります。

そのグランド ハイアット 東京も、2023年で20周年という節目を迎えました。記念する今年の11月に「グランド グルメ トリップ 徳島」が開催され、徳島県の豊かな自然に育まれた食材をふんだんに用いたメニューが楽しめます。

ちなみに「グランド グルメ トリップ」とは、全国各地の様々な地域にフォーカスしたイベント。良質な食材をメニューに取り入れ、地域の魅力を広めるとともに生産者をサポートしてきました。

各施設で様々なメニュー

各施設で様々なメニューが用意されています。

イタリアン カフェ「フィオレンティーナ」では2023年11月10日から30日まで「阿波地美栄 鹿肉のラグーと天恵菇 自家製ガルガネッリ」(2,530円)や「阿波地美栄 鹿肉ソーセージと天恵菇のピッツァ」( 2,750円)、「すだちぶりのカルパッチョ すだちのビネグレット」(2,310円)が提供されます。

「フィオレンティーナ ペストリーブティック」では、2023年11月10日から30日まで「なると金時のモンブラン」(750円)や「柚子パウンドケーキ」(3,000円)などの5品を販売。

鉄板焼「けやき坂」では2023年11月3日から30日まで「とくしま三ツ星ビーフ サーロイン」(150g 14,000円)や「とくしま三ツ星ビーフ テンダーロイン」(120g 15,400円)、「アシアカエビのガーリックシュリンプ」(3,850円)や「徳島野菜(天恵菇やなると金時など)」(3種 2,530円、5種 4,400円)など、5つの料理が楽しめます。

バー&ジャズラウンジ「マデュロ」でも2023年11月1日から30日まで「柚子モヒート」(2,750円)、「柚子マティーニ」(2,750円)、「柚子シャンパンソルベ」(2,970円)といったカクテルを創作。

フレンチ キッチン 徳島ディナー

グランド ハイアット 東京「フレンチ キッチン」 (C) 東龍
グランド ハイアット 東京「フレンチ キッチン」 (C) 東龍

いずれとも非常に興味深いメニューばかりですが、実は特別なガラディナーも行われました。

それは、オールデイ ダイニング「フレンチ キッチン」で2023年11月10日と11日に開催された「フレンチ キッチン 徳島ディナー」(17,600円)です。

コース内容は次の通り。

・ウェルカムカクテル ~トークセッション~

・鳴門わかめとしらすのベニエ 柚子胡椒

・阿波尾鶏のバロティーヌ すだちのマルムラード※

・なると金時のポタージュ 阿波地美栄 鹿のソーシソン※

・イトヨリのポワレ ヴェルモット風味のクリームソース 蕎麦米とすじ青のりのリゾット※

・阿波地美栄 家形さん狩猟の日本鹿腿肉 低温調理 赤ワインソース 渭東ねぎ 柿のチャツネ※

・「藤原ファーム」とくしま三ツ星ビーフサーロインのグリル ゆずのベアルネーズ 美馬産とうがらし 海部藻塩 「大塚きのこファーム」天恵菇

・なると金時のモンブラン 胡麻クリーム 和三盆のキャラメル バニラアイス

どれも徳島県の食材をたっぷりと使ったスペシャルなメニュー。肉料理を2品味わえるのが、大きな特徴です。2023年11月12日から30日にかけては、※を付けたメニューがアラカルトでも提供されています。ただ、家形氏が狩猟した鹿肉は仕入れられた場合のみ提供されているので要問い合わせです。

2022年12月から「フレンチ キッチン」料理長を務める有本豊氏も実際に徳島へ足を運びました。生産者たちと交流し、自身の目と舌で厳選した食材を確かめ、特別な料理に紡ぎ上げています。

徳島に関わりの深い2人

「フレンチ キッチン 徳島ディナー」には徳島県に関わりの深い2人が携わっています。

写真家の大杉隼平氏は、俳優であった父の大杉漣氏が徳島県出身。徳島の美しい風景や豊かな自然に寄り添って生きる生産者たちや職人たちに魅せられ、自ら撮影した写真で取り組みを広めてきました。「THE EDITORS PHOTO AWARD ZOOMS JAPAN」の一般投票で最多票を獲得してパブリック賞を受賞したり、職人達との新たなものづくりを提案する「hubawa」代表を務めたりするなど活躍。

猟師の家形智史氏は「Surf & Hunt」の代表で、サーフボード職人兼猟師として活動。いただく命を大切にし、最大限活用したいという想いから、農作物被害を及ぼす野生動物を素手で捕獲し、山から引き出す際は動物を傷つけないよう担いで運搬します。ガラディナーで用いられているジビエは家形氏が捕りました。

