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廃線の危機を救う 鉄道・運輸機構が「鉄道災害調査隊」を創設した理由とは?

小林拓矢フリーライター
災害がきっかけで廃線になる路線は多くあった(写真:イメージマート)

 豪雨や台風などの自然災害のたびに、ローカル線の被災が課題になってきた。早期の復旧は可能なのか、線路自体がこれを機に廃線にならないかということを、多くの鉄道ファンが心配する状況が長く続いている。

 いっぽう、赤字路線といえども、ごくわずかとはいえ人が乗っていて、存続してほしいと思う人は(ふだんは乗らない人でも)多くいる。

 ぎりぎりのところで持ちこたえている地域の鉄道が、災害を機に廃線になる可能性が出てくるというのは近年よくある。

 日高本線の大部分、根室本線の一部など、復旧どころではない状況となり、結果として廃線となった。

 鉄道での災害に対して、早急に対応し、復旧する見通しを立てる。そうすることで鉄道という公共交通を維持できるようにする。

 そのために、鉄道・運輸機構は「鉄道災害調査隊」を創設した。

 この「鉄道災害調査隊」には、何ができるのか?

鉄軌道事業者を支援する「鉄道災害調査隊」

「鉄道災害調査隊」は、自然災害などで鉄軌道施設などが被災した場合、鉄軌道事業者などからの派遣要請を踏まえた国土交通省からの派遣要請に基づいて、現地に出向き支援する。

 鉄道が被災した際には、初動の対応が大事だ。被災状況把握のために、鉄道災害調査隊を派遣する。被災路線について、現地踏査やドローンを活用して、被災現場の全体像を迅速に把握し、二次災害防止のために技術的な助言を行う。

 被災現場に鉄道事業者の人が入って、何か起こらないためにはどうするかを助言するというのがこの支援である。

 その後、復旧に向けて動きを進めなければならない。鉄道網を維持するためには、応急対応が必要である。個別施設ごとに被害の状況を調査して、事業者などが実施する応急復旧への技術的な助言を行う。

 被災鉄道の復旧は、このあたりでつまづいていることが多い。「廃線」の話が出ないうちに、早急に復旧し地域の人に再び利用してもらえるようにすることは、鉄道網維持のために重要である。

 その後、本格的な復旧へと移る。早期復旧に向けて、必要な追加調査項目や恒久的な復旧対策について事業者に技術的助言を行うとともに、助言や被害状況の調査結果を報告書としてとりまとめる。

 これらの費用を、事業者などに請求することはない。これは事業者にとっては大助かりだろう。

 なぜ、こうした組織が生まれたのか。

早期復旧を支援するため

 鉄道・運輸機構は、「鉄道ホームドクター制度」「災害復旧工事の受託」を通じて災害復旧支援を行ってきた。

 自然災害が激甚化し、しかも頻発化する中で、鉄道の被災が相次ぎ、鉄道事業者への支援強化や復旧の早期化が課題となっている状況がある。その状況を解決するために「鉄道災害調査隊」が誕生することになった。

 鉄道施設の復旧は、中小の鉄道事業者ではなかなか体制を確保することが困難な状況もある。人員不足の中、土木・軌道・建築など幅広い分野の専門家が必要とされる。

 そういった人たちの力で、復旧を早期に行うことが、「鉄道災害調査隊」の仕事である。

鉄道にとっての最悪の事態を避けるためには?

 経営の厳しい、あるいは自然環境が厳しいところで運行されている鉄道は多い。しかし近年、鉄道事業者の経営が厳しい状況が続き、ふだんは走っているから存続しているけれども、いざ走れなくなると存続できなくなる路線というのも、多くある。

 日常の運行があるから持ちこたえられている鉄道が、それができなくなる状態になって「では廃線にしよう」という話が出てきて、地元では大紛糾、しかしどうにもならずということもある。

 本当は被災の前に危険な箇所に対応できる「鉄道ホームドクター制度」をもっと活用してもいいのだが、災害はいつ起こるかわからないというのもまたある。

 被災鉄道が、被災して終わるのではなく、復旧して地元の人のために走れるために、「鉄道災害調査隊」ができるようになった。各事業者には、ぜひこの制度を利用してほしい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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