シリア北部での爆発でトルコ軍兵士死傷、米主導の有志連合による南東部の爆撃でイラク人民動員隊26人死亡
戦闘が収束したイドリブ県で反体制派の暴力激化
英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、5日のロシア・トルコ首脳会談で合意された停戦が発効(5日深夜)してから7日目となる3月12日、シリア・ロシア軍、トルコ軍の爆撃は確認されなかった。
しかし、戦闘が収束したイドリブ県のサルマダー市ではシリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が、検問所で地元住民に暴行を働いたのをきっかけに、地元の武装集団がシャーム解放機構を襲撃し、交戦となった。
また、同市では、指名手配者の捜索を行うシャーム解放機構に地元住民が抵抗し、戦闘となった。
一連の戦闘で女性1人と女児1人が負傷した。
一方、サルキーン市では、シャーム軍団が武装集団に撃たれて死亡した。
シャーム軍団は、トルコの支援を受けるシリア・ムスリム同胞団系の武装集団で、「決戦」作戦司令室においてシャーム解放機構と連携する国民解放戦線(国民軍)を主導している。
トルコ占領地での爆発でトルコ軍兵士が死傷
国営のシリア・アラブ通信(SANA)は、ハサカ県タッル・ハラフ村で12日、車に仕掛けられていた爆弾が爆発し、トルコ軍兵士4人が死亡、8人が負傷したと伝えた。
爆発はトルコ軍の検問所脇で発生、死傷者はトルコ領内に搬送されたという。
これに関して、反体制系サイトのEldorarは、トルコ軍兵士1人と、同軍の支援を受ける国民軍に所属する憲兵隊員と「自由シリア警察」の隊員3人が死亡したと伝えた。
また、シリア人権監視団は、トルコ軍ではなく、国民軍の検問所が狙われ、国民軍戦闘員2人が死亡、8人が負傷したと発表した。
タッル・ハラフ村は長らく、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局の支配下にあったが、2019年10月にトルコ軍が侵攻し(「平和の泉」作戦)、ラッカ県タッル・アブヤド市一帯、ハサカ県ラアス・アイン市一帯などとともに占領下に置いていた。
米主導の有志連合がダイル・ザウル県を爆撃し、イラク人民動員隊26人死亡
ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団やEldorarなどによると、11日深夜に、ブーカマール市南のヒスバーン地区にあるイラク人民動員隊の拠点複数カ所が爆撃を受け、少なくとも26人が死亡、15人が負傷した。
AFPによると、爆撃を行ったのは米軍主導の有志連合。
この爆撃と前後して、ブーカマール市にある人民防衛隊の拠点もミサイル攻撃を受け、一連の攻撃による犠牲者のなかには、「イマーム・アリー基地」(イマーム・アリー・コンパウンド)と呼ばれるシリア北東部の「イランの民兵」の基地の監督者の一人とされるウィサーム・トゥファイリー氏も含まれているという。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)