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スウェーデンからグレタさんがノルウェー先住民の闘いに駆け付ける

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
首都オスロでの市民的不服従にグレタさんも応援に来た 筆者撮影

ノルウェー政府による風力発電所の建設は、フォーセン地域でトナカイ放牧をする先住民サーミ人の人権を侵害しているとノルウェー最高裁が判決を下して、事態が改善されないまま2年目に突入した。

首都オスロにはスウェーデン・フィンランドからサーミ人、デンマーク・グリーンランドからは先住民イヌイット人が駆け付け、いくつもの環境団体、政党青年部、市民が共に抗議活動に参加している。

抗議2日目にはスウェーデンの気候活動家であるグレタ・トゥンベリさんも応援に駆け付けた。

草の根団体「フライデー・フォー・フューチャー 」のスウェーデンの仲間たちとともにノルウェーに駆け付けたグレタさん。サーミの国旗の前に座り込む 筆者撮影
草の根団体「フライデー・フォー・フューチャー 」のスウェーデンの仲間たちとともにノルウェーに駆け付けたグレタさん。サーミの国旗の前に座り込む 筆者撮影

抗議活動に参加する市民は北欧各国とノルウェー各地から集まっているために、数百人の規模になる。そのため抗議場所も状況に応じて変えて分散している。この日のメインの場所となったのはノルウェー政府が100%出資する欧州最大の再生可能エネルギー供給会社「スタットクラフト」(Statkraft)だ。同社はフォーセン地域での風車を操業している。

同社の本社は首都オスロにあり、建物のいくつもの出入口前に市民らは座り込み、鎖で自らをつなぐ「市民的不服従」で封鎖した。この日、社員は入社できないために自宅で働いている。

首都オスロにあるスタットクラフト本社
首都オスロにあるスタットクラフト本社

市民らは「企業はフォーセンの風車から違法なエネルギーを生産して莫大な利益を得ており、「収入の大部分はスタットクラフトを通じて国に送金されている」「人権侵害で大儲けしている企業も、その責任を問われなければならない」として、「企業が違法操業で得た資金をすべて、フォーセンの地域の復旧と返還のために確保する」ことを要求している。

再生可能エネルギーを否定しているわけではない

社員が入社できないようにドア前を封鎖。布のメッセージは「先住民の権利は選択可能ではない」 筆者撮影
社員が入社できないようにドア前を封鎖。布のメッセージは「先住民の権利は選択可能ではない」 筆者撮影

ノルウェーでのこの騒ぎを聞いた時に、「若い人が風力発電から受ける恩恵を理解していないのでは」と感じる人もいるかもしれない。だが、事態はそう単純ではない。抗議参加者の中に、「気候問題を気にせず」「再生可能エネルギーを否定している」人は恐らくひとりもいないだろう。問題は植民地問題や先住民の権利の認識、政府のコミュニケーション不足にあると筆者は感じている。

サーミ人の移動式住居ラヴヴをスタットクラフト前に設置して座り込む若者たち 筆者撮影
サーミ人の移動式住居ラヴヴをスタットクラフト前に設置して座り込む若者たち 筆者撮影

気候危機を解決するためには再生可能エネルギーが必要だが、社会全体が作り出した気候変動に直面して、先住民族は十分な犠牲を払ってきた。人権を侵害する再生可能エネルギーはありえない。

スタットクラフトをはじめとする所有者たちは、その責任を負わなければならない。これは先住民の権利を侵害することなく、グリーンエネルギーが将来正しい方法で開発されるために極めて重要なことである。

基本的人権のために闘うサーミの若者たちと連帯しよう。この闘いは何世紀にもわたって続いており、サーミの植民地化がいまだに続いていることを認めることはできない。

ノルウェー自然と青年団体の声明

筆者撮影
筆者撮影

グレタさんの登場に多くのノルウェーや北欧メディアが彼女にマイクを向けていた。グレタさんも同様に「再生可能エネルギーを否定しているわけではない」「サーミ人の人権を侵害して風車を所有する企業は、自らを『グリーンだ』(環境に優しい)と主張することはできない、それはグリーンウォッシュだ」と主張している。

グレタさんが来るとなるとノルウェーや北欧のメディアも大きく報道する。ノルウェーのフォーセン地域の騒動が国際的に知られるようになったのはグレタ効果だとされている 筆者撮影
グレタさんが来るとなるとノルウェーや北欧のメディアも大きく報道する。ノルウェーのフォーセン地域の騒動が国際的に知られるようになったのはグレタ効果だとされている 筆者撮影

ノルウェーでは今年すでに大きな抗議活動が一度起こっており、グレタさんはその時も応援に駆け付けた。

スタットクラフト前に設置されたラブヴォ 筆者撮影
スタットクラフト前に設置されたラブヴォ 筆者撮影

スタットクラフトの社名が刻まれたメインエントランス前にはトナカイの角がかかげられる 筆者撮影
スタットクラフトの社名が刻まれたメインエントランス前にはトナカイの角がかかげられる 筆者撮影

筆者撮影
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筆者撮影
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筆者撮影
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筆者撮影
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現場では警察が様子を見守っており、まだ抗議活動者たちは撤去はされていない 筆者撮影
現場では警察が様子を見守っており、まだ抗議活動者たちは撤去はされていない 筆者撮影

筆者撮影
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筆者撮影
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サーミ人の若者の中心人物であるエッラ・マリエ・ハエッタ・イーサクセンさん 筆者撮影
サーミ人の若者の中心人物であるエッラ・マリエ・ハエッタ・イーサクセンさん 筆者撮影

仲間と共に抗議の声をあげるグレタさん 筆者撮影
仲間と共に抗議の声をあげるグレタさん 筆者撮影

筆者撮影
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Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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