Yahoo!ニュース

アイスホッケー選手は、ただ殴り合っているわけではない

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHL選手のファイティング(写真:ロイター/アフロ)

旧ソビエト時代から、アイスホッケーが国技と言われるロシア

そのロシアのチームをはじめ、8か国から29チームが参加するヨーロッパ随一のビッグリーグが、KHL(コンチネンタルホッケーリーグ)です。

▼開幕間近のKHLで選手が永久追放に

創設して9度目の開幕(現地時間22日)を間近に控えたKHLは、昨夜 バリス アスタナ(カザフスタン)に所属する ダミル・リスパエフ 選手(21歳)に対し、永久追放処分を言い渡しました。

厳しい処分が下された原因は、今月8日に行われたプレーシーズンゲームでのことでした。

北京をホームタウンとして、今季から参戦する新チームの クンルン レッドスターを迎えた試合で、リスパエフ選手(白と青のジャージの25番)は・・・

掛け値なしの大暴れ!!!

この行為に対して、KHLは永久追放を言い渡したのです。

▼ファイティングにもルールがある

アイスホッケーを、あまりご覧にならない方は「いつも喧嘩ばかりしているスポーツ」という印象を、持っていらっしゃるかもしれません。

確かに、北米のマイナーリーグなどをはじめ、ファンを沸かせるために乱闘を仕掛けたり。

チームが劣勢の時に、味方とファンを鼓舞しようと、乱闘を始めたり。

また、乱闘も辞さないスタイルを持ち味に、キャリアを伸ばしている選手も多く存在しています。

しかし、このような選手たちは、ただ乱闘を繰り返しているのではなく、「暗黙の掟」に従っているのです。

その掟とは、、、

スティックやグローブを全て捨てて、素手で戦う

チームメイトは手助けをしないで、1対1で戦う

どちらかの選手が倒れたら、それ以上は続けない

というものです。

上の動画でご覧いただいた NHLの試合をはじめ、北米のアイスホッケーの試合では、「ファイティング」というペナルティが設けられています。

これは日本の試合だけでなく、オリンピックや世界選手権などで基準となっている国際ルールにはないペナルティで、掟に従った乱闘であれば、「5分間の退場」(通常のペナルティは2分間の退場)だけで、再び試合に戻ることができます。

つまり、「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉になぞらえると、「ファンが喜ぶファイティングもアイスホッケーの華」なのであって、選手たちは、ただ殴り合っているわけではないのです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事