最新型イージス艦「まや」就役 海自初の「共同交戦能力」搭載 漢字では「摩耶」
海上自衛隊の最新型イージス艦「まや」が3月19日、就役した。神奈川県横浜市のジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。まやは海自艦としては初めて、他のイージス艦や航空自衛隊の早期警戒機などと敵ミサイルの位置情報を共有できる共同交戦能力(CEC)を備える。これまでのイージス艦よりも高い防空能力を有しており、海自の艦隊防空の中核を担うこととなる。横須賀基地の第1護衛隊群第1護衛隊に配備され、警戒監視活動などに当たる。
海自によると、艦名のまやは漢字では「摩耶」と書き、兵庫県神戸市の六甲山系に位置する摩耶山に由来する。この山は、古くは8つの国を見渡すことができる「八州峰(はっしゅうみね)」と呼ばれ、隙のない厳しい警戒の様子を表しているという。
●まやはイージス艦7隻目
まやは、護衛艦「あたご」型の性能を向上した「まや型」の1番艦だ。イージス艦としては7隻目になる。「まや型」2番艦の「はぐろ」は2019年7月に進水し、2021年3月に就役が予定されている。
海自は、これまで6隻あったイージス艦のうち、弾道ミサイル防衛(BMD)能力を有しなかったあたご型の「あたご」と「あしがら」にBMD能力を付与する事業を完了している。1年後の「はぐろ」の就役によって、日本が目指してきたBMD能力を持つイージス艦8隻態勢が整うことになる。横須賀、佐世保、舞鶴、呉に拠点を置く海自4個護衛隊群にそれぞれイージス艦2隻ずつを配備する計画だ。
●空自の早期警戒機「E2D」にもCEC導入
まやには、新装備として、自艦が探知しきれない敵の弾道ミサイルや巡航ミサイル、さらには軍用機の位置情報を味方の艦と共有し、対処できるCECが初めて搭載されている。空自の早期警戒機「E2D」へのCECの導入も進み、これにより、より遠くから高い精度で対空目標の情報共有ができる。また、まやは、日米が共同開発した新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を搭載する予定だ。迎撃できる高度はSM3の倍の約1000キロメートル超となり、防衛範囲も倍増する。
このほか、まやには、従来のミサイルよりも射程の長い対空・対艦ミサイルであるSM6の搭載が予定されている。SM6は、低空を高速で飛来する巡航ミサイルなどに対処する迎撃ミサイルで、射程距離は300キロ以上とされる。
さらに重要なことは、CECの導入によって、まやとはぐろはアメリカの艦艇とも敵ミサイル情報を共有し、ミサイル防衛の連携強化に乗り出すことだ。アメリカミサイル防衛局は2015年2月、ロッキードマーティン製のDWES(Distributed Weighted Engagement Scheme)によって、アメリカ海軍のBMD対応のイージス艦2隻が模擬の弾道ミサイル3発を成功裏に迎撃したと発表した。これは複数のミサイルが飛来してきた時に複数のイージス艦の間で自動的に迎撃調整を行い、重複なくミサイルを効果的に撃ち落とす仕組みだ。どのミサイルに対し、どのイージス艦が最適に撃ち落とすか、リアルタイムで決められる。北朝鮮や中国、ロシアのミサイル脅威が高まる中、海上自衛隊と在日アメリカ海軍はこの日米共同のミサイル防衛スキームの確立を急いでいる。
まやの機関方式としては、電気推進とガスタービンを組み合わせたハイブリッド推進(COGLAG)をイージス艦としては初めて採用した。ガスタービンは低速航行時には燃費が悪いため、低速時にはガスタービン発電機でモーターを動かす電気推進、高速時はモーターによる電気推進とガスタービンによる機械推進を組み合わせた複合推進で運転するもの。これにより、燃費の向上とライフサイクルコストの低減を図っている。
まやは基準排水量約8200トンで、あたご型より約450トン大型化した。全長は170メートルで、最大幅は21メートル、深さ12メートル、喫水6.2メートル、軸馬力6万9000馬力、最大速力は約30ノット。乗組員は約300人。SH60K哨戒ヘリコプター1機の搭載が可能だ。建造費は約1720億円。