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【速報】コロナ禍で子どものネット依存加速(コロナ前後の2万人調査から)

竹内和雄兵庫県立大学環境人間学部教授
(写真:アフロ)

子どもたちのインターネット依存が大幅に増加

新型コロナ休業中、子どもたちのネット利用は深刻でした。他にやることがないので、しょうがない部分も多かったのですが、ネット依存等、心配する大人も多かったのですが、興味深い調査結果がでました。緊急報告します。

このグラフは、大阪府の子どもたちが自分たちのネット利用について考える「大阪府スマホサミット」でとったものです。2019年と2020年で大阪府下で、同じデータでとったアンケートですので、信ぴょう性が高いです。

アンケートは、大阪スマホサミットの開催にあたり、大阪府青少年課の求めに応じて学校単位で取り組んでくれたものです。有効回答数は、2019年19848人、2020年27118人です。全く同じ対象ではありませんが、これだけ多くの児童生徒が取り組んでくれたアンケートですので、いろいろなことがわかります。今回は時間がないので、速報値として掲載します。

まず、アンケートの文言は、キンバリー・ヤング氏が作成した世界的に認められているものを使っています。久里浜医療センター等でも活用しているもので、最も広く使われているものです。次の8つの質問のうち、5つに「はい」と答えるものをネット依存としています。

①ネットに夢中になっていると感じる

②予定より長時間使用する

③制限しようとしてうまくいかなかったことがある

④トラブルや嫌な気持ちから逃げるために使用する

⑤使用しないといらいらする、落ち着かない

⑥熱中を隠すために家族らに嘘をついたことがある

⑦使用時間がだんだん長くなる

⑧ネットのせいで人間関係を台無しにしたことがある

表中の赤線、2018年中学生12.4%、高校生16.0%は、厚生労働省の研究班の調査結果で、当時「全国中高生のネット依存、推計93万人」と話題になりました。https://www.sankei.com/life/news/180831/lif1808310029-n1.html

2018年厚生労働省の調査では、中高生が対象でしたが、今回は大阪の子どもたちの提案で、小学生も対象にして調査したところ、小学生の1割強がネット依存の疑いがあることがわかりました。

さらに2020年、深刻な状況がわかりました。小中高校、どの校種も前年を上回り、特に高校生は3割近くに増えています。

「ネット依存じゃない人の方がめずらしい」という子どもの声も

2020年12月6日に実施された「大阪府スマホサミット」や、12月13日にあった「スマホサミットinひょうご」で、中高生にこのグラフを示して意見を求めたところ、全員が「納得できる数字」と言います。中には「もっと多いと思う」「ネット依存じゃない人の方がめずらしい」という声まで聞かれました。

私は2012年頃から、全国各地でスマホサミットと称して、子どもたち自身がスマホやネットについて話し合う場面を学生たちと一緒にコーディネートしています。毎年30回程関わっていますが、コロナ禍以来、子どもたちの声に変化が出てきています。

A子 私たちだけじゃ限界

B子 自分ではやめられない

C男 大人と一緒に考えたい

D男 AIに負けてしまう

A子 大人に勝手に決められても反発しちゃう

C男 まず生徒会とかで話し合いたい

D男 授業で話し合うとか?

コロナ前は、「大人は知らないんだから黙っておいてほしい」等の声が多かったのですが、コロナ感染拡大後、明らかにその声が変化してきました。それは「自分たちもネット依存はダメだと思っていて、大人に協力してほしい」という声です。

話題に出たのはYouTubeの関連動画。興味がある動画が次々出てくるのでやめることができないそうです。「気づいたら朝ということもよくある」そうです。

中でも印象的だったのが、「お母さんは私に任せてくれてるけど、私はもう無理」「来年受験生だから深刻」等の声です。試されているのは、私たち大人です。

WHOが認定した病気「ゲーム障害」

2019年、WHO(世界保健機関)が「ゲーム障害」を病気に認定しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280950V20C19A5MM8000

診断基準を簡単に書くと

①自分でコントロールできない

②日常生活で他よりゲームを優先する

③生活に支障が出てもゲームをやりつづける  です。

さらに、このような状況が④1年続くことが診断基準です。

子どもが危機感を持っている今が正念場

コロナ禍で子どもたちがネットに依存しだしてもうすぐ1年。コロナ感染拡大による全国一斉臨時休校の3月がスタートだとしたら9か月が経過しました。もう待ったなし、今が正念場です。子どもたちはまだ危機感を持っています。そのうち諦めムードになってしまう可能性もあります。そうなると、この国の未来は深刻です。

マスコミや自治体等で、詳しく知りたい方は連絡ください。大人として何ができるか、まずは相談しましょう。

兵庫県立大学環境人間学部教授

生徒指導提要(改訂版)執筆。教育学博士。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より大学教員。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。2013年ウィーン大学客員研究員。

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