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グルメ新名所4施設3つの魅力 フォーシーズンズホテル東京大手町が9月1日に開業

東龍グルメジャーナリスト
フォーシーズンズホテル東京大手町/著者撮影

世界でも屈指のラグジュアリーホテル

新型コロナウイルスの感染が収束しない状況にあって、観光業が大きなダメージを受けています。観光地の飲食店や土産店はもちろんのこと、美術館や水族館、アクティビティを提供する企業、そしてホテルや旅館が大きな損害を被っているのです。

ホテルや旅館に関しては、リゾート地だけではなく都市部も大変な状況。特に訪日外国人が甚だしく減少しているので、休業したり、営業を縮小したりするホテルが少なくありません。

新しくオープンする予定だったホテルも、ほぼ全てが開業時期を延期しました。開業を延期したホテルは数多くありますが、中でも注目したいホテルがあります。

それは、2020年9月1日にオープンしたフォーシーズンズホテル東京大手町。

充実した料飲施設

フォーシーズンズホテル東京大手町のエントランス/著者撮影
フォーシーズンズホテル東京大手町のエントランス/著者撮影

フォーシーズンズホテルはカナダのオンタリオ州トロントに本部を置くラグジュアリーホテルで、日本での展開は次の通りです。

アジアで最初のホテルとして、1992年1月にフォーシーズンズホテル椿山荘東京(2013年1月1日から業務提携を解消し、現在はホテル椿山荘東京)が開業。その後フォーシーズンズホテル丸の内 東京が2002年10月15日に、フォーシーズンズホテル京都が2016年11月29日にオープンしました。

日本では既に有名なホテルですが、これまでオープンしたホテル以上に料飲施設が充実しているので、フォーシーズンズホテル東京大手町が改めて注目されているのです。

総料理長マルコ・リーヴァ氏/著者撮影
総料理長マルコ・リーヴァ氏/著者撮影

その耳目を集める料飲施設を率いるのは、総料理長であるマルコ・リーヴァ氏。世界各地のラグジュアリーホテルで腕をふるい、大阪の一流ホテルに在籍していたこともあります。

フォーシーズンズホテル東京大手町の料飲施設

  • THE LOUNGE(ザ ラウンジ)
  • PIGNETO(ピ二ェート)
  • est(エスト)
  • VIRTU(ヴェルテュ)

フォーシーズンズホテル東京大手町の料飲施設が擁するレストラン・バーを、詳しく紹介していきましょう。

「THE LOUNGE(ザ ラウンジ)」

アフタヌーンティー@THE LOUNGE/著者撮影
アフタヌーンティー@THE LOUNGE/著者撮影

「THE LOUNGE(ザ ラウンジ)」は、近くに皇居の緑、遠くに富士山を望める絶景ラウンジです。受賞歴のあるエグゼクティブペストリーシェフ青木裕介氏によるプティガトーやパフェ、アフタヌーンティーやハイティーも充実。

12種類の茶葉@THE LOUNGE/著者撮影
12種類の茶葉@THE LOUNGE/著者撮影

レジデントソムリエが伝統的な方法で淹れるお茶にも力を入れており、12種類もの茶葉サンプルから、ゲストが直に香りをとって選ぶこともできます。

ジャパニーズフレーバーを取り入れたカクテルも印象的です。「トロピカル」はジンをベースにして煎茶、タイム、ココナッツを取り合わせた、オリジナリティに溢れたカクテル。縁には、黒蜜が塗られてから抹茶パウダーがまぶされており、心地よい苦味のアクセントがあります。

カウンター@THE LOUNGE/著者撮影
カウンター@THE LOUNGE/著者撮影

ホテル直通エレベーターを上がって、最初に辿り着くのが「THE LOUNGE」。ホテルにとって非常に重要な料飲施設ですが、ゲストに大きなインパクトを与えることは確かでしょう。

「PIGNETO(ピ二ェート)」

内観@PIGNETO/著者撮影
内観@PIGNETO/著者撮影

「PIGNETO(ピ二ェート)」は「アボンダンツァ」=「豊かな人生」をテーマにし、リラックスして旬の食材を味わえるイタリアン。イタリア出身のリーヴァ総料理長が全体を監修します。

ダイニングのすぐ側にショーキッチンが設けられており、生ハムのカットやピザ窯の様子が見られるなど、活気と臨場感が溢れているのが特徴。料理人が腕をふるう勇姿を眺められるので躍動感があるでしょう。

シグネチャーディッシュといえるのが、ピッツァイオーロ(ピザ職人)が生地を粉からつくった「ブッラータ モッツァレラ ブッラータ トリュフ パルミジャーノ」。南イタリア プーリア州原産のフレッシュチーズ「ブッラータ」がたっぷりと用いられており、実にクリーミーです。

