おいしいパンに行列が絶えない人気店チクテベーカリー、キオスクをオープン
「パン」とひとことで言ってもいろいろあるが、近年の小売店のパンを見ていると、原材料はもちろん小麦の銘柄や、使われている野菜の生産者の名前などが提示されていることがめずらしくなくなった。
東京の郊外、八王子は南大沢の商店街にあるチクテベーカリーは20年前からそのように顔の見えるつくり手との関係性を大切にしているベーカリーだ。
小麦の味わいを満喫できるハード系のパンを中心に、季節の野菜を豪快に使ったお総菜パンやあんバターサンドにも人気がある。南大沢三丁目の商店街に移ってきてからは今年で10年。パンを買う老若男女の行列が途絶えることがない。このベーカリーが2023年9月18日、すぐ隣の建物の一角に売店「cicoute kiosque(チクテキオスク)」を出す。別館のように考えたらいいだろう。
隣の建物はもとクリーニング店で、その前は銀行だったことからその名も「(BANK)」(東京都八王子市南大沢3-9コーシャハイム南大沢0-6号室)と呼ばれる。衣食住の複合スペースで、チクテベーカリーはこの建物を設計したコムレール一級建築士事務所からの誘いを受けてcicoute kiosqueを出店することになった。
普段からパンまわりのチーズやワイン、野菜などの農産物や肉加工品にもつくり手や販売者の顔や想いの見えるものをセレクトしているチクテベーカリーの北村千里さんはそこで、ベーカリーの通常営業では紹介しきれないものを提案していこうと考えており、cicoute kiosqueでは本店で販売しているものとは違う種類のパンやお菓子、そしてコーヒー豆、チーズ、シャルキュトリー(肉加工品)、コンフィチュール(ジャム)、生産者直送の野菜や米、小麦、豆類、そしてリネンのクロスやカトラリーなどのクラフトの販売が予定されている。追って自然派ワインも並ぶ予定だ。
また、北村さんはそこを「スモールスタートの場」とも考えていて、これから独立して巣立っていく予定の従業員たちのオリジナルブランドのパンやお菓子を日替わりで販売する計画がある。さらにシェフの気まぐれメニュー的に、北村さん自身の試作も並ぶ予定だ。
「これからパンもお店も空間も人も成長していけるよう、あたたかく見守っていただけたらと思います」北村さんは言う。
9月10日のプレオープンイベントではcicoute BARと称して、今後販売する予定の食材を使用したパンの盛り合わせプレートやサンドイッチのメニューを販売した。今後も、飲食店ではないので、店内で飲食をすることはできないが、近隣の緑豊かな公園やベンチでそれらを楽しむことができる。
(BANK)には、「今あるものに新たな価値観、視点を生み出すいろいろなものごとをクリエイターたちが提案する場所」というコンセプトがあり、cicoute kiosqueの他には、バッグや革小物の「am &すずき みき」、オーダーメイド家具の「hyakka」などが出店する。
店と店の間に境目はなく、b(L)ankと呼ばれる何もないスペースがその間にあって風通しがよく、ギャラリーなど多目的な用途に使えるようになっている。
9月18日オープン後の各店の営業詳細はSNSにて確認できる。
ものには必ずつくる人がいて、想いがある。それを意識することは、高い安いだけではないものの価値に気がつくことであり、買うという行為は投票行為になるかもしれない。
ベーカリーでパンを買い(BANK)のcicoute kiosqueにはしごすれば、パンから広がる暮らしの潤いのようなものを体感できるだろう。
チクテベーカリーファンにはたまらない21年目が始まった。