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井上尚弥vs中谷潤人 ファン待望の夢の対決が実現するためのハードルは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供FUKUDA NAOKI

20日、ボクシングWBCバンタム級タイトルマッチが行われ、王者の中谷潤人(26=M.T)が、挑戦者同級1位のビンセント・アストロラビオ(フィリピン)を1ラウンドにボディへのワンパンチKOで下し、初防衛に成功した。圧倒的な強さを見せつけたことで、井上尚弥との夢の対戦についての期待が高まった。

試合の展開

序盤は様子見だったが、中谷は相手の隙を見逃さず、絶妙なタイミングで左ストレートを放った。そのパンチを受けた相手はうずくまり、立ち上がれないまま1ラウンドでの衝撃的なKO勝利となった。

世界戦クラスになると、ボディブローでKOを奪うのは至難の業だ。特にレバーではなく鳩尾へのパンチでダウンを奪うのは、さらに難易度が高い。

この一撃は、中谷のボクシング技術の高さを如実に示す結果となった。

今回の試合の結果を受けて、多くの関係者から「井上尚弥の最大のライバルは中谷潤人だ」との声が挙がった。

ファンも期待する対戦カードだが、実現するためにはいくつかのハードルが存在する。

階級の壁

まず、階級の違いが一つの大きな問題となる。

井上尚弥は現在スーパーバンタム級で活躍しており、その圧倒的な強さでこの階級の統一王者として君臨している。

一方、中谷潤人は今年2月にバンタム級に上げたばかりだ。そのため、すぐにスーパーバンタム級に変えるとは考えにくい。

井上は減量が厳しくなってきており、近いうちにさらに上のフェザー級に転級するとの話もある。

そのため、対戦するにはどちらかが無理に階級を上げるか下げるかの調整が必要になる。

しかし、階級変更は選手のコンディションやパフォーマンスに大きな影響を与えるため安易にできるものではない。

選手それぞれがベストで戦うためにも、慎重に検討されるべきである。戦う本人も自身がベストで戦える階級で戦いたいところだろう。

実績の壁

次に、両者の実績の比較も重要である。

井上はバンタム級とスーパーバンタム級で4団体統一に成功している。それぞれの階級でのライバルたちに圧倒的な実力を示し、ここまで勝ち進んできた。

世界からも認められ、全階級最強を決めるPFPランキングでも現在2位の評価を受けている。

中谷も無敗で世界3階級王者という素晴らしい実績を持っているが、階級内でのベルトの統一は果たしていない。

中谷もそれを考慮してか「ひとつずつ勝っていけば自ずと実現する」と話していた。上の実績に近づくためにも現在のバンタム級での統一は必須となる。

現在、バンタム級は日本人王者が王座を独占している。そのライバル争いに勝ち抜く必要があるだろう。

実現に期待

井上尚弥と中谷潤人の夢の対決は、ボクシングファンにとって非常に魅力的なカードだ。

スーパーバンタム級にライバルがいない井上にとって、PFPにも名を連ねる中谷は最も強力なライバルとなる。

中谷は前回の防衛戦後に井上尚弥戦について「パウンド・フォー・パウンド1位を目指す上で、井上戦も視野に入れている。統一戦がうまく行かなければ、スーパーバンタム級に上げる」との考えを示した。

ともに日本を代表する世界クラスのボクサーであり、彼らの対戦は国内外で大きな注目を集めることは間違いない。

気が熟した最高のタイミングで両者の対戦が実現することを期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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