スペシャリテの「ガルガネッリ シチリアンペースト くるみ イチジク ブッラータ」@PIGNETO/著者撮影
スペシャリテの「ガルガネッリ シチリアンペースト くるみ イチジク ブッラータ」@PIGNETO/著者撮影

イタリアに古くから伝わる伝統のレシピを再現した「ガルガネッリ シチリアンペースト くるみ イチジク ブッラータ」もスペシャリテのひとつ。ショートパスタであるガルガネッリの香りと弾力が癖になります。

テラス@PIGNETO/著者撮影
テラス@PIGNETO/著者撮影

オープンエアのルーフトップ「テラッザ」で提供されているフリーフロー付きのアペリティーボ(食前酒)も人気となりそうです。

「est(エスト)」

エントランス@est/著者撮影
エントランス@est/著者撮影

「est(エスト)」はミシュランガイドで2つ星を獲得したギョーム・ブラカヴァル氏がシェフを務めるコンテンポラリーフレンチ。「感情」=「Emotion」、「季節感」=「Saison」、「テロワール」=「Terroir」という、コンセプトの頭文字から店名が命名されました。

ブラカヴァル氏と共に8年間働いてきたミケーレ・アッバテマルコ氏がペストリーシェフ、吉田雄太氏がチーフソムリエ、望月一貴氏がスーパーバイザー兼ソムリエを担います。

店構えのアプローチにもこだわりがあり、ライブラリにほぼ実物の本が約680冊も収蔵されていたり、ディスプレイのテーブルウェアは棚を開けて直に見られたりするなど、驚きの工夫が凝らされているのです。

厨房は広々としたオープンキッチンになっており、料理人たちの立ち居振る舞いが小気味いいスパイスとなっています。

ブラカヴァル氏が標榜するのは、日本の食材に敬意を表し、日本のテロワールを伝える料理。バターや牛乳由来のチーズはできるだけ用いないようにし、自家製の豆腐チーズが使用されているなど、料理はどれも軽やかな味わいです。

ハウスシャンパーニュは「ローラン・ペリエ グラン シエル」。日本で有名なシャンパーニュハウスのプレステージ版であり、グラスで飲めるのは良心的です。

ワインは約700種あり、フランスワインをベースとしながらも、日本のワインを重視し、ワインリストで掲載される最初の地域に日本が登場。ミネラルウォーターは、スティルもスパークリングも日本産というこだわりよう。

ランチ、ディナーともに3種類のコースがあり、色々な料理を少しずつ味わえます。特に印象的だったものは、次に挙げる魚料理とアシェットデセール(皿盛りデザート)です。

マナガツオを用いた魚料理@est/著者撮影
マナガツオを用いた魚料理@est/著者撮影

魚料理は、マナガツオを低温でゆっくりと火入れして繊細な甘味を活かした一皿。カキの旨味を凝縮したソースが味わい深いです。

山羊のチーズを用いたアシェットデセール@est/著者撮影
山羊のチーズを用いたアシェットデセール@est/著者撮影

アシェットデセールは、岩手県産ヤギのチーズとイチジクを合わせたもの。見た目はアーティスティックでありながらもミルキーで優しく、忘れられない懐かしい味わいです。

星付きシェフであるブラカヴァル氏とアッバテマルコ氏による新しい美食シーンが、ここに始まりそうな予感がします。

「VIRTU(ヴェルテュ)」

エントランス@VIRTU/著者撮影
エントランス@VIRTU/著者撮影

「VIRTU(ヴェルテュ)」はパリのナイトシーンを思わせるバーで、ヘッドバーテンダーはジョシュア・ペレ氏。

フランスのヴィンテージスピリッツや希少なコニャックをベースに創作したオリジナルカクテルが目玉となっており、新宿のブリュワリーでつくられたオリジナルのクラフトビール「Saison de Tokyo」も用意されています。

内観@VIRTU/著者撮影
内観@VIRTU/著者撮影

ムーランルージュにちなんだ「ムーランブラン」、群馬県沼田市にあるたんばらラベンダーパークの風景からインスピレーションを得た「シャン・ド・ラバンド」、フランスと日本のハーブリキュールへのオマージュとして考案された「タカラ」など、カクテルは個性的。

シャンパーニュカクテル「ヴェルトゥ 75」も定番で、贅沢にもボランジェをベースにし、レモン、アブサン、オレンジビターズを加えています。

プライベートバー@VIRTU/著者撮影
プライベートバー@VIRTU/著者撮影

奥にはプライベートバーを設置。暖炉の炎の温もりを感じながら、スカイツリーの姿を眺めつつ、お酒を嗜めるという大人の空間になっています。

気軽なガストロノミー

ここまで4つの料飲施設を紹介してきました。どれもが魅力を携えていますが、これらには重要な要素が内包されています。

その要素とは「気軽なガストロノミー」「臨場感あるスタイル」「優雅なテラス席」。

まずは「気軽なガストロノミー」について説明しましょう。

フォーシーズンズホテルはラグジュアリーなホテルのブランドであり、基本的にどのレストランもファインダイニングです。しかし、フォーシーズンズホテル東京大手町は、ガストロノミーを提供しつつも、肩肘張らず気軽に賞味できるようにと工夫しているのです。