徳島フェアの仕掛け人

徳島フェアの仕掛け人は、大杉氏でした。

大杉氏がグランド ハイアット 東京に徳島県の食材を紹介して、2023年9月頃に企画が決定します。

生産者との調整をアレンジし、料理長の有本氏や料飲部が徳島に訪問。そこから1ヶ月強で「フレンチ キッチン」の特別ディナーをはじめとして、他の館内4施設のメニューが完成しました。

徳島県の食材

今回のフェアで使用されている徳島県の美食材について触れておきましょう。

「阿波地美栄(あわじびえ)」は、鳥獣保護管理法とは別に、徳島県が独自に定めたガイドラインに従ったジビエ。ガイドラインでは、狩猟から処理、食肉としての販売、消費に至るまで、安全性を確保できるように定められており、安心しておいしく食べられるように取り組んでいます。

「とくしま三ツ星ビーフ」は全国で初めて「JGAP家畜・畜産物」の認証取得を必須要件とし、徳島県が「安心・安全」「おいしさ」などについて審査した自慢の牛肉。28カ月齢以上の黒毛和種でB.M.S.(脂肪交雑)5以上をゴールドスター、25カ月齢以上の交雑種(F1)でB.M.S.が3以上をシルバースターと定めています。

「天恵菇(てんけいこ)」直径約7センチ以上の大きな笠と通常品の約2倍ある旨味成分(グアニル酸)もある希少な椎茸。肉厚でしっかりした食感、苦味や雑味が少ない食べやすさがあること、風味の良さが特長です。

「なると金時」はきめ細かく美しい外見、ホクホクとした食感、上品な甘味のあるサツマイモ。鳴門の海のミネラルをたっぷりと含んだ、水はけと通気性のよい砂地で栽培されています。

また「鳴門わかめ」、シラス、イトヨリは、SDGsにも力を入れる徳島魚市場株式会社から提供されています。

トークセッション

大杉隼平氏(右)と家形智史氏(左)によるトークセッション (C) 東龍
大杉隼平氏(右)と家形智史氏(左)によるトークセッション (C) 東龍

ディナーが始まる前に、大杉氏と家形氏によるトークセッションが行われました。オリジナルのウェルカムカクテルを嗜みながら、大杉氏のバックグラウンドや家形氏が猟師になった経緯、徳島の食材の魅力や生産者の紹介を聞けました。

今回の徳島フェアに尽力した大杉氏は次のように想いを込めます。

「徳島にはたくさんの魅力があります。山と海、川があり、熱意のある生産者がいて、素晴らしい食材があるので、様々な手法を用いて、効果的にPRしたいです。写真で伝えていくのはもちろんのこと、色々な方を結びつけて、徳島のことをもっと知っていただきたいと思います」

家形氏は自身の猟について述べます。

「動物は人間と対等です。害獣といわれることがありますが、動物も畑を荒らしたくて荒らしているわけではありません。動物ができるだけストレスを感じないように、ワナは弱い加減に調整しています。そうすると捕獲率は下がってしまいますが、動物に最大限の経緯を払うことができ、肉質もよくなります」

では、徳島の優れた食材をふんだんに用いた料理を紹介していきましょう。

鳴門わかめとしらすのベニエ 柚子胡椒

鳴門わかめとしらすのベニエ 柚子胡椒 (C) 東龍
鳴門わかめとしらすのベニエ 柚子胡椒 (C) 東龍

磯が香る「鳴門わかめ」をふんわりと揚げたベニエです。シラスの旨味、柚子胡椒の辛味がアクセント。スパークリングワインとの相性も抜群です。

阿波尾鶏のバロティーヌ すだちのマルムラード

阿波尾鶏のバロティーヌ すだちのマルムラード (C) 東龍
阿波尾鶏のバロティーヌ すだちのマルムラード (C) 東龍

「阿波尾鶏」は食味に優れており、弾力もあるので、バロティーヌにぴったり。キノコのデュクセルなどが包まれており、フィリングは風味が豊かです。酢橘のマーマレードを合わせると、「阿波尾鶏」の旨味が際立ちます。

なると金時のポタージュ 阿波地美栄 鹿のソーシソン

なると金時のポタージュ 阿波地美栄 鹿のソーシソン (C) 東龍
なると金時のポタージュ 阿波地美栄 鹿のソーシソン (C) 東龍

しっかりとした甘味の「なると金時」をなめらかなポタージュに仕上げました。「なると金時」の小片も入れられており、そのホクホク感も味わえます。鹿肉のソーセージが動物性の力強さを加えており、徳島の里の美味が凝縮された一皿。

