アメリカが中距離弾道ミサイルを試射、INF条約失効後初
12月12日午前8時30分(太平洋標準時)、アメリカ軍がカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地から地上発射型の中距離弾道ミサイルを太平洋に向けて発射しました。ロシアのINF条約違反ミサイル「SSC-8」を発端とする8月2日のINF条約失効を受けて、アメリカ軍が8月18日に試射した地上発射型トマホーク巡航ミサイルに続く実験です。アメリカによる地上発射型の中距離弾道ミサイル発射はINF条約後、初となります。
- U.S. Air Force Conducts Flight Test of New Ground-Launched Ballistic Missile from Vandenberg AFB
INF条約が禁止していた地上発射型ミサイルは射程500~5500kmの範囲でしたが、アメリカ国防総省はこの新型中距離弾道ミサイルの射程を500km以上としか発表していません。核弾頭ではない通常弾頭の中距離弾道ミサイルとしか発表されておらず、射程や大きさなどは現時点ではまだ詳細は不明です。
これは試験用ミサイルであり実戦用の発射車両は用意されておらず、他に対比できる物が映っていないので大きさの推測はできませんが、直径と全長の比率は細長い弾道ミサイルです。おそらくですが実戦用の発射車両に2発搭載する為に直径を抑えて細長くしているのではと推測できます。
映像の噴射炎から固体燃料ロケットモーターが使用されていることがわかります。まだ確認はできませんが中距離弾道ミサイルであるならばロケット推進部分は二段式、それに加えて弾頭は分離式の構成である可能性が高いでしょう。映像の解像度が低いので分かり難いですが、分離式の弾頭部に小さな終末誘導用の操舵翼が付いているように見えます。そして一段目の最後部にも加速上昇時に使用する大きめの操舵翼が付いています。
INF条約より前にアメリカ陸軍が装備していたパーシング2中距離弾道ミサイルと比較すると、構成は似ていますが細長くなっていることが分かります。なおこの比較写真は縮尺が揃っていないので形状比較はできますが大きさ比較はできません。
8月18日に試射した地上発射型トマホーク巡航ミサイルは既存の部品で構成されているので作戦能力の獲得は短期間で可能ですが、今回12月12日に試射した新型中距離弾道ミサイルは新規開発になるので配備が可能になるのは早くとも5年後以降となる予定です。その頃には設計の改良を重ねて形状が今回の試験用ミサイルから大きく変化している可能性も有り得ます。
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