「血塗られた技術」川崎市が売り込み加担―イスラエル軍事見本市、とどろきアリーナで開催予定
神奈川県川崎市の市営スポーツ施設「とどろきアリーナ」で、今年8月末、イスラエルの防衛&国土安全保障展「ISDEF JAPAN」が開催されることが、論議を呼んでいる。
今年5月、パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍がデモ隊に実弾射撃、同14日だけで58人を殺害、2700人以上を負傷させる等から、イスラエルは国際社会から強い批判を浴びている。
川崎市側は今回のISDEF JAPANへ市の施設の使用許可を出したことに関し、「条例上問題ない」とするが、川崎市民や武器輸出に反対するNGO側は反発。使用許可取り消しのネット署名も始まった。
〇公共施設での「軍事見本市」に批判
イスラエルの防衛&国土安全保障展「ISDEF」は、その公式サイトによれば2007年から昨年までに8回、イスラエルの商業都市テルアビブ等で開催されている。同国最大規模の軍事・セキュリティー関連の見本市であり、関連企業は勿論、世界各国の「意志決定者」、つまり、防衛担当の政府関係者も訪れ、商談を行うというものだ。「ISDEF Japan」は8月29、30日の日程で、とどろきアリーナで開催される予定で、既に関連の告知も始まっている。
これに対し、今月17日、「川崎でのイスラエル軍事エキスポに反対する会」や「武器輸出反対ネットワーク」(NAJAT)など市民団体が、とどろきアリーナを所管する川崎市中原区地域振興課や、指定管理者のコナミスポーツクラブ、東急コミュニティー、川崎フロンターレ、川崎市スポーツ協会に、ISDEF JAPANへのアリーナ使用許可を取り消すことを要請。
また、そもそもISDEF JAPANにアリーナ使用を許可した経緯の説明を求める公開質問状を提出した(関連情報)。NAJAT代表の杉原浩司氏は「戦争犯罪、人権侵害を繰り返すイスラエルに対するBDS(ボイコット、投資引き揚げ、経済制裁)が国際的な広がりを見せている中、イスラエルの軍事見本市に公共施設を貸し出すことは外交問題だ」と川崎市の姿勢を強く批判する。
〇民間人や医療従事者殺害も「問題なし」の川崎市
一方、川崎市の中原区地域振興課は、公開質問状に対し、23日に回答(関連情報)。今年4月、ISDEF側の開催草案を受けた指定管理者から相談を受けた同課は、市の条例でのアリーナ使用制限に抵触するものではなく、問題ないとしたと回答。
同条例14条では、「指定管理者が利用を不適当と認めるとき」場合には、使用許可を出さないとしている。では、今年5月、ガザへのデモに対する実弾射撃で、イスラエルへの国際的な批判が高まっている中、イスラエルの軍事見本市に公共の施設を貸し出すことを何を持って「適当」と判断したのか。中原区地域振興課に筆者が確認したところ、
という。
今年5月14日のガザでのイスラエル軍による大量殺傷について、その翌日に召集された国連安全保障理事会の緊急会合では、理事国のうち14カ国が「非武装の市民に対する過大な武力行使」を批判。同6月13日には、国連総会で、パレスチナ人に対する保護とイスラエル軍のパレスチナ民間人に対する「無差別で不均衡かつ過剰な」武力行使に対する非難決議が、日本を含む120カ国の賛成で採択されている。
また、同6月1日、イスラエル軍が、ガザでのデモで負傷者への救護活動をしていた21歳の女性看護師を銃撃・殺害。
中東諸国21カ国と1地域からなるアラブ連盟は一斉にイスラエルを批判。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連人道問題調整事務所(OCHA)、世界保健機構(WHO)の事務局長らも、その憤りを表明した。
〇許可取り消し求めるネット署名始まる
中原区地域振興課は、前述の公開質問状に対し、「(武器などの)関連装備につきましても、危険物に該当するものであれば持ち込みは認めるものではありません」と弁明しているが、市民らは、
として、アリーナ使用許可取り消しを求める署名をネットで集め、川崎市に提出するという(関連情報)。中原区地域振興課は勿論、福田紀彦・川崎市長の姿勢も問われることになりそうだ。
(了)