イトヨリのポワレ ヴェルモット風味のクリームソース 蕎麦米とすじ青のりのリゾット

イトヨリのポワレ ヴェルモット風味のクリームソース 蕎麦米とすじ青のりのリゾット (C) 東龍
イトヨリのポワレ ヴェルモット風味のクリームソース 蕎麦米とすじ青のりのリゾット (C) 東龍

イトヨリは、皮目はカリッと焼き上げられ、身はふっくらと仕上げられています。ヴェルモット風味のクリームソースは酸味があり、イトヨリの滋味をくっきりと際立たせていました。下には、蕎麦の殻をむいた「蕎麦米」と最高級の青のり「すじ青のり」でつくられた創造的なリゾット。

阿波地美栄 家形さん狩猟の日本鹿腿肉 低温調理 赤ワインソース 渭東ねぎ 柿のチャツネ

阿波地美栄 家形さん狩猟の日本鹿腿肉 低温調理 赤ワインソース 渭東ねぎ 柿のチャツネ (C) 東龍
阿波地美栄 家形さん狩猟の日本鹿腿肉 低温調理 赤ワインソース 渭東ねぎ 柿のチャツネ (C) 東龍

家形氏が「わな猟」でストレスなく採った鹿の腿肉を、これまたストレスの少ない低温調理で優しく火入れしました。均一の美しいロゼ色に仕上げられており、噛みしめる度に妙妙たる味わいが広がります。濃厚な赤ワインソースが、鹿肉の鉄分と抜群の相性。

「藤原ファーム」とくしま三ツ星ビーフサーロインのグリル ゆずのベアルネーズ 美馬産とうがらし 海部藻塩 「大塚きのこファーム」天恵菇

「藤原ファーム」とくしま三ツ星ビーフサーロインのグリル ゆずのベアルネーズ 美馬産とうがらし 海部藻塩 「大塚きのこファーム」天恵菇 (C) 東龍
「藤原ファーム」とくしま三ツ星ビーフサーロインのグリル ゆずのベアルネーズ 美馬産とうがらし 海部藻塩 「大塚きのこファーム」天恵菇 (C) 東龍

メインディッシュは「とくしま三ツ星ビーフ」のサーロインを用いたグリル。適度な脂があってジューシーで、牛肉の佳香も豊かです。柚子のベアルネーズソースは、通常のベアルネーズソースよりもさっぱりとした味わい。唐辛子を用いたコンディメントは刺激的です。コンディメントをサーロインに合わせれば、よい“味変”になるでしょう。「天恵菇」は弾力があるので食べ応えがあり、繊細な上味。

なると金時のモンブラン 胡麻クリーム 和三盆のキャラメル バニラアイス

なると金時のモンブラン 胡麻クリーム 和三盆のキャラメル バニラアイス (C) 東龍
なると金時のモンブラン 胡麻クリーム 和三盆のキャラメル バニラアイス (C) 東龍

「なると金時」をたっぷりと用いたモンブランで、底のメレンゲ生地がサクリとします。あしらわれた金箔や紅葉によって、見た目も映えます。添えられた胡麻クリームやバニラアイスは風味が豊かです。

ハウスワイン

左が「キャンヴァス シャルドネ」、右が「キャンヴァス カベルネ・ソーヴィニヨン」 (C) 東龍
左が「キャンヴァス シャルドネ」、右が「キャンヴァス カベルネ・ソーヴィニヨン」 (C) 東龍

特別な料理の数々には、ワインを合わせたいところ。

グランド ハイアット 東京には、ハイアットオリジナルワインがあります。高品質ワインの造り手として知られるアメリカ、カリフォルニア州ナパ・ヴァレーのモンダヴィファミリーが経営するフォリオ・ファイン・ワイン・パートナーズと共同で開発したワインです。

「キャンヴァス シャルドネ」はシャルドネ主体の白ワイン。樽香と快活な酸味があり、爽やかな香りと飲み口なので、前菜や魚料理に最適。「キャンヴァス カベルネ・ソーヴィニヨン」はカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインです。やわらかくてしなやかなタンニンがあり、スパイスのニュアンスもあります。ジビエにぴったりな一本です。

「グランド グルメ トリップ」で食体験

グランド ハイアット 東京の「グランド グルメ トリップ」では、東京では巡り合えないようなおいしい料理が食べられるだけではなく、様々な地域の生産者をサポートし、その素晴らしさを伝えていく重要な役割を担っています。

もちろん、生態系の保護や食文化の継承といった難しいことがわからなくても、フェア期間内に訪れておいしい食体験を紡ぐだけで十分です。

「フレンチ キッチン 徳島ディナー」は2日間限定でしたが、他のレストランではまだ徳島フェアが開催されているので、グランド ハイアット 東京でグルメの旅を満喫してみてください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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