U-20女子W杯に臨むヤングなでしこ。メンバー21枠のサバイバルも最終段階へ
U-20日本女子代表、通称「ヤングなでしこ」が、10月18日から千葉県の高円宮記念夢フィールドで5日間のトレーニングキャンプを行った。2021年1月20日にコスタリカ共和国で開幕が予定されているU-20女子W杯に向けて、チーム作りは最終段階に入った。
ヤングなでしこ、U-20女子W杯に向けたラストステップ。「プレー強度」を高めて世界一を目指す
このチームは昨年11月にタイで行われたAFC U-19女子選手権(U-20女子W杯アジア予選)で優勝し、アジア王者として今回のW杯に臨む。合宿時に池田太監督、選手たちに話を聞いた。
(※)取材はすべてオンライン会議ツール「Zoom」で行いました。
監督・選手コメント
池田太監督
ーー9月の前回合宿から1カ月ですが、今回の合宿ではどのようなことをテーマにされているのでしょうか?
まずは前回のキャンプでどんなことをやってきたかを、前回招集できなかった選手にもしっかり伝えることと、1カ月前に積み上げてきたことを見直すことが一つです。同時に、自分たちが今までやってきたプレーの強度を上げていくことがテーマです。特にディフェンス面で、世界と戦うために日頃感じている強度の基準を上げていこうと伝えました。また、チームとして相手からどのようにボールを奪うプレスのかけ方をするかを整理したいと思っています。
ーー練習中、「声の強度」についても強調されていましたが、コミュニケーションの部分で特に、選手たちにどのようなことを求めていますか?
チームとしてボールを奪うタイミングを作るために、動きの中で守備のスイッチを入れることもありますが、声の強さや、指示の表現一つで、「今、ここで全員がボールを取りに行く」という意思疎通ができるように、というところを要求していきたいです。
ーー最終メンバーの選考に向けて、どのようなことを重視されるのでしょうか。
選ぶのに私が困るぐらい、みんなが健康でいてくれるのが一番だと思っています。その上で、チームで共有することを増やしてきた中で、大会を想定した時に最後の21名をどういう風に考えていくか、というところですね。
ーー1年前と比べて、選手たちの成長をどんなところで実感されますか?
なでしこリーグや大学リーグ、高校年代のU-18での試合を通しての経験値と、体の使い方(などの技術)は上がってきたと思います。
ーー大会までに、各選手にこういう能力を伸ばして欲しいとリクエストしていることを教えてください。
ベースは自チームのトレーニングにあるので、その中で自分が足りないなと思ったところを見つけて、それに対して補えるようなアドバイスはしています。「必ずこれをやってほしい」というよりは、自チームのトレーニングと、こちらのU-20で求めている強さですとか、技術的なもので足りない部分をしっかり見つけて取り組めるように、選手たちと話をしています。
MF 木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
ーー代表合宿は久しぶりの参加ですが、感触やチームの雰囲気はいかがですか?リーグ戦にコンスタントに出場する中で、手応えも得ているのではないでしょうか。
代表活動は本当に久しぶりですね。このカテゴリーに来るのはほぼ初めてなので、すごく新鮮な感じがします。ベレーザで少しずつ試合に出られるようになった中で代表でもやりたいという気持ちがあったので、まずは呼ばれて嬉しいです。ピッチ内でもピッチ外でも、個人の特徴がすごくありますし、仲が良くて、先輩方も優しいので居心地がいいです。
ーー今季、プレーで新たに挑戦してきたことはありますか?
今までは結構低い位置でボールを受けてリズムを作っていたんですが、ベレーザでは今、前を向いてどんどん仕掛けていくところを求められて、意識してやっています。そこを、代表でも少しでも出していけたらいいなと思います。
ーーU-20W杯は、これまでのカテゴリーとは違う難しさもあると思いますが、相手の変化をどうイメージしていますか?
ベレーザの先輩方に聞いたり、自分が今までのU-20のW杯を見てきた中でも、相手が身体的に、より速く、強くなっていると思います。それを技術で上回れるように、もっと上手く、頭を使いながらやっていかないといけないですし、フィジカル面もできるだけ上げていかなければいけないと思います。
ーーW杯へのイメージと、目標を教えてください。
ずっと憧れてきた場所なので、その舞台でプレーできるということは本当に凄いことだと思いますし、その中でももっともっと上を目指して、優勝を目指していきたいと思います。
DF 水野蕗奈(みずの・ふきな/INAC神戸レオネッサ)
ーー9月の合宿はケガで途中離脱となってしまいましたが、今回改めてこのチームでプレーしてみてどうですか?
