超人気「アマムダコタン」「アイムドーナツ?」の仕掛け人、東京駅のクレープ店「SOBAP」を監修
エキナカにいながらにして、有名店や人気シェフ監修の店でちょっといい買い物ができる時代、またひとつ行列必至の店が誕生した。2024年2月7日、JR東京駅改札内エキナカ商業施設グランスタ東京、東京駅の丸の内北口改札から入ってすぐのところにオープンしたクレープ店「SOBAP(ソバープ)」だ。経営しているのは、「八天堂」「MOGRA BREAD」などを運営する生産者直売のれん会。
注目したいのはメニュー開発や店舗・パッケージデザインなどブランドを監修しているのが福岡出身のヒットの仕掛け人、東京では超人気ベーカリー「アマムダコタン」「ダコー」、超人気ドーナツ店「アイムドーナツ?」を経営する料理人の平子良太さん(株式会社ヒラコンシェ)というところ。今回はそば粉のクレープ店で、平子さんが手がけるとなると、あなたや私の思い浮かべる「そば粉のクレープ」のイメージの斜め上をゆく新しいものになる。
まず、その大きさというか小ささ。手のひらサイズのクレープ(この店では「ソバープ」と呼ぶ)が18種類、専用スタンドに立ててある。スイーツ系は「カスタード」「シュガーバター」「しそベリーレアチーズ」「季節のフルーツ」「プリン」「塩キャラメルカマンベール」「あんバタークリーム」「ピスタチオクリーム」「チョコクリーム」。お惣菜系は「プロシュートケール」「バンバンジー」「いか明太トマト」「パルミジャーノバター」「ニース風サラダ」「フルーツカプレーゼ」「タンドリーチキン」「ローストオニオンツナ」「春野菜のミモザ風」と、半分がお惣菜系。甘くないお惣菜系に合わせるために、そば粉を使う必要があった。「でもガレットではなく、あくまでクレープだから『ソバープ』になりました」と平子さんは言う。これらがセット(1800円〜3770円)や単品(税込290円〜580円)で買える。
楽しさの一つは、選ぶ行為にある。あえて小さめサイズでいろいろ選べるようにしているのは、昨年桜新町にオープンしたベーカリー「ダコー」にも共通する。素材はほぼ自家製というところも共通点だ。エキナカの店舗には卵など素材の扱いに街中の店舗よりも厳しい制約があるが、それをクリアする素材で柔軟に対応、マヨネーズから自家製をつらぬく。
そうやってつくられたソバープは、一皿の料理やデザートのような満足感がある。野菜のパリッとしたフレッシュさを味わえる「プロシュートケール」は前菜のようだし、紫蘇の花の香りから始まり、ふわふわのレアチーズムースと甘酸っぱいフランボワーズの果肉、その先にカスタードと生クリームを合わせたディプロマクリームと多層構造で楽しませてくれる「しそベリーレアチーズ」はデザートの一皿のようだ。ファストフードではない。こうしたことは平子さんが料理人だということに起因するのだろう。
料理人は味や食感のバランスをデザインする。この店はテイクアウト専門店で、その場で食べるようになっていない。賞味期限はケーキなどの生菓子程度。そのため食感を重視する平子さんはソバープの中にいくつかの仕掛けをしている。例えばクラッシュした極細グリッシーニやメレンゲ。食べ進めるうちにその中に仕込まれたクリスピーな食感に「!」となるかもしれない。また、複数個の持ち歩きのために用意されている特製ボックスは、引き出し状になっていて斬新。新幹線などで食べる旅のお供としても新しくて楽しい経験になるに違いない。