Apple 19%減、ファーウェイ猛追 待たれるiPhoneのAI機能、6月10日発表か
香港の調査会社カウンターポイントリサーチがこのほど公表したリポートによると、米アップルのスマートフォン「iPhone」の中国販売が大幅に減少した。これは中国・華為技術(ファーウェイ)との激しい競争が原因とみられる。
華為、Appleとの差わずか0.2ポイント
2024年1〜3月期の中国におけるiPhoneの販売台数は前年同期比19.1%減少した。これに対し、ファーウェイは69.7%増加した。アップルの中国でのシェアは1年前に19.7%あり、首位だったが、この1〜3月期は15.7%に低下し、3位に後退した。
一方、ファーウェイの1年前のシェアはわずか9.3%だった。24年1〜3月期は15.5%となり、4位に浮上した。その差はわずか0.2ポイントである。ファーウェイが急速な勢いでアップルを追っている状況が示された。
カウンターポイントによると、ファーウェイ復活の原動力は、同社が23年に発売したスマホ「Mate 60 Pro」だという。
華為、米国の制裁下も国産半導体で復活
ファーウェイはかつて、世界スマホ出荷台数で世界1位に浮上したこともあった。だが、19年に当時のトランプ米政権が同社を安全保障上の脅威とし、同社に対する禁輸措置を講じた。同社は半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホの生産が減少したほか、低価格スマホ事業のHONOR(オナー)を売却せざるを得なくなった。ファーウェイの中国におけるスマホシェアは20年半ばに29%あったが、2年後にわずか7%に低下した。
しかし、そうした中でも同社は半導体などの部品の中国国内開発を進めてきたとみられる。23年8月には、5G(第5世代移動通信システム)への接続機能と、7ナノメートル(nm)技術で製造された半導体を採用したMate 60 Proを市場投入し、中国の消費者を引き付けた。
これに対し、中国におけるiPhoneの需要は低迷しているという。カウンターポイントの上級リサーチアナリストであるイバン・ラム氏によれば、「ファーウェイの復活により、アップルは高価格帯端末市場で直接的な影響を受け、四半期を通して販売が低迷した」(同)。加えて、iPhoneの買い替え需要は過去数年に比べて幾分鈍いという。
24年の展望、Appleの回復とAI端末の普及
23年1〜3月期における中国のスマホ販売台数は、前年同期比1.5%増となり、2四半期連続でプラス成長した。メーカー別販売台数は、①中国vivo(ビボ)、②オナー、③アップル、④ファーウェイ、⑤中国OPPO(オッポ)、⑥中国・小米(シャオミ)の順だった。
カウンターポイントは、この期間の中国スマホ市場を「過去最も競争が激しい四半期」と表現している。首位と第6位のシェアの差がわずか2.8ポイントだったからだ。
一方 24年通年の中国スマホ市場は、1桁台前半の成長が見込まれるとしている。中国メーカーは自社の旗艦モデルに生成AI(人工知能)の機能を導入し始めており、これらが消費者に受け入れられるとみる。今後各社がAIの新たなアプリケーションを統合することで、中価格帯端末にも広がっていくと予測する。
iPhoneにも回復の可能性があるという。24年4〜6月期には、新しいカラーバリエーション製品の投入と、積極的な販売施策が講じられる可能性がある。これらが奏功すればアップルは再びプラス成長軌道に戻ると、分析する。
24年6月10日(日本時間11日)に開催される開発者会議「WWDC」で発表されるであろうAI機能も注目される。「長期的には、AI機能がアップルの業績を大きく左右する可能性がある」とカウンターポイントは指摘する。
筆者からの補足コメント:
これに先立ち、米調査会社のIDCが公表した、世界スマホ市場リポートでもアップルは芳しくありませんでした。24年1〜3月期のメーカー別世界出荷台数は、韓国サムスン電子が6010万台でした。前年同期比0.7%減少したものの、24年1月に発売した「Galaxy S24」シリーズが減少幅を小幅にとどめました。これに伴いサムスン電子は2四半期ぶりに首位に返り咲きました。
アップルは、23年に年間出荷台数で初の首位に立ち、同年10〜12月も首位でしたが、1〜3月は9.6%減と大きく落ち込みました。出荷台数は5010万台となり、2位に転落。IDCも、「アップルは中国販売で苦戦している」と指摘しています。
- (本コラム記事は「JBpress」2024年5月3日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)