発売30周年! 駄菓子の定番「ブタメン」が売れ続ける秘密とは?
「ブタメン」が今年で発売30周年を迎えた。
「ブタメン」は1993年に株式会社おやつカンパニー(三重県津市)から発売された駄菓子である。駄菓子でありながら、お湯を注いで食べるカップ麺のような商品で、その唯一無二の立ち位置が魅力である。30年もの間スーパーの駄菓子売り場から消えることはなく、絶大な人気を集めている。今回は「ブタメン」の人気の秘密に迫りたい。
“駄菓子売り場”で売られる「おやつ以上・食事未満」のカップ麺
もともとはおやつカンパニーが出していたミニカップ麺の「ベビースター当りら~めん」のしょうゆ味、カレー味に次ぐ3番目の味(とんこつ味)として1993年に誕生したもの。
ちょうど豚骨ラーメンが1980年代後半から人気になり、それを新フレーバーとして登場させようという目論見だった。わかりやすい名前をということで、とんこつの「ブタ」から「ブタメン」と名付けられた。
その凄さはなんといっても、お湯を入れて食べるカップ麺的な商品であるにもかかわらず、“駄菓子売り場”で売られていることである。小さめのサイズのカップ麺であれば、「カップヌードルミニ」「ミニどん兵衛」などたくさん発売されている中、「ブタメン」はほぼ唯一駄菓子売り場で売られ続けている。
そして、駄菓子売り場で売られているので、“子供向け”というイメージがつきやすく、ターゲットがぶれない。実際に、子供におやつとして食べさせるには、カップラーメンは避けておこうという親の考えが多い中、「ブタメン」はボリューム的におやつに食べても問題ないというのが一般的な考えである。30~35グラムという「おやつ以上・食事未満」な絶妙な量が、敵を作らず一強であり続けている理由の一つだ。
親世代のノスタルジー感が購入動機?
少子化の中、“子供向け”というより“親子向け”という方が正しいという指摘もある。スーパーで親子が一緒に買いに来て、親が懐かしんで手に取った「ブタメン」を子供が受動的に食べるというケースも多いようだ。
実は子供のおやつというだけでなく、大人世代にも人気で、ランチのスープがわりや小腹が空いた時などでも利用されているようだ。ちょうど、子供の頃「ブタメン」を食べていた世代が大人になったということだろう。
同じおやつカンパニーから出ている「ベビースターラーメン」の主要購買層は40代だという。歴史ある商品にノスタルジーを感じる世代が買って、子供の世代に繋いでいるというのが現実だろう。
それから、やはりおやつカンパニーという「ベビースターラーメン」を出しているメーカーだからこそ、「ブタメン」の地位が作られたといえる。通常の食品メーカーからすると、新規で菓子市場に入り込むのは参入障壁が高い中、すでにルートを持っているおやつカンパニーから出しているからこそ、駄菓子売り場で売り続けられるのである。
そして、何よりとんこつカップ麺のイメージのど真ん中を捉えた美味しさが特徴的で、かつ縮れたフライ麺でカップ麺ならではのスナック感もあり、駄菓子にしては本格的で、カップ麺にしては軽いという独自の立ち位置を確立している。
28年間名前のなかったブタのキャラクターは2021年にTwitterで投票が行われ、「ブタメンくん」「ブースケ」「ブタノスケ」「ブタッピー」の4つの候補から名前が「ブタメンくん」に決定。関連グッズを発売してほしいという要望が増え、SNS上でも可愛いと評判になった。
カップ麺売り場は次々と新作が出てきて、レッドオーシャン化している中、駄菓子売り場にあるカップ麺は「ブタメン」一強。これはマーケティング戦略的にもなかなか参考になる事例だろう。
※写真はすべて筆者による撮影
【関連記事:「『台湾ラーメン』味仙 今池本店会長の郭明優さんが死去 『味仙』が店ごとに味が違う秘密とは?」】