海上自衛隊、今年3月は新艦艇の就役ラッシュ
毎年3月は海上自衛隊の新たな護衛艦や潜水艦が就役することが多いが、2021年3月は例年より特に多い就役ラッシュの年になる。
海上幕僚監部によると、以下の就役式となる引渡式・自衛艦旗授与式が予定されている。
日時 艦名 場所
3月 護衛艦はぐろ 就役(JMU横浜事業所磯子工場)
3月 音響測定艦あき 就役(三井E&S造船玉野艦船工場)
3月 掃海艦えたじま 就役(JMU横浜事業所鶴見工場)
3月 潜水艦とうりゅう 就役(川崎重工業神戸工場)
2021年未定 FFM1番艦 命名・進水式(三菱重工業長崎造船所)
●護衛艦はぐろ
護衛艦はぐろは、海自では8隻目の最新イージス艦となる。昨年3月に就役した「まや」と同型で、他のイージス艦や航空自衛隊の早期警戒機などと敵ミサイルの位置情報を共有できる共同交戦能力(CEC)を備える。従来のこんごう型とあたご型のイージス艦よりも、まや型は高い防空能力を有しており、海自の艦隊防空の中核を担うこととなる。
海自によると、基準排水量8200トン、全長170メートル、全幅21メートルで、建造費は約1734億円。
●音響測定艦あき
音響測定艦あきは「ひびき型」の3番艦だ。音響測定艦としては1992年に就役した「はりま」に続き、実に29年ぶりの就役となる。仮想敵国潜水艦の静粛化や隠密行動能力の向上を受け、音響情報収集能力の向上を図る。収集した情報は横須賀基地にある海上作戦センター隷下の対潜水艦作戦(ASW)関連部署に送られて分析、対潜戦に利用されるとみられる。
●掃海艦えたじま
掃海艦の就役は2018年3月の「ひらど」以来、3年ぶりとなる。えたじまは2017(平成29)年度計画掃海艦で、掃海艦「あわじ型」の3番艦だ。あわじ型は、もともと海自初の掃海艦で既に退役した世界最大級の木造艦「やえやま型」の性能向上型となっている。
えたじまは、あわじ型の1番艦「あわじ」と2番艦「ひらど」とともに海自で最大の繊維強化プラスチック(FRP)製掃海艦となる。船体に木材ではなく、FRPを使うことで、やえやま型とほぼ同じ寸法ながら軽量化された。さらにFRPを採用することで、耐衝撃性を確保しつつ、使用年数が大幅に長くなる長寿命化が図られている。海上幕僚監部広報室によると、寿命は木造艦船が約20年に対し、FRP製は30年超になるという。
えたじまは基準排水量690トンで、前級のやえやま型掃海艦より約310トン小型化する。全長は67メートルで、全幅11メートル、深さ5.2メートル、喫水2.7メートル、ディーゼル2基2軸、軸馬力2200馬力、最大速力は約14ノット。乗組員は約55人。総工費は約177億円。
●潜水艦とうりゅう
とうりゅうは日本の主力潜水艦「そうりゅう型」最終艦の12番艦となる。世界最大級のディーゼル潜水艦で、GSユアサが開発したリチウムイオン蓄電池を搭載する。リチウムイオン蓄電池搭載の通常動力型潜水艦としては、そうりゅう型11番艦のおうりゅう(2020年3月に就役)に続き、とうりゅうが2番艦となる。リチウムイオン電池技術を採用し、ディーゼルエンジンを使う通常動力型潜水艦は、日本が世界で初めてだ。
なお、そうりゅう型は低振動で静粛性に優れ、世界有数の高性能艦として知られてきたが、昨年10月にはその後継艦で性能向上型となる最新鋭3000トン型潜水艦「たいげい」が進水した。
●FFM1番艦
このFFM(多機能護衛艦)の1番艦は三菱重工業長崎造船所でいまだ建造中で、命名・進水式の日取りは依然、未定となっている。
1番艦は2番艦の「くまの」と同様、本来は昨年11月に命名・進水式が行われる予定だった。しかし、川崎重工業がガスタービンエンジンを試験稼働中、脱落した部品をエンジンが吸い込むなどしてトラブルが発生し、建造が遅れている。このため、2番艦「くまの」のみが11月に進水した。艦型名は1番艦の命名・進水式に伴って決められるという。
海上幕僚監部は「今年は例年より就役が多い。音響測定艦は久しぶりに建造した。掃海艦も毎年就役するものではない」と説明している。
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