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大谷翔平からメジャーリーグを観ようと思っている人へ【その5】OPSについて

宇根夏樹ベースボール・ライター
イチローのMLBシーズン最高OPSは2004年の.869 Sep 26,2004(写真:ロイター/アフロ)

 OPS(オーピーエス)はOn-base Plus Slugging(オンベース・プラス・スラッギング)の頭文字をとったものだ。名前のとおり、出塁率と長打率を足す。

 例えば、イチローは昨シーズン、出塁率.318、長打率.332、OPS.649を記録した。.318+.332=.650だが、小数点第4位を四捨五入した出塁率と長打率を足すのではなく、足した後に四捨五入して.649としている。これは、どちらの数値でも気にする必要はない。打率が.300なら「10打数当たり3安打」であるのと違い、OPSは具体的な内容を示してはいない。

 OPSという指標の強みは、その数値だけで、タイプの異なる打者を比較できる点にある。打撃三冠(打率、本塁打、打点)にしても、スラッシュライン(打率/出塁率/長打率。スラッシュで仕切って表記することからこう呼ぶ)にしても、数値は3つずつだ。

 見方としては、少し乱暴なくらいざっくり言うと、OPS.900以上=◎、OPS.800以上=○、OPS.600以下=×。過去3年の人数の分布は、下の表のようになっている(シーズン502打席以上の選手)。平均OPSは、2015年が.775、2016年が.801、2017年は.807。シーズン502打席未満の選手も含めたメジャーリーグ全体の平均OPSは、2015年が.721、2016年が.739、2017年は.750だ。

ベースボール・リファレンスのデータを基に筆者作成
ベースボール・リファレンスのデータを基に筆者作成

 OPSは便利ではあるものの、出塁率と長打率が同じ比重でいいのかなど、疑問点あるいは欠点も持ち合わせる。そのため、OPSの登場後も、打撃の総合指標はいくつも出ている。

 にもかかわらず、OPSは廃れていない。理由の一つは、算出がそう難しくないことだろう。出塁率は「(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)」、長打率は「塁打÷打数」か「(単打+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4)÷打数」で計算できる。算出に必要な数値は、どれも基本的なものばかりだ。

 また、OPSと新たな打撃の総合指標が示す結果は、それほど乖離していない。下の表は、昨シーズンのトップ5とワースト5の選手を、それぞれの指標ごとに並べたものだ。

ベースボール・リファレンスとファングラフスのデータを基に筆者作成
ベースボール・リファレンスとファングラフスのデータを基に筆者作成

 どの指標もトップ3は同じ選手で、順位もまったく同じ。それ以外についても、順位に多少の違いこそあれ、顔ぶれはほとんど変わらない。ちなみに、ホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)のOPSは9位、ルーグネッド・オドーア(テキサス・レンジャーズ)は139位だった。

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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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