Yahoo!ニュース

東京都「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」 早期終了の可能性は?(追記:3月23日終了)

山口健太ITジャーナリスト
QR決済で最大10%のポイント還元(東京都のWebサイトより、筆者作成)

2月2日、東京都が3月に実施するQRコード決済で最大10%のポイントを還元するキャンペーンを正式に発表しました。

他の自治体と同様、ポイント還元の予算を使い切ると早期終了する場合がある点には注意が必要です。

「物価高騰」対策にポイント還元

東京都が実施するキャンペーンは、3月11日から3月31日までの期間中、「au PAY」「d払い」「PayPay」「楽天ペイ」の4つのサービスごとに最大3000円、合計で最大1万2000円分のポイントを還元するものです。

ポイントの原資は、物価高騰対策として地方自治体に交付される臨時交付金です。東京都では100億円の予算から事務費を除いた91億円をポイントとして還元すると報じられています。

こうした還元策は全国各地の自治体で実績があり、東京都内では台東区福生市で実施中となっています。そのため、もう仕組みは分かっているという人も多いかと思いますが、大きく報道されたことで、初めて知ったという人も存在するようです。

基本的な点をおさらいすると、この手のキャンペーンではQRコード決済を用いて所定の条件に従って対象店舗で買い物をすることで、ポイントが還元されます。申し込みなどは不要です。

なぜQR決済かといえば、ポイント還元の仕組みが整っていることが理由の1つに挙げられます。アプリによっては支払いと同時に付与されたポイントを確認できるため、キャンペーンとの相性は抜群です。

海の幸キャンペーンを利用したときの画面。支払いと同時に付与されたポイントを確認できる(d払いの画面より、筆者作成)
海の幸キャンペーンを利用したときの画面。支払いと同時に付与されたポイントを確認できる(d払いの画面より、筆者作成)

対応するQR決済サービスは、各自治体が地域での普及状況などを鑑みて選定しているようです。東京都ではシェアの大きい4つに対応。現在では、どのサービスも携帯キャリアの回線契約などに関係なく誰でも利用できます。

東京都が実施するキャンペーンですが、東京都に住んでいない人も対象です。近隣の県から通勤・通学している人、買い物客や観光客にも利用するチャンスがあります。

注意点として、ポイント還元を受けられる支払い手段はサービスによって異なります。たとえばPayPayの場合、PayPayクレジットやPayPay残高、PayPayポイントなどは対象、PayPay商品券や他社クレカは対象外となっています。

ポイント還元の対象となる支払い手段はサービスによって異なる(PayPayのWebサイトより)
ポイント還元の対象となる支払い手段はサービスによって異なる(PayPayのWebサイトより)

最大10%という還元率については、自治体によっては20%、30%を還元するところも珍しくないことを考えると、それほど大きなものではありません。

最大1万2000円分のポイントを得るには、3月11日から3月31日までに4種類のQR決済で3万円ずつ、合計12万円分の買い物をする必要があります。無理に満額を狙う必要はないでしょう。

対象店舗は、すでにQR決済を導入済みの店舗であれば、一部の業種を除いて自動的にキャンペーン対象になると説明されています。何らかの理由で参加したくない店舗のみ、不参加の申請をする方式です。

そのため、QR決済が使える多くの店舗が対象になると考えられます。詳細は店頭やレジにポスターが掲示される予定です。

対象店舗にはポスターが掲示される予定。写真は東京都立川市が実施したキャンペーンのもの(筆者撮影)
対象店舗にはポスターが掲示される予定。写真は東京都立川市が実施したキャンペーンのもの(筆者撮影)

3月11日の開始に向けて、QR決済の新規導入も進みそうです。海の幸キャンペーンの時点では、4種類のサービスの中でPayPayの導入率が突出していました。引き続き、PayPay以外の3つを導入する動きが広がるか注目といえます。

また、今回のキャンペーンで91億円分のポイントを受け取った消費者は、このポイントを消費するためにQR決済を使ってさらに別の買い物をすることが期待されます。

ポイントを得ることでQR決済におトクなイメージを抱く人が増えたり、アプリをホーム画面などの便利な場所に置く人が増えたりすることで、QR決済の利用が伸び続ける可能性があります。

追記:
2024年3月11日、「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」が始まりました。
スマホ決済サービスごとに専用のページが用意されています。コンビニについては対象外となっている場合があるようです。利用する前に利用条件や対象店舗を確認することをおすすめします。

■au PAY
https://media.aupay.wallet.auone.jp/dominant/lp/202403_tokyo_pref/

■d払い
https://service.smt.docomo.ne.jp/keitai_payment/campaign/dpay_ouen/tokyo-city/

■PayPay
https://paypay.ne.jp/event/tokyo-pref-20240311/

■楽天ペイ
https://pay.rakuten.co.jp/campaign/2024/0311-tokyo/

早期終了の可能性は?

キャンペーンの期間は3月31日までとなっているものの、予算額に達する見込みとなった場合は早期終了する予定としています。

最近の事例では、東京都港区のキャンペーンは12月1日から1月31日までの予定でしたが、予想を上回る利用により1月12日に早期終了しています。

果たして何日ぐらい持ちこたえるのか、ざっくり計算してみましょう。PayPayの決済回数は2023年度上期に31億回とのことから、1日に1700万回。東京都の昼間人口(1675万人)から、単純な人口比でも都内で1日に226万回は使われていると考えられます。

PayPayが開示している決済取扱高(GMV)と決済回数から、PayPayの1回あたりの決済金額は1500円程度とみられています。このことから、PayPayだけで1日に3億4000万円分のポイントが還元される計算になります。

PayPay以外の3つのサービスについては、MMD研究所の調査から、3つ合わせてPayPayと同じくらい使われていると仮定すると1日のポイント還元額は合計で6億8000万円分。91億円の予算は開始から14日目に使い果たすでしょう。

さらに、普段はQR決済を使わない人が店頭の案内などを見て参加することも考えられるため、もっと早く終わったとしても不思議ではありません。買いたい物がある人は早めに行動したほうがよさそうです。

追記:
3月19日、「ポイント還元額が予算額に達する見込みのため、本キャンペーンは3月23日(土)23時59分に早期終了する」との発表がありました。
https://kurashisupport.metro.tokyo.lg.jp/

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

山口健太の最近の記事