【NHL】ファイティングが減少中!アイスホッケーを「氷上の格闘技」と呼べなくなる日も近い!?
「氷上の格闘技」と称されるアイスホッケーの魅力は、スピードと並んで、ボディチェックやゴール前の攻防などプレーの激しさ。
さらに加えて、ファンを沸かせる見せ場とも言えるのが「ファイティング」です!
▼ファイティングとは?
NHLをはじめとする北米のアイスホッケーリーグでは、日本のトップチームが加盟しているアジアリーグをはじめ、国際アイスホッケー連盟が定めるルールにはないファイティングというペナルティがあります。
上の動画でファイティングをした二人は、どちらも体重100キロながら、ジョシュ・アンダーソン(青#77)が身長191センチ。対するズデノ・チャラ(白#33)は、身長206センチを誇るNHLの現役選手の中で最も背の高い選手と、15センチもの身長差があります。
しかし、それでも1対1になって素手で戦うのが、ファイティングなのです。
「スティックやグローブを全て捨てて、素手で戦う」
「チームメイトは手助けをしないで、1対1で戦う」
「どちらかの選手が倒れたら、それ以上は続けない」
ファイティングには、ルール上は明記されていない、このような”暗黙のルール”があり、これに従った乱闘であれば5分間の退場だけで済み、その後は再びプレーをすることが許されます。
▼ファイティングから大乱闘へ
しかし、ファイティングではとどまらず、大乱闘に発展してしまう時も少なくありません。
2004年3月5日(現地時間)にワコビアセンター(当時)で行われた「フィラデルフィアフライヤーズ対オタワセネターズ」戦では、両チーム合わせて、のべ21選手に対しファイティング のペナルティが課せられました。
その中には試合時間(60分)の半分以上となる「35分間」ものペナルティを課せられた選手も見られ、ファイティングでは収まらず、大乱闘の試合になってしまいました。
▼ファイティングが一番多いフィラデルフィア
ここで2000年以降のNHLの試合を対象に、どれだけファイティングをしたのか、各チームの年間平均回数を紹介すると、、、
1位:フィラデルフィアフライヤーズ→66.5回
2位:カルガリーフレイムス→62.6回
3位:バンクーバーカナックス→58.3回
映画「ロッキー」の舞台となった影響もあるのか(?)フィラデルフィアがトップ。
逆にファイティングが少ないのは、、、
1位:デトロイトレッドウィングス→27.1回
2位:カロライナハリケーンズ→28.1回
3位:ニューヨークレンジャーズ→28.9回
となっており、1位のデトロイトのファイティングの数は、フィラデルフィアの半分以下です。
▼ライバルバトルは荒れる!
続いて同様に、2000年以降のNHLの試合で、ファイティングが多かった対戦カードは、、、
1位:「モントリオールカナディアンズ vs ボストンブルーインズ」→308回
2位:「シカゴブラックホークス vs セントルイスブルース」→290回
3位:「カルガリーフレイムス vs エドモントンオイラーズ」→253回
さらに、4位は「トロントメイプルリーフスvsデトロイトレッドウィングス」、5位が「ニューヨークレンジャーズvsフィラデルフィアフライヤーズ」と続き、オリジナル6(NHL創設時から加盟している6チーム)同士の対戦や、同じディビジョンに属するライバルバトルは(対戦が多いこともありますが)常に激しいバトルを繰り広げ、荒れ模様の試合も珍しくないようです。
▼ファイティングが減少中
しかし、NHL全体ではファイティングが減ってきています。
2000年代前半には、ファイティングが起こった試合が、レギュラーシーズン全体の40%前後ありました。
ところが、労使交渉が決裂して試合が全く行われなかった年(2004-05シーズン)を挟み、NHLの戦いが再開した2005-06シーズンは「29.0%」と大きくダウン。
選手たちの心中には、再びNHLに戻ってきて、ファイティングよりプレーでのアピールを!との気持ちが強かったのかもしれませんが、長くは続かず、翌年以降は一転して増加に転じます。
再開後4季目(2008-09シーズン)には「41.4%」までアップ。その後も、30%台半ばから40%の数字が続き、ファイティングでスタンドが沸く試合が多く見られました。
▼ファイティングが見られなくなる日が来る!?
ところが、5季前(2012-13シーズン)の36.7%を最後に減少し始め一昨季は「23.4%」と、前述した2008-09シーズンの半分強の数字に。
これは労使交渉が決裂した翌年にNHLが再開して以来、脳震盪を発症する選手たちが多かった対策として、背後からのチェックなど、危険なプレーに対してペナルティを科す基準を厳格化。併せてスティックを用いたペナルティの基準も厳しくなった結果、各チームのロースターにスピードのある選手が増えていきました。
その反面、スター選手を守る役割を担い「ポリスマン」と呼ばれていたサイズの大きさ(だけ)が長所の選手は、活躍の場がなくなっていったのです。
▼日本人には追い風に!
昨季こそ一昨季の「23.4%」から少しだけアップして「24.9%」と、4試合観戦すれば一度はファイティングのシーンが見られる数字となりました。
しかし、それでもハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)に輝いたコナー・マクデイビッド(20歳・FW)に代表されるように、プレースピードと高いスキルを併せ持つ選手が台頭し続けているだけに、今後もファイティングが減っていくことが予想されますが、これは日本人選手にとっての追い風になるはず!
これまで25年前(1992年)のドラフトで、三浦浩幸(当時コクドDF)が初めて指名を受け、さらに10年前には福藤豊(当時ロサンゼルスキングスGK)が初めてNHLデビューを飾った知らせに、日本のアイスホッケー界は沸き立ちました。
さらに続いて、これまでスピードはあってもサイズで見劣りするとの評価を受けてきた日本人選手が、“NHL初ゴール”を決めた知らせが届く日も、いずれやって来るかもしれません。