ラウンジの「THE LOUNGE」だけではなく、イタリアンの「PIGNETO」やフレンチの「est」でも、テーブルにはクロスが敷かれておらず、木の温かみを表現した優しい雰囲気となっています。

「PIGNETO」はピッツァ窯を備えてピッツァを提供したり、フリーフロー付きのアペリティーボを企画したりしているので、気軽に利用しやすいです。

「est」は、とことん日本のテロワールにこだわっており、無理にフランス産の食材を使用することがありません。ワインはフランスのボルドーやブルゴーニュを全面に押し出しておらず、日本産を積極的に使用。日本の素材を用いたフレンチは日本のデスティネーションにマッチしており、ゲストもリラックスして食べられるのではないでしょうか。

臨場感あるスタイル

次に特徴的なのが「臨場感あるスタイル」。

「THE LOUNGE」にはコの字型のカウンター、「PIGNETO」には多彩なショーキッチン、「est」にはスペーシャスなオープンキッチン、「VIRTU」には高いバックバーを擁するカウンターが設置されています。

お茶を淹れたり、生ハムを切り分けたり、繊細に盛り付けたり、カクテルをつくったりと、それぞれのエリアでスタッフによる動きがあるのです。

このどれもがゲストを魅せるための要素。同じものを食べたり飲んだりしても、目の前で鑑賞するのと鑑賞しないのとでは、雲泥の差が生じることでしょう。

臨場感にみなぎったスタイルであれば、おいしかったという思い出だけではなく、目や音や香りや温度など、五感を通じた食事となるので、より深い食体験が紡がれるのです。

贅沢なテラス席

広々とした「贅沢なテラス席」を有しているのも魅力的。

ファインダイニングでありながらも「PIGNETO」と「est」には余裕のあるテラス席が設けられており、大手町という東京の中心からパノラマビューを楽しめます。

通常であれば、高級なレストランは天候や気温の影響を受けたくないので、なるべく店内のエリアを確保して、安定して稼働できる席数を増やしたいというもの。しかも、「屋外客席設置届」を保健所に提出する手間もかかります。

しかし、ゲストの体験や選択肢を増やすために、あえてテラス席を設置したのです。

特に、モダンガストロノミーを標榜する「est」にもテラス席があるのは、ファインダイニングにしては珍しいので、貴重な体験になることでしょう。

オープンの背景

魅力的な料飲施設を擁するフォーシーズンズホテル東京大手町ですが、実はわずか1キロ先というすぐ近くにフォーシーズンズホテル丸の内 東京があります。

それなのに、どうして開業するに至ったのでしょうか。

PRエグゼクティブを務める小島朋子氏は「それぞれが客室数も料飲施設数も異なっており、独自の個性があると判断したので、オープンするに至った。より差別化を図っていき、互いに魅力を高め合っていきたい」と答えます。

料飲施設の中でも、特筆するべきなのはやはり「est」。

ミシュランスターの料理人であるブラカヴァル氏は、どうして「est」のシェフに就任することになったのでしょうか。

総支配人のアンドリュー・デブリト氏がブラカヴァル氏の料理に感動したことが、大きなきっかけでした。そこから、ブラカヴァル氏をスカウトし、シェフに就任したという背景があります。ブラカヴァル氏が以前在籍していたフレンチレストランが2019年末にクローズしたこともあり、アッバテマルコ氏含めたミシュランの黄金チームがまるごとジョインしました。

フォーシーズンズホテル東京大手町としては今後どのような食を目指していくのでしょうか。

小島氏は「新たな美食のハブ、社交の場となることを目指している」といい、総料理長リーヴァ氏は「ゲストの皆さまに五感を刺激する素晴らしい体験をご提供できるようにしていきたい」と述べます。

アワードやランキングにも期待

フォーシーズンズホテル東京大手町は、同グループで初めてとなる、日本の都心部に構えた大規模なホテル。そして、世界レベルのガストロノミーや一歩先を行くトレンドに照準を合わせています。

「THE LOUNGE」「PIGNETO」「est」「VIRTU」という料飲施設はしっかりと個性が確立されているので、世界屈指のグルメ都市である東京にあっても、存在感を示すことは確かではないでしょうか。

そして、ただ存在感を示すだけではなく、ミシュランガイドで星を獲得したり、アジアのベストラン50でランクインしたりと、その少し先にある未来に期待しないわけにはいきません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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