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続報 豪雪の徒歩移動の危険 現実が迫りつつある

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
雪に埋まった小型乗用車(1月8日長岡市内、筆者撮影)

 新潟県長岡市の降雪は、今日現在小康状態となっています。ただ、流石の越後交通バス市内線もお手上げ状態、道が悪くてタンクローリーが入れず軽油が足りない、その上電力ひっ迫のニュースが飛び込んできて、この後大雪が降らないことを祈るばかりです。

 豪雪の徒歩移動には危険が伴います。とは言っても道路除雪がままならなければ、最後に頼れるのは徒歩のみ。昭和58年から3年続いた豪雪の時にも、生活は歩くしかありませんでした。でも、本当に危険でした。

(注:1月13日8:45に写真を追加しました)

小康状態なのに

 新潟県内のJR在来線は1月12日 17時20分 現在、ほぼ運行していません。明日13日も運休の見通しの路線がほとんどです。確かに職場の近くの信越本線は雪に埋もれたままで、とても電車が通行できる状況ではありません。

信越本線 来迎寺-越後岩塚間の線路の様子。直江津方面の線路はかろうじて顔を出しているが、それより左側の長岡方面の線路は完全に深雪の下に埋もれている(1月13日8:20、筆者撮影)
信越本線 来迎寺-越後岩塚間の線路の様子。直江津方面の線路はかろうじて顔を出しているが、それより左側の長岡方面の線路は完全に深雪の下に埋もれている(1月13日8:20、筆者撮影)

 頑張っていた越後交通市内線もとうとう力尽きました。1月12日13時現在、長岡駅を発着するバス路線は、街中の一部路線を除いて運行を見合わせています。市内の除雪がまだ不十分で、大型車が行き交うほどの道幅が取れないこと、道路が積雪でデコボコになっていて、適切な速度での走行ができないことが主な原因です。

 在来線とバス市内線のダブル運休のために、市民の足は奪われたに等しい状況です。当然、長岡駅から長岡技術科学大学へのバスも朝から運休で、明日13日の運休も決まりました。

 筆者の職場の駐車場はある程度除雪されていますが、必要とする人の分のスペースは確保できていません。そのため、自家用車を使って職場にたどり着いたとしても、駐車スペースがなくて自宅に戻る人もいます。筆者の職場では教職員、学生合わせて約3,000人の所帯ですから、1割スペースが足りなくなっただけでも、300人の「駐車難民」が出る計算です。

大学入り口付近の道路は車がすれ違いできない(1月13日8:30、筆者ドライブレコーダー撮影)
大学入り口付近の道路は車がすれ違いできない(1月13日8:30、筆者ドライブレコーダー撮影)

道路の除雪が滞る心配が出てきた

 バス市内線が運行できなくなるくらいです。燃料を運ぶタンクローリーの運行にも場所によっては支障がでてきました。

 「この大雪でフル稼働している除雪車。しかし、その除雪車が稼働できなくなる恐れがあるということです」

 原因は安塚区へつながる国道です。雪の壁で車道の幅が狭まり、路面は凹凸でタンクローリーの走行が難しくなっています。地元のスタンドでは8日からタンクローリーが来ていません。

【ガソリンスタンドのオーナー】

 「売るものがもうない。(タンクローリーが)入って来ないってことは今の在庫が空になれば終わりってことですから」

 除雪車用の軽油が不足し明日にも除雪車が動かなせなくなる恐れが出ています。

(BSN新潟放送 最終更新:1/12(火) 11:15 原文ママ)

 同じ話は、昭和58年から3年続いた豪雪の時にも聞きました。ガソリンスタンドにローリーが到達できなかった事例がいくつもありました。そうなると除雪車が動かせず、そして降り続く雪に、ますます道が狭くなる悪循環に入ります。

 電力の需給状況がよくありません。新潟県を管轄とする東北電力によれば、「電力が不足している他エリアへの電力融通にも協力すべく、当社のお客さまのために確保している発電用燃料をぎりぎりまで取り崩しながら、発電している状況にあります」として、「電気の効率的なご使用へのご協力のお願い」がされています。

 電気が止まれば、融雪用の消雪パイプのポンプが止まり、道路や各家庭の雪を溶かすことができなくなります。こうなると、昭和58年から3年続いた豪雪の時にあったように、多くの道に雪が積み残される状況となり、車が出入りできなくなる路地が増えていきます。当然、消防車や救急車が家の前まで来ることができなくなります。

徒歩移動の危険

 道が閉ざされれば、買い物にしても、何にしても、歩くしかありません。昭和58年から3年続いた豪雪の時には、長岡名物である長生橋の歩道に行列ができるくらい多くの人が歩いていました。通勤、通学、買い物、すべての用事の人たちが、対岸に渡りました。日本一の大河、信濃川にかかる橋ですから、歩きながら時には吹雪に長く吹きさらされます。この時にも市民の生活の足であるバスが動いていませんでした。

冬の長生橋、全長850.8 mで、雪の積もった中を歩くと対岸に到達するのに30分かかる(筆者撮影)
冬の長生橋、全長850.8 mで、雪の積もった中を歩くと対岸に到達するのに30分かかる(筆者撮影)

 たくさんの人が周囲にいて、皆で助け合って歩くうちはいいのですが、夜間に一人で歩くことは大変危険です。すでに大雪の中、歩いていて突然足が雪にはまり、バランスを崩して雪の壁に体をぶつけたり、屋根から落ちそうになったりした人がいると思います。

 歩いて買い物に出かけて、たくさんの荷物を手に歩くのも大変です。積雪の上では間違いなく足を取られます。日中の人の目がある時間帯に歩きましょう。慣れていれば、子供用のそりの上に荷物を載せて運ぶ手もあります。

 頭には断熱の良い帽子をかぶり、手にも断熱の良い手袋をします。万が一雪にはまり動けなくなっても、保温することで命を長らえることができます。携帯電話は肌身離さずに、すぐに緊急通報できるようにします。

60歳前から上の年齢の人に危険回避手法を聞いて

 昭和58年から3年間の豪雪時に20歳前後だった人は、今60歳前後です。この時のいろいろな経験はいまだに鮮明に記憶が残っていると思います。それぞれの地域にそれぞれの特徴があり、「あそこで人が埋まった」などという情報を、当時を生き抜いた方々はよく知っています。

 ぜひ60歳前から上の年齢の人に当時の様子とともに危険回避手法を聞いてください。消雪パイプの井戸も当時はよくかれました。消雪パイプが機能不全に陥った時の緊急除雪の方法にも昔の知恵があります。

 「いつかは、終わる。必ず春は来る。」どんな状況になっても投げやりにならず、少しの工夫で生き抜いていきましょう。

今朝のゼミは、雪庇の危険と除雪の仕方の講習会だった(1月12日9:00長岡技術科学大学研究室前で筆者撮影)
今朝のゼミは、雪庇の危険と除雪の仕方の講習会だった(1月12日9:00長岡技術科学大学研究室前で筆者撮影)

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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