久しぶりですが、また、しっかりコミュニケーションをとってやっていかなければいけないなと思っています。
ーーリーグ戦ではスピードに乗った思い切ったプレーが印象的ですが、代表では自分のどのような持ち味を生かせると思いますか?
自分の持っているスピードは代表でも出していきたいです。しっかりコミュニケーションをとって、自分に何ができるかをしっかり判断しながらやっていきます。
ーーリーグ戦の活躍を経て、どんなことが一番、いい方向に変化したなと思いますか?
(INACで)ピッチの中でも外でもコミュニケーションを取ることがすごくできていると思います。ピッチではいろんな人に支えてもらいながら試合に出させてもらっている中で、自分のやりたいことに対して自信が持てるようになって、思いきりプレーできるようになりました。
ーー大舞台でも思い切ったチャレンジができそうなイメージがありますが、自分の調子の良さを測る物差しはありますか?
一応、緊張はしているんです(笑)。自分からボールを要求したり、守備のところで周りの選手に声をかけることができている時は、いろんなものが見えているなと感じます。
ーー大会に出場したらどのようなことを得て帰りたいですか?
一人ひとり、みんな良さがあると思うので、その自分にない良さを吸収して帰れたらいいなと思います。
MF 菅野奏音(かんの・おと/日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
ーー東海大学付属高輪台高校男子サッカー部とのトレーニングマッチは惜敗(1-2)でしたが、守備の強度アップを取り組んできた中で、試合での手応えはどうでしたか?
男子相手で、スピードやフィジカルは、自分たちよりも強いというのはわかっていました。この合宿で、守備の強度のところを重点的に取り組んできましたが、そこは、本当にみんなで意識してできたんじゃないかなと思います。
ーー前回の合宿に参加できませんでしたが、久々に集まって感触はどうでしたか?
去年のアジア(予選)から変わったメンバーもいますけど、やっぱり次のW杯に向けて、みんながそれぞれ同じ目標に向かっているなと感じています。 個人がすごくレベルアップしているし、個人のレベルアップがチームの成長にもつながっていると思います。
ーー今季はベレーザでコンスタントに出場していますが、自分のプレーで変化したなと思うことはありますか?チャレンジしているプレーがあれば教えてください。
守備から攻撃、攻撃から守備の切り替えの部分は、ベレーザの選手たちは本当に速いので、見習ってできるようにしたいと思いながら取り組んできました。みんながすごくサポートしてくれる中で、すべてのプレーに自信を持ってやるように意識しています。
ーー菅野選手にとってのU-20W杯はどのような大会ですか?また、本大会をどのようにイメージしているでしょうか。
W杯は世界規模の大会で、今後、なでしこジャパンを目指していく上でも大きな経験になるのではないかなと思うので、優勝を目指して頑張ります。 U-17からU-20にカテゴリーが変わり、海外の選手はパワーやスピードが大きくパワーアップしていると思いますが、自分たちはパスをつないで、いろんな選手がボールに関わるサッカーをしています。それを世界でも継続してやっていきたいですね。
FW 大澤春花(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
ーー今回の合宿は特に守備面を重点的に取り組んできましたが、いかがでしたか?トレーニングマッチの手応えも教えてください。
自分はFWなので、前線からプレスをかけるタイミングを意識しながらやっていますが、結構強くいけているところもありました。チーム全体で確認できたし、4本目の得点は前からのプレスでボールを奪えたところからのゴールだったので、そこはしっかりできていたと思います。
ーー所属のジェフでも前線からの守備をしていますね。トレーニングマッチではかなり球際のところで闘えていたのではないかと思いますが、リーグ戦の経験も大きいのでしょうか。
今シーズンは試合に出させてもらうことが多くなりました。(ジェフは)今は3トップで、前からプレスをかける中で(周りの選手と)タイミングを合わせたり、一つひとつの局面でしっかりコンタクトすることはできるようになったのではないかと思っています。トレーニングマッチでは、まだまだ自分の体幹が弱いなと思う場面があったのですが、タイミングは合わせてできたのではないかなと思います。
ーーU-20W杯で、自分の良さをどんなふうに生かしたいと考えていますか?
自分は守備のところでハードワークすることを得意としているので、そこは継続しながら、攻撃ではボールを収めることや、相手のリーチも長いのでボールを失わないことを意識してプレーしたいです。
ーー改めて、本大会への意気込みと目標を聞かせてください。
ずっと目標にしてきた大会なので、日々の練習を大切にして、集まった時にしっかり合わせていきたいです。個人的には、大事なところでゲームを決められる選手になりたいなと思います。目標は1試合に1点です。
※文中の写真はすべて筆者撮影